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思わぬ邪魔

 あの赤い唇が自分の名を呼びながら喘ぎ、ベッドの上でしなやかに身をくねらせロシュを欲してくれれば――。  ベイジルが欲しい。  彼の後ろの引き締まった窄まりの中にロシュの欲望を埋め込み、ありったけの欲望を注ぎ込みたい。  ロシュは子供の面倒そっちのけで邪な気持ちを抱きながら目の前で子供たちと戯れている彼をうっとりと見つめていた。  しかしいつまでもベイジルに見惚れている時間はロシュに与えられなかった。それというのも何やら肩から冷たいものが滴り落ちてきたのを感じたからだ。  何事かと右肩に目をやれば、まだ三歳になったばかりの子供が顎を乗せ、短い足を動かしてまるで大木によじ登るかのようにしているではないか。  ――ああ、なんということだ。人々に恐れおののかれているペトロ神ともあろう者が人間の、しかも小さな子供に大木扱いされるとは!! 「おちびさん、おれは木ではないぞ」  ロシュはよだれを垂れ流している子供をひょいと抱え上げた。  ベイジルを眺めていたロシュは邪魔をされ、少しばかり不機嫌だ。しかしそんなロシュに対して子供はけたけたと楽しそうに笑っている。  どうしていいのか判らず困惑していると、彼の膝の上にまた違う子供が座りだした。  ロシュに掴まれ、宙に浮いている子供は両手を叩いて大喜びだ。そうかと思えば、また別の子供がロシュの腕にしがみついてくる。困ったことに、これでは抱え上げた子供を下ろせない。

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