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神に愛されしアルファ

 †  とてつもなく大変な事態になってしまった。  スターリー・ジギスムンドは下唇を強く噛みしめた。  たしかに、これだけ長い年月を費やし、彼といた自分が悪い。  冷静に考えれば孕むことしか脳のないオメガだ。身ごもることはわかっていた筈だった。  それなのに、手放せなかったのは(ひとえ)に性欲処理の相手が欲しかったからだ。  自分の性欲と自尊心を満たしてくれる相手なら誰でも良かった。  そもそもベイジル・マーロウとこういう身体の関係になったのだって、元は高校時代からの友人という延長線上あっただけだ。  高校入学当初は、スターリー自身もまさか自分がアルファで彼がオメガだとは思いもしなかった。  それはある日の健康診断。  思春期真っ直中の性別検査で判明した(さが)で、二人の運命は180度変わってしまった。  スターリーが優れた気質を持つアルファだとわかれば、皆、自分を崇拝するようになり、その一方でオメガだと判明したベイジルは阻害され、果ては家族に捨てられた。  そしてアルファという性が判明したスターリーにとって順風満帆な人生を送る筈だったそこで、問題が発生した。  なにしろ自分は思春期真っ盛りだ。  しかしこうも皆からちやほやされてしまっては有能で清潔感のある人物として生きていかねばならない。  おかげで有能な自分は無能な人間と付き合うことを許されず、日に日に性的欲望が募るばかりだった。  ならば、何かでこれを対処しなければならない。

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