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side:泣き虫君

「ロイさん、さっきの画像消してください」 「えー。んー、」 ロイは暫く考えた後、アッシュに視線を向ける。 じっとこちらを見る目は何を考えているのかいまいち判断がつかない。 「……?」 「じゃあ、アッシュ君は居残りねー」 ――ニタリ あえて表現するならそんな言葉が似合う笑みを浮かべてロイは目を細めた。 あ、何か良からぬことを考えているな。 「やっぱりいいです」 何かを察したアッシュはすかさず断りを入れるがそれは一蹴された。 「だぁめ。ちゃんと残らないとばら撒くよ」 何とは言わないが確実にさっきの画像だろう。 やるかやらないかと聞かれると、嫌がることは平気でやりそうな気もする。 何故残されるのかはさっぱり分からないが、とりあえずここは大人しく従っておこう。 「……分かりました」 さすがにばらまかれると自分は兎も角キイトが可哀想だ。 「で、ロイさん。何で俺だけ居残りなんですか」 少々渋られたものの、何とかキイトだけ帰したその後。未だカウンターでシェーカーを拭いているロイに声をかけた。 一通り片付け終えたロイはニコリと笑うとアッシュに手招きしてくる。 仕方なく歩み寄ると、ガシリと両肩を掴まれた。 「アッシュ君、僕ともしようか」 「はい?」 言っている意味がわからずアッシュは素っ頓狂な声を上げる。 「だから、僕ともキスしよっか」 「え、」 何で、と思う暇もなく近づかれ、あっという間に端へと追いやられる。 「いや意味がわからないんですけど」 「んー、なんか楽しそうだったから僕ともして?」 コテンと可愛らしく首を傾げているが言ってることは無茶苦茶だ。 そもそもあれはロイが罰ゲームだとやらせたものだろうに何故わざわざ罰ゲームをしたがるんだ。 ロイはニコニコした様子で更に詰め寄ってくる。 笑顔と強引さのギャップがちょっと怖い。 寄られた分だけ後ろに下がるとすぐテーブルにぶつかった。しまった後ろに行けない。 そう背中側へ気を取られている間にもう一歩踏み込まれる。殆ど同じところに立ったロイとの距離はほぼゼロだ。むしろアッシュが後ろへ押されている。 「ちょっと、ロイさ」 「していい?」 ゆっくりアッシュの唇を撫でる彼はとても楽しそうな様子だ。 これ以上後ろに下がれない。仕方なく後ろへ仰け反るがロイは尚も身体を前へ傾けてくる。そのせいで半分テーブルへと乗り上げさせられてしまった。 一体何を考えているのかさっぱり理解出来ない。 至近距離だからか、いつもは隠れている左目がちろちろと覗く。 その目を見ているとなんだか物凄く落ち着かない気分になってアッシュは視線を彷徨わせた。 「キー君と出来るんだから僕とも出来るでしょ?」 「いやどう言う理屈…」 「……ふーん、してくれないならこの画像、君の弟分達に送りつけようかな」 「すみませんするんで勘弁してください」 渋っていたらとんでもないことを言い出したぞこの人。 そんなもの突然送りつけられたらもう2人に合わせる顔がない。 アッシュは泣く泣く手のひらを返した。 「はいじゃー、口開けてー」 「分かりました!分かりましたけど……!俺あれ苦手で……」 「そんなことは分かってるよー?だからしたいの」 さすがの返答である。普通の思考回路ではない。 アッシュは相手の嫌がることはなるべくしたく無い派なのでロイのその思考はイマイチ理解出来ていなかった。 「でもまぁ、気持ち悪くならない方法も目星はついてるんだけどね」 トン、とロイは人差し指で撫ぜるようにアッシュの下唇を押す。 「要は口の中に物が入るから嫌なんでしょ。君が舌をちゃんと出せば解決だよ」 「そう上手くいきますかね」 「そればっかりはやってみないとねぇ」 だからお口開けて、と言われアッシュも観念した。この人は一度言ったらやるまで聞かない。 現に今、早くしろとばかりに唇にばかり触ってくる。笑顔が怖いアッシュは早々に諦めた。 恐る恐る舌を出すがロイは首を横に振る。 「だぁめ。もっと出して」 「うう……」 なんだか物凄く滑稽な図だ。