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第2話

 というのが、3ヶ月前のことだった。 「え、レクターへ?」 「うん、ちょっと最近、体調がね。あ、でも、レクターの病院に行ったら、一発で治ると思う」 「ふーん、すぐ帰ってくるのか?」 「うん、そのつもりだけど? あ、向こうへ着いたら、手紙、書くね」  というイルクの言葉とは裏腹に手紙は待てど待てど暮らせど暮らせどジェスの元は届かなかった。  レジオからレクターまでは馬車で1ヶ月程、かかるらしいが、イルクがレクターへ到着するのが1ヶ月。イルクが書いたであろう手紙がレジオまで到着するのが1ヶ月だとすると、2ヶ月で手紙はジェスの元へ届いている筈なのだ。  ちなみに、イルクはジェスと比べると、非常にマメな性格で、手紙を書くのが億劫になってしまったとか、書くのをついうっかり失念していたというような人間ではない。  と、なると、  手紙を書けない状況下にある。  実際のところは分からないが、それがジェスとしては1番しっくりくる回答だった。 「まぁ、俺もそろそろ1度はレクターに行って、見聞を広めてみるのも悪くないと思ってたところだしな」  実は、ジェスは8年程前に1度、レクターへ行こうとしたことがあった。ただ、思いのほか、馬車代やレクターでの滞在費等、路銀がかかる事と成人前だったこともあり、計画が実行されることはなかった。  そんなジェスも2年前に成人し、今は新聞記者として多少は収入もある。  旅先で路銀が尽きたとしても、その脚と感性で特ダネを得て、その腕と情熱で市民に訴えることができる。体力や気力にだってそこらの青年達の中では1番あると自負している。  レジオでは瞬く間にジェスがレクターへ出ることが広がり、ジェスの記事が読めなくなるな、と惜しむ声が上がったが、気持ち良く送り出してくれた。 「まぁ、向こうで行き詰まったら、いつでも帰ってこいよ」 「何よぉ〜!! ってありがとな。まぁ、気が向いたら、帰ってくるわ。イルクも割とここは気に入っているみたいだったし」  見送るレジオ市民に、ジェスはトランクを持ち上げるとレクター行きの馬車へ乗り込んだ。  だが、その後、ジェスがイルクを連れて帰ってくることはなかったと言う。

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