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この恋に悔いなし

 その後は、ちょっと意外な事もあったけれど元通りになった。  パーティーを勝手に抜けた事に常務は苦言を呈した。更に俺と西尾さんからはっきりと、本社行きを断った事にお怒りになり、二人で本社に呼び出された時にはちょっとヒヤッとした。  だがそこで待っていたのは常務の他に、二人の人物だった。一人は三原、そしてもう一人は若そうなハーフっぽい人で、聞けば日本支社長だとか。  何でそんなお偉いさんが出てきたのかと冷や汗が出たが、どうやら本社で何かあったようだった。  西尾さんは常務からこの機会に本社に戻る事を提案されたが、自分は今の環境に満足しているからその意思はない。そう言ったら、半ば脅しのような返答が返ってきた事を説明した。  それに対する常務の反応は「栄転じゃないか」というものだった。  そもそも西尾さんが子会社に出向になった理由も定かではない。それを俺が質問すると、答えは意外な所から返ってきた。  三原が、全ての経緯を知っていた。西尾さんの出向は三原が仕組んだと牧田は言っていたが、実際はこの時つきまとっていた常務の娘が仕組んだ事だった。  当時常務の娘は三原に気があり、アプローチしていたそうだ。だが三原は歯牙にもかけずに西尾と居ることが多い。だから西尾を飛ばせば縁が切れると画策したようだ。  常務は娘の我が儘を聞いた。それというのも三原は有能で、そういう男が娘と結婚でもすれば自分の為にもなる。そうふんだらしい。  これはその娘がそのまま三原に言った事だそうだ。  ついでに今回の大型プロジェクトの功績全部を三原に乗っけたようだった。泊がつくと。  流石にこの話を聞いて、三原は常務の娘を切るつもりでいた。が、西尾さんがこのままというのは納得いかず、婚約までして常務に取り入った。  それが、これまでの経緯だとうだ。  三原は全てのやり取りを録音していた。それを支社長に提出したものだから、常務は青い顔をした。流石に不当な理由で社員を出向させたとなればお咎めがあるものだ。  常務の処分は支社長が何らかの形ですると言ってくれた。三原は現在のポストを降りるそうだ。ここまできたら自分じゃなくても大丈夫だと。後任を西尾さんにと言ったけれど、西尾さんは丁重に断って現在の会社にいられるようにと願い出た。そしてそれは確約された。  これにて俺達の立場としては一件落着。本社の事は本社に任せて、通常運転だ。  そして俺達は今、三連休を使って温泉にきている。浴衣に着替えてゆったり温泉につかって、美味しい料理も食べた。今は部屋でまったりとお酒を飲んでいる。 「美味しいですね」 「あぁ」  日本酒をチビチビと飲みながら、西尾さんは上機嫌だ。浴衣から見える肌は上気して、とても美味しそうに見えて仕方がない。  なんて思っている事が知れたら、呆れられるだろうか。 「沖野」 「あっ、はい」  徳利を持って勧めてくる西尾さんからお酌されて、チビチビと飲み込む。喉が熱くなるみたいだ。 「沖野、顔真っ赤だぞ」 「日本酒飲み慣れなくて」 「他のでもいいぞ」  クスクス笑う西尾さんが今日はとても可愛い。俺は何度も理性をフル動員したくらいだ。 「西尾さんの好きなもの、俺も知りたいんで」  チビチビ飲みながら伝えた俺を、西尾さんは顔を赤くして見ている。口元を隠して、恥ずかしそうに目線を逸らして。だからその顔、誘われてるとしか俺には見えない。 「西尾さん、可愛い」 「なっ! お前よりも5つ近く年上だぞ。可愛いは、ないだろ……」  そう言いながら更に赤くなる西尾さんに、俺は我慢できなくなった。酔っているのもあって、ヘタレの俺はどこかに行った。