6 / 6

あくまで悪魔

「気がつきましたか?」 ふいに声が聞こえ、慌てて隣を向けば、最初から居たのか、誰かがベットサイドの椅子に座っている。 誰かが居た事にも驚いたが、もっと驚いたのはその容姿だった。 光に溶けそうな美しい金糸の髪と、陶器の様に滑らかな白い肌。 まさに、マナエルの理想の天使像だった。 「どこも痛い所はありませんか?見た所、目立った怪我は無い様ですが…」 「あ、だ、大丈夫…です。その、ど、どこの高位の上級天使様か、知りませんが、助けてくださってありがとうございます…!」 慌てて頭を下げるマナエルにルシファーは困った様に微笑んだ。 (わ、笑った顔も、すげー綺麗だ…) ルシファーの心中等、知りもしないマナエルは呑気にそんな事を思っていた。 「残念ながら、僕は天使ではありません」 ルシファーの言葉に、マナエルは不思議そうに首を傾げた。 天界に、天使ではない者がいるなどとは聞いた事がない。 「驚かせてしまったらすみません…。僕はルシファーと言います。天使では無く、悪魔なんです」 「ルシ…ファー…?…あ、くま?」 暫く、相手の言葉の意味を考えて、マナエルはベットの上を慌てて後ずさった。 まだ、生まれて幾年も経っていないマナエルも、さすがに魔界の頂点の魔王の名前位は知っていた。 ルシファーといえば、魔界の支配者で、残酷、非道、天使を頭からばりばり食べてしまうという…。 「随分な言われ様ですね…」 クスクスと笑うルシファーに、マナエルは心で思っていた事を口に出していたと気づく。 「え!?あ、あの…」 焦って目の前のルシファーを見やるが、彼が気を悪くしてる様子は無かった。

ともだちにシェアしよう!