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第1話

 宮代(みやしろ)は、どこにでもいる普通の大学生だった。淡い金髪は襟足のラインまで伸ばし、前髪で片目を隠し、前髪で覆われていない涼やかな瞳は緑色、肌は色白で華奢……中性的な見た目だけれど、れっきとした男だ。  日中は大学で講義を受けて、終われば帰宅。バイトはしておらず、大学でサークルにも加入していない。  宮代には、年上の彼氏がいる。彼の名前は織辺(おりべ)と言い、未成年の宮代に手を出しているけれど、二人はれっきとした恋人だ。  そんな織辺と宮代は、同棲している。織辺が借りているアパートの一室に、二人暮らし……字面だけ見たら、二人の関係性は良好だろう。  ――宮代の体に付けられた、痛々しい傷さえ見なければ。  淡い緑色のストールを巻いた宮代は、日の落ちてきたいつもの帰路を歩む。残暑が続く中、大学からアパートまで歩いていると、日が落ちてきたとはいえ……汗はかく。宮代は暑さにうんざりしつつ、アパートの階段を上がった。  鞄の中にしまい込んでいた鍵を取り出し、玄関のドアノブに差し込み、ゆっくりと開錠。  扉を開けると、中からはいい匂いが漂ってきた。  戸締りを確認し、宮代は居間に向かって歩き出す。  居間のすぐ傍にある台所には、一人の青年が立っていた。 「織辺さん、ただいま帰りました」  声を掛けると、織辺と呼ばれた宮代の恋人が、振り返らずに返事をする。 「あぁ」 「だいぶ涼しくなってきましたけど、まだ暑いですね。織辺さん、ガス使ってて暑くないですか?」  鞄を居間のソファに置いた宮代は、腕を上に上げてから、体を伸ばした。そんな宮代に気付き、織辺はガスを止める。  ソファに座る宮代の正面で、織辺は髪を結っていたゴムを取り、跪く。少し長めのモサモサとした黒髪は、その見た目だけでも暑そうだ。宮代とは対照的に、男らしく引き締まった体……男なら誰でも憧れる、抜群のプロポーションだろう。  織辺の真っ赤な瞳に、宮代が映る。宮代もそれに倣い、自身の瞳に織辺を映した。  不思議なことに、料理をしていた織辺は汗をかいていない。織辺は満足そうな笑みを浮かべて、宮代へ口付ける。 「ん……っ」  宮代が吐息を漏らすと、織辺は尚更嬉しそうに目を細めた。一瞬だけ離れたかと思うと、もう一度……今度は、深く口付けられる。 「ふ、ぁ……ちょ、っと……織辺さん……っ」  いきなり服に手を掛けてきた織辺に対し、宮代は身じろぐ。

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