席を立って西尾さんの隣に来た俺は、そっと手に触れた。  触れた西尾さんの手は形がいいのに、ちょっと筋張ってもいる。男の人だなって思う手だ。  その手に手を重ねて、俺は伸び上がって唇を重ねた。やっぱり柔らかい。想像とか遙かに超える感じで気持ちいい。  誘うように開いた唇の間に舌を差し込んで、躊躇いながらも絡めてみると甘えたような声が漏れる。その声も、絡める舌から伝わるくすぐったいような感じも気持ちいい。腰にくる。 「西尾さん」  至近距離で見つめると、西尾さんは恥ずかしそうな顔をする。それでもチラチラとこちらを気にしてくる。  くそ、その恥じらい顔も俺好きだ。 「本当に、嫌じゃないんだな」 「まだ俺がノーマルだっての気にしてるんですか? 心配しないでくださいよ。俺、今までに何回も西尾さんで抜いてますから」 「な!」  驚いたように目を丸くした西尾さんの顔が、見る間に真っ赤になっていく。 「お前、その……俺、で?」 「え? えぇ。最近は特に」 「そう……なの、か」  この人、そのうち本当に湯気が出るんじゃないだろうか?  そのくらい真っ赤になっている。  力が抜けたみたいにへたり込んだ西尾さんは、やがて顔を上げて綺麗な笑みを浮かべた。 「布団、行くか?」 「っ! はい!」  とうとう頂いた夜のお誘いに、俺は尻尾を振る犬のごとく喜んで、いそいそとドアに就寝中のカードを下げ、鍵をかける。汚れた時のタオルとか、この時を期待して用意したゴムとかローションとかをひっそりと鞄のポーチから出して、寝室の襖を開けた。  二組の布団が少し離して敷いてある。俺は一方にぱっと移動して布団をめくり、ポーチを枕元に置いて隣をポンポンした。 「布団、くっつけなくていいのか?」  弟を微笑ましく見守る兄みたいな目で俺を見る西尾さんが、隣に大人しく腰を下ろした。 「布団汚したら気持ち悪いじゃないですか。それに布団だから、落ちて痛い事はないし」 「それ、は……終わったらあっちで、二人で寝るつもりか?」 「はい。ほら、旅館の布団って一般の布団よりも少し余裕有るし」  俺は当然のように答えたが、西尾さんは予想外だったんだろう。撃沈したみたいに布団に手をついてぷるぷるしている。 「あの……一緒に寝るのは嫌ですか?」 「違う! その……色々嬉しい誤算が多くて、心臓が痛い」  視線を外して恥ずかしそうにする西尾さんが可愛すぎて、俺はとにかく萌え死ぬんじゃないかと思った。  改めて視線が合う。西尾さんはふわっと笑って居住まいを正して、ちょこんと頭を下げた。 「よろしく、頼む」 「あっ、はい。頑張ります」  そこ改まれると緊張するけれど、二人で笑ったら照れくさくて、でもやっぱり幸せで感無量な感じがした。  改めてキスをするけれど、さっきよりもずっと官能的だ。流石西尾さん、俺よりも上手でリードされている気がする。俺ってば、ちょっと前まで童貞だし。ソロ活動しかしてないからやっぱり不器用だよな。 「んっ、沖野……」  僅かに唇が離れた時、不意打ちで名前を呼ばれて熱くなってくる。今度は俺から、角度を変えたりしながら俺は西尾さんの体に触れた。  手にしっとりと馴染む肌は熱くて、うっすら汗をかいている。胸元に触れて、手の感覚で気持ちのいい場所を探していくと、ちょっと引っかかる部分に触れた。その瞬間、キスをしたまま「うんっ」と気持ちよさそうな喘ぎ声が頭に響いて、チュッと舌を吸われた。 「乳首、気持ちいいんですね」  引っかかった部分を爪の先で軽くひっかくようにすると、西尾さんの唇から吐息が漏れる。最初は小さかったそこはあっという間にぷっくりと大きく尖り、硬く自己主張を強くした。  凄くエロい。そして、快楽に弱い事を知った。触っていない反対側の乳首までつられてちょっと尖っている。触って欲しいと催促しているみたいだ。 