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【ハッピーエンドと誰が決めた】 4

◆いつぞやに書いた短編です。  オバサンから許可を取ったオレは一度、一輪車から降りる。  そして、リンゴをカットしにキッチンへ。  ……そういえば、掃除がまだ途中だったな。  まぁいい。今はそれよりも、ジャグリングだ。  一個のリンゴを小さくカットしたオレは、玄関へ戻る。 『今からこの小さなリンゴでジャグリングするぜッ! 刮目しなッ!』  オバサンにそう宣言してもう一度、一輪車へ跨った。  またもや広がる、ジャグリングワールド。  疑惑は、確信へ。……つまり、楽しいッ!  スカートのまま器用に一輪車を操作しているオレを褒めてほしいぜ。  ……おっと! 男のくせにスカートを穿いてることには、ツッコミ不要だ!  それよりもこの、華麗なリンゴさばきを褒めてほしい!  ……そしてできれば、見物料としてこのリンゴをくれないだろうか。  あ、でもダメだ。知らない人からリンゴなんてもらえない。  ……いや、でも。この人さっき、自分で『怪しくない』って言ってたよな?  とかなんとか、考えてごとをしていた。  ──その瞬間。 『──ん、ぐ……ッ!』  口を開けて上を見上げていた、オレの口に。  ──リンゴがひとかけら、入ってきたではないか。  いや、これは事故だ、事故! オレのせいじゃない!  確かにちょっと『うまい具合に入ってこないかな?』とか思ったけど、これは違う!  わざとではない! ……本当に! マジで!  ……でも、口に入ってしまったモンはもう出せないよな。  返すのも、失礼だろう?  ──食べてしまおう。  ──それから、謝ればいい。  そんなことを考えて、すぐ。 『──馬鹿な白雪姫』  風が吹いて、オバサンのフードが脱がされる。  フードの下から現れた、顔は……。 『……オバ、サン……ッ!』  オレをこの森に追い出した、張本人。  ――継母だった。  完全なる同音だが、ちゃんと異義語だぜ、この【オバサン】ってのは。  ……いや、もうちょっと驚けよ。オレ的には超絶ダイナミックな衝撃的イベントだったんだからな?  オバサンは髪をかき上げ、不敵に笑う。 『それは毒入りのリンゴなのよ。あんたがまだ生きていると知って、特別に作ってあげたわ』 『そんな……ッ! わざわざ、オレのために……ッ?』 『自分にとって不利な部分を聞き逃す秀逸な聴覚は健在みたいね、白雪姫。……あんたに食べさせて、殺してやろうとしたんだけど……』  言いたいことが、沢山あるのに。  ──力が、出ない。  オレはそのまま、一輪車から落ちた。  ──ヤバイ、視界が。  ──まぶたも、重くなってきた。  そんなオレを見下ろしたまま、オバサンは呟く。 『──あんたがこんなに、アホだったなんてね』  憐れむような表情を浮かべて。  ……何だコレ、恥っず。  うわぁ、今すぐ死にてぇ……ッ!

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