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第1話(R15)
地方都市・レジオは「都市」にも関わらず、最先端都市・レクターから離れていることもあり、その生活は30年近く遅れていた。
だが、広大な土地に特に事件もなく、長閑な日々はそう悪いものではなく、レジオはレジオなりに豊かな生活を送れていることもあり、市民はそこそこ満足していた。
ただ、1人の青年を除いては……
「ああ、平和なのは良いけどさ、退屈だ。退屈すぎる!」
青年の名前はジェス・テジエ。レジオでは出生届のようなものがなく、大体、あの豊作の年の、収穫の頃に生まれたとか。凶作の年の、寒さ厳しい頃に生まれたとか。そんな感じなので、正確には分からないが、今年で、20歳そこそこだったと周りの大人達は言っているので、20歳くらいだとジェス本人も思っている。
「まぁまぁ、平和なら良いじゃない? 僕はこの町、結構好きだよ」
ジェスを宥めているのは同じくらいの青年で、イルク・デ・リレだ。ジェスと比べると、少し細身の身体に、色白のイルクはジェスよりも物知りで、思慮深い性格をしていた。
「ふん、レクターから来ておいてよく言うよ。レクターじゃあ、毎日、ほっといても、色んな事件が起こるんだろ? 新聞記者としては断然、そっちの方がありがたいね。毎日、毎日、どこどこの猫が生まれたとか、へロスじいさんの昔の武勇伝とかフロリスばあさんの園芸雑談ばかり書いて、飯を食うのは楽じゃないんでね」
ジェスは悪態をつくと、ベッドから身体を起こす。というのも、ジェスとイルクは恋人同士で、今はピロートークの真っ最中だったのだ。
「なぁ、もう1回、良いだろ?」
ジェスはイルクをベッドへ押し倒すと、イルクは落ち着いた緑の目を揺らして優しげに笑う。まるで、しょうがないな、というように、ジェスの深いブラウンの髪を一房握ると、「良いよ」とキスをする。
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