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第2話

このご時世、こんなに煙草の煙が立ち込める飲食店は珍しい。 男ばかり集まる所はこんなにも愛煙家が多いのだろうか。 身体に悪いから、と職場の社員たちが禁煙を始めて行く中で、たまに香る煙草の香り。 それは疲れ切った自分にとって「癒し」となっていた。 「今日も満席なんだな、盛況なこって」 津田は新しく買った煙草の箱を開けながら薄煙るカウンターの奥に居るマスターに話かける。 「初めはどうなることかと思ったんですけど、意外と需要あったみたいで」 シェイカーを振りながら、黒服を着たマスターは微笑む。 「ゲイバーなんて一か八かでしょうよ」 「まあね」 東京みたいな大都会ではない地方都市でなかなかの度胸でしょ、とマスター。 最近は増えたように思える同性愛者だが、どうしたって少数派なのだ。 儲けようとしているなら、こんな店は開かない。 「マスターのお陰でこっちは助かってるけどね」 ギムレットをオーダーして、津田は煙草に火を点けた。

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