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プロローグ
あらぬ場所からひっきりなしに水音がしている。
ぐちゅぐちゅぬちゅぬちゅと、二本の指……いや、三本だろうか……で、中を掻きまわされて。オレの腰が逃げるように浮いた。
しかしどっしりと足の間に陣取った体がそれをゆるさない。
悲鳴が漏れる。女みたいな声が恥ずかしくて、オレの目に涙が滲んだ。
ラブホテルの、やけにムーディーな天蓋付きのベッドで、仰向けになって喘いでいる自分がひどく場違いな気がして……。
オレは腕を持ち上げて顔を覆った。けれど。
「隠すな」
と、手首を掴まれ、引き剥がされる。
涙目で睨みつけると、ごりゅっと感じる場所を押された。
「ひぁぁぁっ」
ひくんっ、と下腹部が跳ねた。
ダメだ。
そこは、なんだかダメな場所だ。
オレは必死に首を振ったのに、そいつはニヤリと笑って、容赦なくそのポイントをぐにぐにと刺激してくる。
ローションのぬめる音が、鼓膜までも犯してくるようだった。
「ああっ、だめっ、だめっ」
体を捩 って逃れようとするのに、足にちからが入らない。
オレの体の中心では、オレの啜り泣きに合わせて、とろとろと先走りの汁を零しながら勃起したソレが揺れている。
部屋の証明はオレンジ色なのに、目の奥では白い星がチカチカと点滅し始めた。
ダメだ。
イく。
イってしまう。
男に尻の中を弄られて、射精してしまう。
「ああっ、だ、だめっ、や、やめろっ」
オレの切羽詰まった声に、切れ長の瞳が面白そうに細められた。
「どうした?」
「と、止まってっ。あ、ああっ、あっ、で、でるっ、でちゃうっ」
オレは止まれと言ったのに、指の動きが早まった。
腰が浮き上がる。
ダメだ。イくっ。
あられもない声が、喉から飛び出した瞬間。
ピタッ、と動作が止まった。
「ああっ?」
絶頂が目前に迫ったところで放置され、思わず失望の声が漏れた。
ぐぽ……、と後孔に入っていた指が、まとめて引き抜かれる。
ソコがゆるんで、ぽかりと開いているのがわかって……オレは狼狽した。
襞 がひくひくと蠢いている。
ローションをとろりとしたたらせたオレのソコは、男の目には、ひどくだらしのない孔として映っているのではないだろうか。
「み、見ないで……」
羞恥に頬が熱を持つ。
オレは、手で後孔を隠そうとしたけれど……それよりも早く、ひたり、とソコに押し付けられるモノがあった。
その熱に、立てさせられた内腿が震えた。
オレの体の中心で、男が。
開きっぱなしの、オレの孔に。
ペニスを、突き立てようとしている。
「挿れるぞ」
低く、セクシーな声が囁いた。
オレは思わず目を見開く。
「う、うそ……」
無意識の呟きは、音にはならなかった。
筋の浮いた、先端の大きく張り出した太いソレが。
襞を掻き分けながら、ぬぷっと侵入して来ようとする。
愕然とその光景を目に映して、なぜこんなことになったのか……とオレは、とろけそうになる思考を働かせ、ここまでの過程を思い出していた……。
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