「可愛いです」 「え? あんぅ! やっ、あぁ!」  向かい合って座った状態のまま、俺は少し体を丸めて乳首に吸い付く。舌にもコリコリと押し返す弾力がある。そこを少し強く吸い上げると、西尾さんはビクビクと震えながら喘いだ。  チラリと下が見える。浴衣のいいところは脱がせなくてもはだけたら色んなものが見えるところかもしれない。合わせがはだけて、反応している|男茎《おはせ》が見える。とろっとした先走りが先端からぷっくりと露を作っている。  躊躇いなんてない。俺は手を伸ばして先端を包むように触れて、先走りを塗り込むように撫で回した。 「あぁ! だめ、沖野ぉ!」  捏ねくり回す先端から新しい先走りが溢れて、俺の手を汚す。ビクビクしながら座ったまま俺に抱きついてくるのは、なんか嬉しい。そして可愛い。  色々信じられない。俺の手の中で西尾さんが育っていって、切なくて切羽詰まった声がずっとしている。もうガチガチで、今にもイッてしまいそうだ。  そして俺の愚息もガッチガチです。 「やっ、やっ! イッ、くぅぅ」 「いいですよ。イッてください」  ギュッと抱きついた西尾さんを受け止めた。切ない嬌声が響いて、俺の浴衣の背がギュッと強く握られて、胸の中でビクビクと震えた人がただ、愛しい。  手にどろりと放たれた精を見て、俺は衝動的に少し舐めてみた。しょっぱくて、青臭くて、何だか変な味はした。けれどこの行為に俺はまったく嫌悪がなかった。 「沖野!」 「俺、西尾さんなら咥えられるわ」  イッた後で気怠げな西尾さんが慌てて俺を呼ぶけれど、俺はまったく構わずに呟き、もう一度同じように指先を舐める。そして、次の機会にはフェラもしてみようかと思っている。  西尾さんがティッシュを引き寄せて、それで俺の手を拭いてくれた。ちょっとだけ名残惜しいと思ってしまうのは、もう少し西尾さんの味を味わってみたいと思っていたからだろうか。 「その……沖野はこれ、どうする?」  ふと伏せられた西尾さんの視線が俺の愚息に向かっているのは分かった。途端に恥ずかしくなった俺がまごついている間に、西尾さんは眼鏡を外して離れた所に置くと、座ったままの俺の股ぐらに顔を寄せて前屈みになった。  そしてまったく躊躇いなく、口の中に入れてしまった。 「あっ! ちょっ……ヤバッ!」  人生初のフェラ(だと思う)は、衝撃的な気持ちよさで腰が蕩けそうになる。ヌルヌルで熱い口腔に包まれて、舌で丁寧に裏筋を舐められて、先端を吸われて。  上目遣いに俺を見る西尾さんの潤んだ瞳。いつもはかっこいい人がとろんとした表情で俺のを咥えている。その視覚的なエロさはたまらない。一気に玉がせり上がって、西尾さんの口の中で大きくなるのが分かった。 「ひもひいぃは?」 「咥えたまま話さないで下さいよ!」  不規則に喉の奥の方が触れて狭まって、俺は何度か波を越えた。痺れるように気持ちいい。もう、出てしまいそうだ。 「だ……めだ! 西尾さん、出ちゃう! 口離してっ」  ソロマスターですから、自分がイキそうなのは分かる。しかもけっこう本気で出る。腰の辺りがじわっと痺れて熱くなって、出したくてたまらない。  だから口を離して欲しいのに、西尾さんは構わず口を上下に扱き上げるように動かし、やわやわと玉を揉む。そんなことをしたら本当に我慢できない。脳みその血管切れるんじゃないかってくらい我慢していて、俺は切羽詰まった状態で西尾さんの肩を突き放すようにして無理矢理引っこ抜いた。  その途端、俺の愚息は爆発した。白濁が綺麗な西尾さんの顔に全部かかってしまう。髪から何から汚してしまったのを見て大焦りしたが、西尾さんはちょっと残念そうに伝ってきたそれを舐め取った。 「いや、汚いから!」 「沖野もしたじゃないか」 「したけど!」 「それなら、おあいこだろ?」  