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5、片翼の一組のアルファと、一匹のオメガ

「欠陥品の……アルファ?」 「ええ。僕たちはアルファであるはずなのに、アルファの資質は欠けているんです。夏樹は落ち着きと知性に欠け、僕は柔軟さと活発さに欠けている。とてもリーダーになれる器じゃない」  それに、と、春人は言葉を続ける。 「僕たちは、一回もオメガの発情を感知したことが無いんです。すぐ隣でオメガが発情しても、僕たちだけは気付かない。気付けなかった。……ついさっきまでは」  どんなに発情しても、アルファに届かない。  それが片岡――劣等種の中の欠陥品――だ。欠陥品のはずだった。 「お前たち……俺の発情が届いたのか……?」  答える代わりに、夏樹の腕が片岡を抱きしめた。  決して離すまいと力強く、片岡の身体を包み込む。 「な、夏樹?」 「……おじさん……俺、ヤバい……。こんなの初めてで、身体が熱くて、おじさんが可愛くてしかたないし、俺……俺……!」 「夏樹……ダメ……だ」 「なんで!? おじさんが誘ったんじゃんか!」 「だって、俺とお前は叔父と甥で……んんっ!?」  言い終わる前にくちびるが塞がれた。  片岡の抵抗をものともしないように、貪欲に、貪婪に、片岡のすべてを味わうように、若い情熱が注がれる。  舌が絡み合うたびに、片岡の頭は真っ白になっていった。拒絶の理由にしようとした【血縁】は、背徳という名の禁断の果実となり、麻薬のように全身を痺れさせる。  親子ほどの歳の差も、禁忌により燃え上がる心を加速させたのだ。  そしてなにより、フェロモンがアルファに届いたことが、片岡の心と身体を満たしていた。  相手は幼い頃から知っていて可愛がってきた甥だ。だが同時に、片岡の存在を肯定してくれたアルファなのだ。そのアルファが自分のことを求めている。抵抗なんてできるはずもない。否――抵抗したくない。受け入れたいのだ。 「おじさん……僕も……」  後ろから抱きついた春人が、服の隙間から手を入れ、片岡の身体を撫で回す。そして、首すじに舌を這わせ愛撫していった。 「春……人……ひぅっ!?」  片岡の服をめくり、夏樹が乳首に吸い付いた。舌先で小さな突起を転がし、それと同時にズボンのベルトを外しにかかる。 「ダメ……だ……」  口では否定しながら、身体は一切の抵抗の素振りさえみせない。その理由は……ズボンから顔を出した、雄々しく腫れ上がった分身を見れば一目瞭然だろう。 「ッ……ぁ、ア……ん……!」  愛撫されるたびにペニスをピクピクと痙攣させ、喘ぎ声を漏らし、フェロモンを放出していく。  自慰なんかとは比べ物にならない快感と、期待と恐怖が片岡を昂ぶらせる。  昂ぶっているのは若いアルファたちも同様で、痛々しいほど勃起したペニスを剥き出しにしていた。 「おじさん……僕……もう……」  春人がペニスを片岡の穴へあてがい、ズブズブと沈めていく。 「っッッ!? ぁ、ア、あぁあああ!」  春人が片岡を貫いたとき、片岡の心を満たしたのは、絶大な幸福感と安心感。  痛みはもちろんある。だが、それ以上に嬉しかったのだ。  そして、片岡は理解した。自分は欠陥品なんかじゃなかったと。  フェロモンは、真に運命の番にのみ効くものだったのだと。 「ぅあ……すご……おちんちん……とろけそ……」  ぎこちない腰つきで、懸命に春人は腰を振り片岡の尻へと叩きつける。  四つんばいの獣のような格好で、ガムシャラに、心の求めるままに。  行為の最中、片岡の心にぽっかりと穴が開いた。  満たされているはずなのに、何かが欠けている。  心が言う。『まだ足りない』と。  心の求めるもの……答えは、目の前にあった。夏樹のペニスである。  その答えに気付いた片岡は、一切の躊躇も無く、夏樹のペニスを口に含み、頬肉でシゴき始める。 「ッ!? おじさん……それヤバ……イイ……!」  片岡の体内へと挿いった二本のペニスは、シンクロしたようにアナを侵していく。  口と穴、ふたつの秘孔が二本のペニスに貫かれ、かつて欠陥品だったオメガは、理性を飛ばし獣になった。  陽が昇る頃、タバコの臭いは愛の営みの香りで上書きされ、粘つく白濁液が散乱した室内で、新しい命が密かに宿ったのであった。  

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