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第9話

手綱に引かれた馬が歩くたびに鞍が跳ね、張り型に深く腹を抉られる。 下から突き上げる強烈な快楽をまともに受けて、マツバは悶絶に悲鳴を上げていた。 「ひぃっ……あ…ぐっ」 膝裏から足を抱えられているため、快楽を逃がす事も叶わない。 強すぎる刺激は、マツバがこれまで経験したものを遥かに超えていた。 「どうだ?こんな強烈なのはさすがのお前でも味わった事はないだろう?」 掠れた頭の中に西園寺の甘い声が響いてくる。 その時、また馬が一歩を踏み出し鞍が跳ね上がった。 ズルリと入り口まで引き抜かれた張り型が、一気に奥深くまで潜り込んでくる。 摩擦で熱くなった媚肉のあちこちから快感を訴える悲鳴が上がった。 「っ……〜〜〜〜っうううっ!!」 恥ずかしい格好のまま媚肉が張り型をぎゅうぎゅうと食い締める。 一瞬目の前が真っ白になったのは意識が飛んだせいだろうか。 「あぁ、またイッたのか?まぁ、こんな太いものにずっとこうされてたらイキ狂うだろうな。マツバのここも捲れあがって凄い事になりそうじゃないか?」 入り口の腫れあがった襞を揶揄されて、マツバは羞恥に唇を噛み締めた。 このまま続けられたら、西園寺の言う通り確実に肉体が変わってしまうだろう。 二度と閉じる事がないだらしのない孔になってしまったらと思うと恥辱でどうにかなってしまいそうだった。 しかし、マツバは決めたのだ。 全てを委ねるのだと。 そして、西園寺はマツバにとってただの客ではなく特別な存在なんだということを知ってもらいたい。 そのために、マツバは西園寺にされる事を全て受け入れると決めたのだ。 涙と涎でぐしょ濡れの顔で振り向くと、マツバは切れ切れながらも決意を口にした。 「好き、にしてください…西園寺さまにされる、なら…マツバは、本望です…」 滲んだ視界の先で、西園寺の瞳が見開く。 そしてすぐに眩しいものでも見たかのように細められた。 「止めてくれ」 制止の言葉に男衆がすぐに反応し、馬の歩みが止る。 マツバはようやく鞍から響く振動と強烈な快楽から解放された。 張り型からも解放されホッとしたのも束の間、後孔にとてつもない違和感を感じて息を飲んだ。 先ほどまで極太のものを咥えていたせいか、襞がすっかり開ききってしまっているらしい。 熱を孕んだ内側にひんやりとした空気が流れ込んでくる。 その空気の感触さえわかってしまうほどだった。 まだ何かが出入りしているような感覚に身震いしていると、西園寺がぐいと顔を傾けてきた。 少し強張った彼の表情に、自分が何か粗相をしてしまったかとドキドキしてしまう。 「あまりかわいい事を言うと酷い目にあうぞ。あれが入ったまま挿れるところだっただろう」 不機嫌な声で窘められてマツバは絶句した。 「これでも俺は毎回我慢してるんだ。箍が外れたらどうしてくれる」 「……っ!」 耳元で囁かれた言葉に思考が停止する。 煽るとか、そんなつもりマツバには全くなかったが、自分の拙い言葉や行動でも西園寺を揺さぶる事ができているという事は単純に嬉しかった。 不器用で、言葉足らずで、気持ちの半分も伝えられていないとずっと思っていたからだ。 昂揚にどうにかなりそうになっていると、背後からぎゅっと抱きすくめられた。 妖しげな手つきがマツバの輪郭を滑り、半開きになった唇にそっと入り込んでくる。 舌を掴まれ、口の中を攪拌されてマツバは息苦しさに悶えると再び思考を蕩かせた。 「馬から降りたら死ぬほど突いてやる。文字通り、お前のここがめくれるまで何度も突いてやるからな」 双丘の割れ目に押し付けられたあからさまな欲望に、身体が激しく疼く。 好きな人にはどこまでも馬鹿になれる。 いつか誰かが言っていた事を思い出す。 恋を知らなかったマツバには、その意味が少しもわからなかった。 けれど… 今なら痛い程よくわかる。 例え美しく咲いた花の、その花弁をめくられようとも、手折らようとも、西園寺にされるなら何でも構わないと心の底から思えるようになったからだ。 西園寺様、ずっと、ずっとお慕いしております。 一途な気持ちを込めて、マツバはその広い胸に全てを預けたのだった。 end.

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