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第3話
レジオからレクターまでは馬車が出ているらしいのだが、ここ何年かで交通手段も大きく発展していったという。
レジオとレクターの間にある町・レゴサまででいわゆる御者が馬車を操ってという旧式のものだったが、ここからレクターまでは機械仕掛けの馬車? に乗っていくらしい。
「馬、いないのに動くの?」
無邪気に笑いながら尋ねる子どもの出身地はレジオと同じくらい田舎らしい。ジェスも子どもと全く同じことを思っていると、子どもの連れの老人が言った。
「ああ、動くとも」
「なんで、なんで?」
何故、子どもは「なんで?」とすぐに尋ねるのだろうか? なんて、ジェスは思ったが、自身も漏れなくそんな子どもだったことを思い出す。
だからこそ何かを調べて伝える記者になったのだとも。
ジェスも老人の答えを待った。
「車の後ろにタンクがあるだろう?」
「うん、あるよ」
「そのタンクの中には大量の蒸気が入っていて、宙を走る。おまけに乗っている人間が少ない程、空もそれだけ高く飛べるそうだ」
「え、本当なの?!」
子どもが叫んでいたせいか、ジェスの「マジかよ」という呟きは掻き消えてしまう。
確かに何年か前、レクターでは蒸気革命が起こり、近隣の都市がその恩恵を受けた。
ちなみに、レジオからレクターに1ヶ月かかっていたのはいかに良い馬と腕のある御者でも険しい山道を通り、幾つもの山を越えていくのは至難の業だったからだ。
「明日にはレクターに着けるから早く寝ような、スィンセルス」
「うん!」
などと、俄かには信じられないことを言って退けた老人はスィンセルスという名前の子どもの頭を撫でる。
ジェスもそれに心の中で賛同して、馬車に乗り込んだ。
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