綺麗なこの人の顔に思い切りぶっかけてしまったのは、罪悪感もある。けれど俺の出したものを舐めるこの人を見ると、腹の底から欲望がわき上がってくる。怪我した事に欲情している。そしてもっと、この人を犯したいと思ってしまう。 「まだ、元気だな」  舐めきれない分を拭いた西尾さんが、俺を見て小さく笑う。恥ずかしながら俺は、扇情的な西尾さんの姿を見てまた愚息を硬くしていた。  西尾さんはそんな俺を見て笑って、仰向けに布団に寝転がると自ら足を広げ、俺を手招いた。 「して、くれるんだろ?」  他人の後孔なんて、見たことがない。けれど綺麗な色をしたそこが僅かにヒクリと動くのを、喉を鳴らして見つめた。 「それとも、嫌か?」 「それだけはないです!」  悲しそうな顔をする西尾さんの言葉を即座に否定した俺は、覆い被さるように陣取る。そして枕元のポーチからローションを取り出して手の平に出した。 「そんなの用意していたのか?」 「一応調べたんですよ。その……傷つけたり痛い思いをさせるのは、嫌なので」  これでも準備はしておく質だ。この日の為に俺はネットで男同士のセックスの方法をひたすら調べ、苦行のように動画を見てやり方をエアで真似て、イメトレもしてきた。  それでも実際にこの場になると緊張する。ヌルヌルになった指を一本、そっと当ててローションを塗り込んでからゆっくり中へと押し入った。 「あれ?」  指一本だって慣れないと硬くて痛かったり、違和感があったりすると書いてあった。けれど西尾さんの後ろは最初から俺の指を柔らかく受け入れて、程よく締め付けたりしている。西尾さん本人も苦痛は感じていないみたいだ。 「……もしかして、自分で準備とかしました?」  恐る恐る聞いてみると、西尾さんはそっぽを向く。けれど赤くなったから、全部バレている。  マジか……  本当に柔らかく入口が解れているから、俺は一度ギリギリまで指を引き抜いて二本に増やして中に触れた。柔らかくて熱い肉壁がふにふにと指を包み込んでくる。  西尾さんは少し気持ちいいみたいで、ちょっと切ない表情で時々吐息のような声を漏らしている。  俺はネットの情報を元にある場所を探していた。指の第二関節くらいまで入れて、第一関節を曲げた辺り。中を探る俺はやがて、指の腹に硬い部分が触れるのが分かった。 「あぁ!」  ビクッと震えた西尾さんの口から、高い声が漏れた。何度かそこを撫でるみたいに転がしたら、西尾さんの昂ぶりからトロトロと先走りが溢れてきた。 「やっ、そこやだぁ」 「ここが……」  今俺の指が触れている部分が前立腺なのか。弱い部分で、慣れれば凄く気持ちいいと書いてあったけれど、こんなによがって切羽詰まるほどなんだ。  自分でなんとなく予習をしてみた時は正直わからなかったが、西尾さんはここで気持ちよくなれるみたいだ。  弱い部分をちょっと擦るように指を捻ったり広げたりして、更に指をもう一本増やしていくと中も入口もとろとろに解れた。肉襞が絡むように俺の指を締め付けて搾り取るように蠢いている。この部分がこんな動きをするなんて、知らなかった。 「沖野、もっ、そこダメぇ! イッ……てるからぁ」  涙目の西尾さんが訴えかける。イッてるというのは……多分、中だけでイッてるんだと思う。だって前からは沢山の透明な液は出ても精液は出ていない。けれど中は時々強く締め付けて俺の指を吸い上げている。  これを、愚息でやられたらあっけなく陥落するだろうな。  早漏とは呼ばれたくないが、その可能性は大だった。 「沖野ぉ」 「ごめん、待たせて」  切ない涙目で俺を見上げて腕を伸ばしてくる人の後ろから指を抜き、俺は急いでゴムをつけてそこにローションをたっぷりかける。そして切っ先をぴったりと当てると、そっと腰を押し進めた。 「あっ、あぁ……はぁあぁぁ!」 