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第9話

「塚原さん、大丈夫? 帰れる?」 「……多、分……」 「っぷ、駄目そうじゃないですか」  夏也は秋人の身体を自分のタオルで拭き取り、ワイシャツ、下着、スラックスを着せると、自分の身なりも整えた。行為が終わった途端に元に戻る関係に苦笑が漏れる。 「俺のマンション、徒歩で帰れる距離なので泊まりますか?」 「……え?」 「塚原さん、俺のこと好きなんでしょう?」  問う言葉に正直に顔を赤らめた秋人に微苦笑して、夏也は秋人の身体を抱き上げて触れるだけのキスをした。 「明日は休みですし、俺のこともっと教えてあげます」 「花峰くんの、こと……?」 「はい。色々と、ね」  妖しく笑みを浮かべる夏也に、秋人はまた欲に満ちた目を向け、恍惚の溜め息をついた。 「行き、たい……」 「ありがとうございます。では帰りましょう。夜が明けてしまいます」 「……うん……」 「そんな悲しそうな顔をしないで下さい。ちゃんと、可愛がってあげますから」 「……本当に?」 「えぇ、なんなら、呼び方も変えましょうか?」 「うん……敬語も、いらない」 「……分かった」  秋人の身体を支えながら、夏也は二人分の荷物も持って会社を後にした。  この後、二人がどうなったのかは、また別の話。 End

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