仕方なく言われた通りもう少し舌を伸ばしてみる。 するとその先端にロイが自身の舌を絡めた。 「っ、ん」 意識したせいか過敏に反応してしまい、アッシュはびくりと肩を揺らす。 その反応にクスリと笑みを漏らすと、ロイは下から上へとなぞり始めた。 正面だけでなく裏側にも舌を這わせる。 「んぁ」 横から、裏を通って先端へ。そして先端にちゅっと吸い付く。 確かに気持ち悪くはない。気持ち悪くはないが、これは。 「は、ぁ」 ゾクゾクとした刺激が背中を駆け抜けていく。さっきとは明らかに違う意味で首の後ろの毛が粟立った。泣きたくないのにどんどん涙が浮かんで視界が歪む。ぱちりと瞬けば熱い雫が頬を伝った。 「もすこし、口開けて……ん、いい子」 あちこち散々なぞった後、ロイは次のことを要求する。 なんだか良く分からないまま言われた通り口を開けた。 すると今度はちろりとロイの舌先が上顎をなぞり始める。 決して下側は触らず、上だけをちろりとなぞられると吐き気は起きなかった。 起きなかったが、これはまずい。 「ふ、ぁ」 ゾクゾクとした刺激に酔ったのか、頭がボーっとする。身体を支えているのが辛くなった所でトン、と肩を押された。抗う力も入らずそのままテーブルに押し倒される。 くちゅり、卑猥な音を立てられるともうダメだった。 「……はぁ…ぅん……っ」 色々な意味で苦しくなって思わず顔を横へ逸らすと、すかさず顎を掬われ戻される。 「だぁめ。こっち向いて」 再び唇が重なった。苦しい。ゾクゾクする。 口内の感覚だけが鮮明で、頭が回らない。 そのぼーっとした感覚すら気持ちがいい。 拒否する為に押し返していた手はいつの間にかロイの腕に縋り付いていた。 何度も角度を変え、吸い付き、なぞられる。 それを繰り返しているうちにすっかり息が上がってしまい、ロイが満足して口を離す頃にはくたりと脱力しきっていた。 「……どう?気持ち悪い?」 「……見ての、通りです……」 手の甲で口を隠し、ぜぇぜぇと呼吸を整える。 なんだか逆上せたように熱い。いや、多分逆上せたのだろう。 その様を見てロイは満足そうに頷いた。 「うん、良かったみたいだね」 「ちょ、どこ触って……!」 するりと股間を撫でられ、息が苦しいのも忘れ慌てて起き上がる。あれだけされ続けて反応しないはずもなくアッシュのものは兆し始めていた。 「気持ちよかった?」 「……な、」 カァっと、羞恥で顔に熱が集まるのが自分でも分かる。 アッシュはその手を退けると半分乗り上げていたテーブルから慌てて降りた。 しかしロイはすかさず片手でアッシュの腰を引っ掴むとそのまま反対の腕で片腕を引く。 なんだかよく分からないままくるりと身体を後ろ向きにされる。その流れでロイは腰を掴んでいた手を滑らせシャツの肌け目から手を差し入れた。 「ちょ、何……っ」 「んー、流石にまだ感じないかぁ」 急に胸元を触られたアッシュは突然のことについていけず疑問符を浮かべている。 「じゃ、こっちで」 「ひ、!!」 胸の方に気を取られているうちに反対の手は股間に伸びていたようだ。いつの間にズボンを緩められたのか、直接握り込まれる。 ギュウッとやや強めにされると反射的に引きつった声が漏れ出た。 「ちょっとロイさん!」 「んー?」 アッシュが抗議の声を上げるがロイは聞いているのかいないのか生返事だけが返ってくる。 ロイは手を退けることなくまさぐりを続けた。 「んー、じゃないです!は、離してください!」 「でもさぁ、帰る前にどーにかした方が良くない?」 「じ、自分でどうにかします……!」 そう言って尚も触ろうとする手を制止しようと腕を引くがビクともしない。ロイの楽しそうな忍笑いが耳のすぐ後ろから聞こえた。 「ふふ、やだ」 「う、ぁ……やめてくださ、い!」 グリグリと亀頭を擦られ、腰が引けたままアッシュは悲鳴を上げる。 「まぁまぁ」 「まぁまぁ……じゃないですよ!」 「もう、うるさいなぁ」 嫌がられて面倒になったのか、ロイはさっきまでの愛撫とは比べ物にならない程容赦なく肩口に噛み付いた。 一瞬噛み切られたかと錯覚するほど本気の噛みつきだ。 