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ペトロ神ともあろう者が。

 あろうことか、シスターのおかしな考えでロシュはベイジルと一緒に子守りをする羽目になったではないか。  十字架の神(バロン・クロア)という異名を持つ、人々に恐れられているペトロ神の長を捕まえて、だ。  しかも散々なことに、ベイジルと甘いひとときを過ごすことさえままならず、さらには魔物まで出てくる始末だ。  まあ、そのおかげでベイジルは自分への警戒心を解いてくれたわけだが、それでもロシュの空腹には変わりない。  なにせロシュは泣きじゃくるベイジルを一晩中宥めていたのだ。豪華ディナーを前にしながらお預け状態をくらった。これには流石のロシュもがっくりと肩を落としてしまう。  自慢ではないがロシュはこれまでにも幾度となく人間界にやって来た経験がある。人間界のこともそれなりに詳しい。しかしこうも自分の思い通りにならないのは初めてだ。  神である自分が人間に都合のいいようにあしらわれるなんて……。  自分の情けなさに、ロシュは小さく首を振った。  ――ああ、しかしベイジル・マーロウは美しい。  ロシュを虜にして止まないはしばみ色の目は生気を宿し、輝いている。  自分が望む食事ができないことですっかり意気消沈しているロシュではあるが、けれどもベイジルの眩しい笑顔を見ているとなぜか心が休まる。無理矢理嫌がるベイジルを組み敷き、欲望のままに行動を起こさなくて良かったと、今はほんの少しそう思える。  このまま、彼が自分に心を開き、ロシュの思うとおりに身体を開いてくれればどんなにいいだろう。

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