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番外編・見るもおぞましい悪魔。
†
「れろれろれろ~、ほらほら、ガブリエルきっとお前はべっぴんになるぞ? そして立派な四大天使になるんだぞ?」
ロシュ・サムソンは力強いその腕に彼女を包み込み、幼子が好む音の出る玩具を振っていた。
彼女はきゃっ、きゃっと手を叩いて喜びを表現している。
金色の髪が波打つ可愛らしい赤ん坊は、ベイジルと彼の子供だ。たとえ父親が違っていたとしても、そう胸を張ってこの赤ん坊に言える。
「もうロシュ、何言ってるの?」
ベイジルは椅子に座り、ベビー用のセーターを作るため、膝の上に毛糸を置いて編み針をせっせと手を動かしていた。
「何って、この子の髪、見て見ろよ。白い肌や金髪は君から受け継がれたものだ。君と同じでさぞや美人な天使になるだろう」
彼は悪魔だ。正真正銘、赤い目の十字架 神と呼ばれる恐ろしい悪魔で、なんでも死を司るらしい。彼をひと目見れば恐怖を与えるほどなのだとか――。
しかしベイジルには、俄 には信じられずにいた。
だって赤い目 は穏やかで、ロマのような姿をしているが、彼こそが天使ではないかと思うほどハンサムで優しい男性に違いなかったからだ。
しかしまさか慈悲深い悪魔がこれほどの親バカになるとは思いもしなかった。
初めはとてもではないが傲慢で冷淡な男だという印象だったからだ。しかしふたを開けてみればどうだろう。
彼ほど心優しく、彼ほど紳士な男性をベイジルは知らない。
「ほらほら~、高い高い~」
ガブリエルがきゃっきゃっと声を上げ、笑う。耳障りの好い声だ。聞いていて心が穏やかになる。
ベイジルの胸が熱くなった。その目には涙が溢れてくる。
愛する男生とこうして共に暮らせる日が来るだろうとは数ヶ月前までは想像できなかったからだ。
「何を泣く必要があるんだい? スイートハート」
きゃっきゃっと声を上げて笑う。
ロシュは逞しいその腕でベイジルとガブリエルを抱きしめた。
「愛しているよ、俺の天使たち」
「ぼくも、愛している。愛おしいバロン」
ベイジルは分厚い胸板に身を預ける。それからそっと目を閉ざし、これからもこの幸福が続くだろうことを実感し、あたたかなぬくもりを感じた。
ーENDー
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