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第2話

佐藤店長とは1年くらい一緒に働いていると思う。 俺たちとそんなに変わらない年齢の筈だけど、落ち着いているのはやはり正社員だからなのだろうか。 いつもスーツ姿で事務所に詰めている。 このカラオケ店で正社員なのは店長だけだ。 あとはみんなバイト人員。料理の提供や、室内清掃など中々仕事が多い。 カラオケのバイトは体力勝負なのだ。 そしてオレは「バイトリーダー」を半年前に任命された。 山崎と岡崎が「賢いから!」と推薦したのだが、今思うと押し付けられた感がある。 他の店舗のバイトリーダーに聞くと店長に何かと仕事を押し付けられるらしい。 でも佐藤店長の真面目な性格のお陰でこちらにまわってくることがないのだ。 おかげで名ばかりリーダーとなっている。 よくありがちな店長とバイトのイザコザもなく… ただ一点だけ困ったことが。 「相澤くん、今日はもう上りの時間だよね」 店長がシフト表を確認しながら話しかけてきた。 「そーですね。そろそろ帰ります」 お疲れ様、と労いの言葉を頂きつつも・・ 嫌な予感がする。 佐藤店長がシフト表から目を離し、パソコンに向かいながら 「次の休み、火曜だっけ?よかったらドライブ行こうよ!」 そう誘って来た。 あああ、やっぱり・・・! オレは思わず、顔が引きつってしまった。 そう、困ったことはこの《ドライブのお誘い》なのだ。 誘われるようになってこれで、3回目。 その都度なんかの理由をつけて断っている。 別に店長が嫌いとかそういうわけではなく・・むしろ色々気を使ってくれるし、気兼ねしなくて済む人なんだけど・・ 店長に悟られないよう、やんわり断ろう。 「レポートの提出期限が迫っていて、ちょっと難しいです・・」 「そうなんだ・・」 店長が一瞬、うなだれる。 ごめんなさい、レポートなんか無いです。 何故、ドライブに行かないのかって? それは店長の愛車が「2シーター」だから! 二人乗りの、車ということ。 必然的に店長が2人でドライブに行こうと誘っているわけ。 いやいや、オトコ2人っきりでドライブとか・・! しかもそんなに親しく無いのに! *** 2回断わった時に、山崎に相談したことがある。 「なあなあ、佐藤店長ってホモとかじゃねえよな?」 「何だお前、直球だな」 焼き肉を食いに行ってて、カルビを焼きながらそんな話をしていた。 「ほら、佐藤店長の車って2シーターじゃん。ドライブ誘われてさー」 「別に良いじゃん。2人でお出かけなんて良くある話じゃん。現に今2人で焼肉食いに来てるし」 「2人っきりで長時間、何話せっていうんだよー!親友とかならまだしも・・」 「いやー、もしかしたら愛車を自慢したいだけかもしれん。あるいはバイトリーダーに物申したいことがあるとかさー・・・」 焼けたカルビを頬張りながら山崎がしかしなあ、うーん、と唸る。 「・・・新しい世界開けちゃうかもよ」 「お前、他人事だなーー」 *** そんな理由で、オレは店長の誘いを断り続けているのだけど・・ 流石に3回目ともなると感づいて諦めそうなものなんだけど・・・ 一瞬、残念そうな顔をした店長はそれでも 「じゃあ、また誘うね!」 パソコンから目を離して、笑顔でそう言う。 メゲないなあ、と感心すらしてしまう。 ってかこれまた次に誘われるまでドキドキするパターン? もういっその事、行った方がスッキリするかも? 何もそういう事じゃないかもしれないし・・ 「ら、来週なら大丈夫です」 小声で言ったオレの言葉を店長は聞き逃さなくて。 「ホント?!」 まるで子供のように目を輝かしながら、じゃあどこ行く?僕が決めていい?とまくし立ててきた。 ・・早まった気がした。 大丈夫か、オレ・・・

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