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「もっと鳴いてみろよ、式」 隹は式の細腰に両手を回した。 しっとりと汗ばむ肌に五指を食い込ませ、固定し、厚みのある腰を大きく前後させた。 すでに奥まで解されていた後孔は強烈な抵抗感を失いはしたものの、それでもきつく、隹のペニスを搾り立てた。 刃向かうように絡みついてくる肉襞を巻き込んで出し()れする。 抜ける寸前まで腰を引き、また時間をかけて押し戻していく。 さらに背後へ細腰を突き出させ、角度を調整し、不意討ちを狙って意地悪に最奥を貫きもした。 「あん……っ」 反射的に嬌声が零れ落ちる。 緩急をつけたピストンに式は何度も崩れ落ちそうになった。 しかし隹の両手に支えられ、立ったままを強制されて、ガクガクと無様に揺らめく他なかった。 「だ、だめ……立てない……」 「頑張れよ」 「ッ、や……!」 脇腹から正面に回された隹の利き手が式の熱源を捕まえた。 「本当に濡れやすいんだな」 「もうやめて、お願い……」 「ここに相当溜め込んでたか」 「ひっ……やだ……あっ、あっ、あっ……っ」 しとどに濡れる頂を掌で揉み込まれながら根元の膨らみを熱心に慰められる。 自分自身の絶頂の跡がこびりつく内腿を粟立たせて式は壁に片頬を押しつけた。 立って行為に及ぶなんて経験がなく、一向にやめてくれない隹が憎らしかった。 ……先生は、恥ずかしがったり嫌がったりしたら止めてくれた。 こんなにも強引に、何回も、求めてくるようなことはしなかった……。 「……あ……?」 最奥を穿っていたペニスが不意にずるりと引き摺り抜かれた。 安堵するのも束の間、また体の向きを無言で変えられ、今度は向かい合った体勢で。 片足を持ち上げられ、不安定な片足立ちを強いられたところで、欲深げに膨張したペニスが後孔へ早々と戻ってきた。 式は喉を反らした。 壁と隹に挟み込まれ、頻りに揺さぶられ、ありとあらゆる急所を曝して幼げに涙した。 「式、泣くなよ……」 低い吐息と共にそう言われ、涙が止まらない切れ長な目は真正面に迫る隹を悔しげに見つめた。 「益々、抑えが効かなくなる」 隹は式をずっと見つめていた。 次から次に湧き上がってくる飢えに忠実になって、鋭い笑みまじりに、願ってやまない式に獰猛な眼差しをひたすら浴びせていた。 「……隹……」 ベッドでは躍起になって顔を隠し、ずっと視界から避けていた青水晶とまともに視線を分かち合って、身に余る恍惚に式の理性は麻痺した。 「は……ッ……今、締まったな……?」 問いかけておきながら答えも待たずに隹は式にキスした。 うっすら紅潮した尻丘を掴んで引き寄せ、最奥までぐっと突き入れて狭苦しい窄まりの温度をペニスで食い漁る、同時に色味の増した柔な唇も平らげる勢いで貪った。 暴力的ですらある快楽に何もかも射抜かれた式は隹にぎゅっとしがみついた。 自分の仮膣内で粘つく音色が生じ、隹も濡れているとわかって、無性に切なくなった。 抱き上げられて両足とも床を離れ、空中で不規則に突き上げられると、抗えない興奮の波に自制心を攫われてしまった。 「……奥、すごい……」 甘いため息を零した式を抱え直し、隹は、ベッドへ戻った。 恍惚に満たされた細身の体を横たえ、瞬時に覆い被さり、浅くなりかけた繋がりを深いものへ、自分のかたちを覚え始めた従順な仮膣へ一息に押し戻した。 「あ……っぁ、っぁ、っぁ……!」 湿り出した後孔奥を深めのピストンで愛でる。 迫りくる絶頂を予感し、ここぞとばかりに我が身を怒張させ、隹は咆哮するように式に尋ねた。 「式、このままいいか」 パーカーが滑り落ちて片方の肩を露出させた、理性を見失った状態にある式は今にも蕩けてしまいそうな腹を自ら擦り、上擦る声で彼に答えた。 「おれのなかで……いいよ……」 たどたどしい手つきで隹の頭を抱き寄せた。 贅肉のない脇腹に自分から両足も絡ませる。 獰猛な獣性をひけらかして真摯に求めてくる年上の男に身も心も明け渡し、強請った。 「隹の、ちょうだい……」 式に甘えられて隹の律動が吐精を意識したものに切り替わった。 より激しく、より奥を穿たれる。 先走りで滑るペニスがものものしげに小刻みに後孔を出挿りした。 快楽の渦に突き落とされた式は荒々しく波打つ背中に爪を立てた。 悶々とうねる肉奥で一思いに爆ぜる間際、隹は式に切に願った。 「もっとあんたに呼ばれたい」 熱い両腕の檻の中で式は目を瞑る。 唸り声にも似た嘆息と共に隹の欠片を分け与えられると、腹底を感極まらせて彼と絶頂を共にした。 かけがえのない温もりにすっぽりと包み込まれ、ふわふわと蝶のように浮遊する意識の中で、呟いた……。 「……おれ、心の中でずっと呼んでたよ、隹……」

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