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【ハッピーエンドと誰が決めた】 了

◆いつぞやに書いた短編です。  ……真面目な話。  この王子は、ヘンタイだってところを抜けば……まぁ、かなりハイスペックな男だ。  背は高いし、イケボだし、運動もできる。  頭もいいし、物腰も穏やか。  それでいて、イケメン。  ……神様よぉ? コレって不公平だと思わないか?  何でこんな男を創りだしたんだよ?  同じ男として泣けてくるぜ。  思わず、ジーッと、顔面を凝視する。 「……白雪姫」  すると、突然。  ──王子が、オレの手を握った。 「どぅえ……ッ!」  オレの手、よりも……大きくて、ガッシリしてる。  ……それに、あたたかい。  王子はオレの手を握ったまま、その場に跪く。  そして……まさに真剣そのものな目で、オレを見上げた。 「──私と、結婚してください」 「ぎぇぇ……ッ!」  な、何でそんなにイイ声出すんだよ……! 思わず、潰れたカエルみてぇな声出しちまったじゃねぇか。……誰が潰れたカエルだ!  自分の顔を見なくたって、分かる。  ──オレは、きっと。  ──真っ赤に、なっているだろう。 「白雪姫」  熱い瞳で、真っ直ぐに見つめられる。  ──ダメ、だ。  心臓が、ウルサイ。  手から伝わる熱が、妙に気恥ずかしい。 「……どうしても、無理でしょうか?」 「ひ……ッ」 「白雪姫、返事を」  整ったその顔は、茶化しているようには見えない。  さっきまで可愛いハサミを持っていたヘンタイとは、まるで別人のようだ。  ──どう、しよう。  赤くなった顔のまま、オレは王子を見つめる。  この男相手に、これだけドキドキしたのは……たぶん、初めてだ。  だって、そうだろ?  コイツはいつも、ふざけたことばっかり──。  ──いや。  いつもコイツは、小人の手伝いをしてくれる。  オレが持っていた重い荷物をさりげなく持ってくれたり、ほつれていた小人の服を素早く直してくれたり。  ──コイツは、いい奴なんだ。 「オ、オレ、は……ッ」  恥ずかしくて、王子の顔を見ていられない。  ──真剣な気持ちなんだから。  ──真剣に、答えなくちゃいけない。  なのに、コイツの顔を見ていたら頭が真っ白になって。  ……ん?  ……『真っ白』?  いつの間にか下がっていた、オレの視線。  その先に、映ったのは。  ──真っ白な二本の棒。  ──まるまるとした、カボチャのようなもの。  ……白い棒と、カボチャ……? 「……白雪姫? どうかされましたか?」 「お、まえ……ッ」 「はい?」  確かに、カッコイイ奴だ。  それに……いい奴だとも、思う。  だけど。  だからって……ッ! 「──そのファッションセンスだけは、マジでムリだからァアアッ!」  なにを、ドキドキしていたのだろう。  初対面でキスをかましてきて、毎日ワケの分からん告白をしてきて。  挙句に、このファッションときたもんだ。  というかコイツ……ずっとオレの手をスリスリ揉み揉みしてきてるし! 「ご安心を、白雪姫! 既に私たち二人の寝室は用意済みですし、初夜の準備も万端です! 母上が愛読している男性同士の官能小説は、私も読破しております! つまり、私は童貞ではありますが知識だけはあるということです!」 「気持ち悪ィよバカじゃねーの手離せやキモイッ!」 「ウブなのですね、白雪姫。ですが、なにも不安がることはございません! きちんと【メスイキ】というものを体感させてみせましょう! こう見えて私、天才型ですので!」  オレの言葉をどう解釈したのか。  王子は、ワケの分からんことをのたまっている。  ──コイツは確かに、いい奴かもしれない。  ──だけどそれ以上に……どうしたって。 「──この、ヘンタイがアアアァァッ!」  ──コイツは、ヘンタイなのだ。  今日も森に、鈍い音が響き渡った。 【ハッピーエンドと誰が決めた】 了

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