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ルシファーという名の魔王

山の様に積まれた書類に、次々と判子を 押していく。 ふと、窓から見える外へと視線を向けれ ば、そこには何処までも続く闇が広がっ ていた。 風がサラリと絹糸の様な金髪を舞い上が らせ、通り過ぎていく。 まるで陶器の様な肌に蒼玉の瞳を持つ、 美形の彼の名はルシファーという。 彼は、この魔界の事実上の支配者だ。 魔界を統治するだけの魔力を彼は持って いたけれど、彼はあまり争いを好まな い。 元々は天使であり、温和な性格をしてい た。 しかしながら、必要に迫られればどこま でも非情にもなれる。 統率力、カリスマ性を持ち合わせた、然 るべくして魔王になったと言える堕天使 だった。 ルシファーが魔王の地位を得て、暫く し、敵対関係にあった天界と魔界は彼の 尽力により、休戦状態となった。 それに魔界の住人達は従い、魔界の中で も大きな抗争はなく、穏やかな時が続い ていたが、古くからの上位の上級悪魔達 の中にはルシファーの事を疎ましく思っ ている者も少なくなかった。 それでもルシファーの力を警戒し、前 例の無い、100年の平和が保たれていた。

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