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第3話
津田が東京の本部からこの地方都市へ転勤を言い渡されたのは、1年前。
繁忙店である店の店長が体調を崩し、出勤がままならないとスタッフから本部に連絡が入ったのだ。
急遽、代理の店長を近県から呼び寄せたが、繁忙店であるが故に本部の助太刀が必要だとの判断がなされた。
当時地区のマネージャーであった津田にその白羽の矢が立つ。
結婚をしていない津田に会社も打診がしやすかったのだろう。
幸い付き合っていた「彼」とも数ヶ月前に別れていたので津田には特に断る理由はなかった。
ただ、辞令を聴きながらぼんやり考えたのは週末の「お楽しみ」が継続できるかどうか。
休み前の夜、ゲイバーで一人呑むのが津田の楽しみだった。
高校生の時に自分の「性癖」に気づき、思い悩んだ時期もあったがそれも短期間。
気がついたら不思議と「彼」ができていた。
自分からオーラが出ているのか、学生時代から出会いには苦労せず、社会人になった頃は
ゲイバーへ通い手っ取り早く「相手」を求めた。
短ければその日限り、長くても半年。
ーーー溜まるものを吐き出しさえ出来れば。
ーーーどうせ家庭を持てない身体であれば、執着する必要はない。
ーーー深入りするだけ「面倒」だ。
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