「くっ……はぁぁ」  ローション効果とたっぷり解したおかげか、あまり抵抗なく入っていく。けれど入った途端に熱くうねる肉壁に包まれた俺は腰砕けになりそうだった。それくらい気持ちいい。痺れて恥骨の辺りが熱くなってくる。  それでもどうにか波を乗り越え、緩く腰を振る。先の方で気持ちいいと言っていた前立腺の辺りを擦るようにすると、西尾さんの中がキュゥゥと締まる。これがヤバいが、気持ちいいならしてあげたい。  徐々に深くしていくと物理的に距離が縮まる。根元までしっかりと挿入して奥を突いたら、西尾さんは嬌声を上げてビクビクと震えた。同時に狭い部分で締め付けられて、色んな部分が熱く痺れて身動きが取れなくなってしまった。  少しでも動いたら、暴発する。 「や、あっ……沖野……」 「西尾さん……気持ち、いい?」  肯定するように頷いた目から、悦楽の涙が伝った。俺はそれを唇で拭って、キスをする。溺れるようなキスだった。首に抱きついた西尾さんと、何度も角度を変えて短く、唾液を交換するようなキスをする。  それだけでも肉襞が俺を絡め取って蠢いているから、俺の中で何かが切れてしまいそうになっている。 「ごめ……西尾さん俺、気持ちいい」  衝動的に腰が動いて止まらない。もうこのままこの人の中を掻き回して、深く突き上げて奥でイッてしまいたい。  ブルッと震える俺を、西尾さんは頷いて受け入れてくれた。 「いい、よ……沖野、ちょうだい」  甘えた声と表情でギュッと抱きついた西尾さんを、俺は思いきり突き上げた。キュウキュウに狭い奥を突き上げる度に、中が絞ってくる。本能的な衝動にかられ、突き上げる動きを止められない。深く何度も抽送しながら、目の前にある美味しそうに熟れた乳首に舌を伸ばして吸い上げると、西尾さんの「イクぅ!」という嬌声と共に俺の愚息は強く包まれ吸い上げられた。 「あっ! イッ…………くぅっ!」  最奥を突き上げたそこで、俺は人生最高の快楽を味わいながら達した。  多分俺の腰もう溶けてる。そう思うくらい気持ちいい。イキながら、それでも緩く腰を振ってしまうと、呆けた西尾さんの唇から掠れた「あ……」という声が上がった。それがまたエロい。  でも流石にこれ以上は頑張れないらしい。ゆっくりと出ていくと、びっくりするくらい大量に出ていた。二度目とは思えないものだ。 「西尾さん、大丈夫ですか?」  まだ時折体を震わせる西尾さんは、触らなくてもイケたようで腹の上が汚れている。用意していたタオルで綺麗に体を拭いて、重い体でほんの少し窓を開けた。最中は夢中で分からなかったけれど、今は少し空気がこもっているように思う。 「沖野……」 「あっ、すいません」  気怠げに身じろいで俺を見る西尾さんの側に行って、水のペットボトルを渡した俺は色々感無量だった。 「沖野」 「はい?」 「キス、してもいいか?」  まだ涙を浮かせたまま、今更そんなことを聞いてくるこの人が可愛すぎる。ついさっきまでもっと凄い事してたのに。 「勿論です! むしろ、させて下さい」  改めて正面から抱きしめた俺は、ちょっと緊張しながらキスをする。扇情的なものじゃなくて、愛情たっぷり込めた優しいキスを。  西尾さんはとても嬉しそうに笑って、お返しをくれる。お互いドロドロに汚れているのに、今更こんなことがもの凄く恥ずかしくて、緊張している。そして、もの凄く幸せだ。 「沖野、こんな俺だがこれからもよろしく頼む」 「俺こそこんなですけど、よろしくお願いします」  抱き合って見つめ合ったまま、俺達はクスクス笑ってこれからを約束する。  そんなくすぐったい今がこれからも続くと、俺はけっこう確信していたりするんだ。 END

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