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最終話

『部屋の前で話してんのもなんだから…』 と、茨城は都筑を部屋に招き入れた。 だが都筑は玄関より先へは上がろうとしない。 仕方なしに玄関で話を聞く事にした茨城。 「はぁ…。…えーと、とりあえずコレは何なのかな~? 都筑サン?」 「……この間の、お返し」 「…へ? お返し? なんの?」 「…金平糖くれたでしょ。それの」 思いがけない返事に茨城は目を見開く。 「え、そんなの気にしなくて良かったんだぜ」 すると、ムッとした都筑が反論する。 「そういう訳にはいかないよ。ボクは借りを作ったままはイヤなんだ」 「……借りって…。でも、ま、ありがとな。都筑からのお返しか。なんだろな~」 茨城は苦笑いすると、お礼を言って手提げ袋の中身を取り出した。 その手の中にあったのは、少し黄色みがかった白いクリーム状のモノが入った瓶だった。 「…これ。…もしかして、中身、マヨネーズか?」 「……………キミの好きなものが、他に思い浮かばなかったからね」 目元と頬を赤らめた都筑が、ちょっと拗ねたようにそう呟いた。 そんな都筑に茨城は感動に体を震わせる。 「……都筑が、俺の好物を選んでプレゼントしてくれるなんて」 「プレゼントじゃなくて、ただのお返し。間違えないで」 「しかも瓶入りだよ。瓶のが新鮮さが長持ちするし酸味もあって美味いんだよな。もしかして、そういうのも調べてくれたのか?」 「調べてない。そういう説明文はあったけど…、それにしたのはたまたま」 「そうなのか?まあそれでもいいや。なんにしても嬉しいぜ。ありがとな、都筑」 満面の笑みを浮かべてお礼を言う茨城。 と、都筑が急に足を踏み出し茨城との距離を一気に詰めると、その唇へと口付けた。 「…!…ふ、…ぅ、ン」 「……ん」 ゆっくりと唇を離し、都筑が熱の灯った瞳で茨城を見つめ自分の気持ちを吐露する。 「これでも結構ガマンしてたんだからね?なのに、そんな無防備な笑顔しないでくれる?」 「…な、そんなこと言われても、俺はただお礼を言っただけで…」 「…はぁ。無自覚が一番厄介だよね。…だから鑑識課の連中だって…」 「…? …アイツらが、何だよ?」 「なんでもない」 「なんでもない、じゃねぇだろ?都筑…」 「もう黙って」 都筑は両方の手のひらで茨城の頬を挟むと口を塞ぐように口付ける。 何度も角度を変え茨城の咥内を味わっていると、茨城の身体から力が抜けていった。 「……は…ぁ…」 「キスだけで、蕩けた顔してる」 茨城の身体を支え、意地の悪い笑みを浮かべた都筑が愉しそうにそう告げると 「……うっせ …ぇ」 と、上気した顔を更に染め上げた茨城が悔しげに返した。 「へぇ、そんな事言うんだ」 「……な、なんだよ」 「じゃあボクからは、これ以上はしないよ」 「へ? …ッ、…ん、ぅ、んん…」 再び、茨城の唇を塞ぐ都筑。舌を侵入させ、逃げようとする茨城の舌を捕まえ絡ませる。 「……ふ、…はぁ。…してんじゃ…ねぇかよ」 都筑の舌の愛撫から何とか逃れた茨城は、息をつまらせ抗議の声をあげる。 「うん。キス以上はしない」 「な…」 「キミは、どうしたい?」 言って、また口付ける都筑。 クチュクチュと舌が絡み付く音が、思考まで蕩けさせようとする。 「…は、…ぁ、俺は…、……たぃ」 「はっきり言って」 「……俺は、都筑に、…好きだ、って言いたい」 「………え」 茨城の予想外の告白に、さすがの都筑も一瞬動きが止まる。 「…ふ、ふ~んだ。…驚いたか」 「…別に。…知ってたし」 お互い動揺を隠しながら強気の発言をするが、どうしたって空回る。 「な、んで知ってんだよ。俺、今までに言ってないよな?もしかして、俺の気持ちってバレバレなの?」 「まあ分かりやすくはあるけど。じゃあ逆に聞くけど、キミは好意を持ってない相手と身体を重ねる事が出来るの?」 「……え、それって。…都筑も俺の事、好きだって…言ってる気がする」 「やっと、気付いたの?」 小悪魔的な笑みを浮かべる都筑に、心を鷲掴みされる茨城。 「……なんだよ。…しらねぇよ」 脱力したように都筑にもたれ掛かる。 そんな茨城を優しく抱きとめ、茨城の桃色の髪に愛おしそうに口付ける都筑。 「……ん。…な、なあ、都筑」 髪に性感帯のある茨城が身を捩って都筑の唇から逃れようとする。 「何?」 当然、それがおもしろくない都筑はキツメの返答になる。 「え、…あ~。……いつからだ?」 「何が?」 「……俺の事、…好きだって、思ったの」 「そんな事、キミに教える必要ないよ」 「なんだよ。ケチーっ」 「それより、キミはボクにシて欲しい事はないの?」 「……え」 「キミのここ、反応してるみたいだけど?」 都筑の手が茨城の中心を掠める。 「…ぁ。…~~~っ。…イジワルすんなよ、都筑」 ピクリと反応してしまい羞恥で顔を赤くした茨城が上目遣いに都筑をにらむ。 「キミが素直になればいいだけでしょ」 だが都筑はそんな茨城を愉しそうに追いつめていく。 「ほら、さっさと言ったら?言わないなら、ボクは帰るよ」 そう言って、都筑は茨城から離れようとする。 「え、あ、待てよ」 焦った茨城が咄嗟に都筑の服を掴み引き止めると、都筑は満足そうに意地悪な笑みを浮かべ視線で促す。 「…くっそ~。言えばいいんだろ、言えばっ。俺は、都筑が好きで都筑とシたいから、シてくださいっ」 「上出来」 都筑は口角を上げ、茨城の身体を壁に押し付け口付けようとする。 「ちょ、待て、都筑」 「…まだ、何かあるの?」 寸止めされた都筑は、不機嫌を顕に茨城をにらむ。 「…あ、ここじゃなくて、スんなら…ベッドがいいな、なんて」 頬を染め、控えめに意見を言う茨城に、深い溜め息をつく都筑。 「その方がいいかもね。…でも散々、 このボクにオアズケをしたんだから、覚悟してね」 靴を脱ぎ、茨城の手を引き都筑が部屋の中へと入って行く。 「…覚悟なんて、とっくにしてるっての」 と、小さく呟いた茨城は、都筑に繋がれた手をキュッと握り返したのだった…。 恋人同士になった二人の時間が始まる…。

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