「い……ったぁ!!」 すぐ口を離すと、噛み跡がついた肌をベロリと舐め上げる。それがまた痛みを助長させるようだった。 痛みとショックでぶわっ、と涙が溢れる。 「見せて」 ぼろぼろ涙を零すアッシュの顔を見る為、ロイは顎を掬うと無理やり後ろを向かせた。 無理に後ろを向いているせいで苦しい。 沿った背中も痛かった。しかしロイは気にする様子もなく、食い入るようにアッシュの顔だけを見ている。 「よがってるのも良いんだけど、やっぱりこういう顔のが好きなんだよね」 パッと手を離すと今度は首筋にぢゅ、と音を立てて過剰な程吸い付く。 「い……いたい、痛いロイさ……!」 最早ロイが何をしたいのか分からず、アッシュはただただ、訳がわからず泣くだけだった。 「あぁ、ごめんごめん。痛かった?」 どう見ても痛がってるだろうに、ロイはコテンと首を傾げるとまた後ろを向かせてアッシュの反応を伺う。 痛みで歪んだ表情を見て、とても楽しそうに目を細めて笑った。普段とは違う色気のある笑みだが、表情は仄暗い。 「ふ……うぅ……ぐす……」 食い入るように見るその目が怖くて、アッシュはぐすぐすと本格的に泣き始めた。 後ろを向かせられながらも、その目から逃れるように無理やり手の平で顔を遮る。泣きすぎたせいか呼吸に合わせて肩が跳ねる。 するとロイさんは一度逸物から手を離すとその腕を掴み上げ無理やり引き剥がした。 痛い。肩も痛いし首筋も痛いが、今は何よりも腕が痛い。 手首からギジリと嫌な音がした。 アッシュの口元が震え、カチカチと歯が鳴る。止めようと思ってもどうしようもない。 それをみてロイさんの目の色が変わった。 「あんまり泣かないでよ……興奮するだろ」 「……ひっ」 思わずアッシュの喉から引きつった声が漏れる。 顔は赤いのに目だけがギラギラとしている。本人の言う通り興奮しているのか、耳にかかる吐息は熱かった。 「う……っん」 再び口付けられアッシュは息苦しさに呻く。さっきよりも口の中が熱い。 「……っは、ぁ」 一通りアッシュの口内を弄ぶとロイは唇を離した。 そうした後ですぐにいつもの食えない笑みを浮かべると再び耳元に唇を寄せる。 「……なんてね。ごめんごめん。怖かった?」 さっきまでとまるで違う様子に声が出せず、アッシュはコクコクと頷く。するとロイはクスクスと忍び笑いをもらした。 「ほら、気持ち良くしてあげるから許して?」 「や、ぁ……あぁ!」 そういうとロイは再びアッシュのそこに手を伸ばし扱き始めた。 慌ててそれを止めようと力を込めるが、あちこち痛くてすぐに添えるだけに変わる。 その間にロイはグリグリと鈴口をなぞり擦り上げた。 ついでとばかりに後ろから口付けると上顎をなぞる。 「うん、……ふっく!」 無理やり後ろを向かされ、苦しさと息苦しさでアッシュは呻き声を上げる。ロイはその様子を見てまた目を細めるとそっと囁いた。 「気持ちイイ?」 「ひぁ……!やめ」 さっきまでと違い、擦る速さがぐんと上がる。 「……あぁ!や!そこ……!」 「嫌じゃないでしょ」 出てきた先走りを塗りこむように先端を擦ると泣き声にも似た悲鳴が上がる。 「ん、イっていいよ」 「あぁ……っ、ぁ!」 ぐりっと鈴口を押されると耐えきれずアッシュはそのまま達してしまった。 「……っぁ、あ……」 かくん、と膝まで脱力してしまうとすかさずロイがその腰を支える。 「おっと、良すぎちゃった?」 「……な、何……してんですか……」 ハァハァと肩で大きく呼吸をしながらも呆然と尋ねる。しかし返ってきたのは曖昧な返事だけだった。 「んー、つい?」 「ついって!」 「あははは、でもこれで交換条件ね」 はい、と言われロイの手元を見ると丁度先ほど撮られた写真が消去されるところだった。 「…………はぁー」 「ごめんごめん。ついその気になっちゃって」 許して?と悪びれもなく言われる。 許すものか、と思うものの最早怒る元気すらない。 アッシュは手首をさすりながら再び大きなため息をついたのだった。 ――疲れた。

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