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思いがけない裏切り。
てっきりスターリーは間もなく生まれ出るだろうその命を喜んでくれると思った。
だからこそ打ち明けたのに――。
オメガという性 を受けたばかりに実の両親でさえも煩わしく思い、捨てた。
けれどその自分を受け入れ、こうして傍にいてくれたのは他ならぬスターリーだった。
アルファが相手なら、発情期であれば女性でもないのに孕んでしまうオメガは、格式が高いアルファや、一般層で圧倒的に数が多いベータからも蔑まれ、虐げられてきた。
数少なく、リーダー気質に優れたアルファの性を持つ彼が、粗悪な自分を欲し、忙しい身の上であっても週に三度はこうして会ってくれる。
それはひとえに自分を愛してくれているとそう思ったからこそだ。
しかし、実際は違った。
彼は自分を――況 してやこの身に宿った小さな命さえも簡単に捨て去ることができる悪魔のような人間だったのだ。
ベイジルは突然襲ってきた闇に足下を掬われそうになった。
倒れ込むようにベッドへと寄りかかる。
けれどもそこに愛する彼はいない。
「いいことを教えてやろう。俺はお前の宿縁 じゃない。現に俺はお前に何も感じなかったからな。金輪際、俺に近づかないでもらおう。もちろん、その赤ん坊はさっさと下ろせ! いいな?」
吐き捨てるかのように告げた彼の声にはもう思いやりさえも窺えない。
瞼をきつく閉ざした先に聞こえるのは、ドアが閉まる音だった。
――もう絹のシーツが心地好いとは思えない。
彼は広すぎるこのキングサイズのベッドに蹲り、今日でこの世界が破滅したかのような絶望を味わった。
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