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練乳苺(練乳×苺)
本当はただ、一途な愛を求めていたんだと思う。
「チョコ、ごめん。やっぱ俺、お前とはやってけない」
同級生のチョコに自分の気持ちを素直に伝えると、チョコは驚いたように明るい茶の瞳を俺に向けた。
「え? なんで? だって俺達、上手くやれてたじゃん」
本当に、心底驚いた様子のチョコに対して罪悪感が全くないとは言わない。俺も流されて一線を越えてしまった。それを、許したんだから。
「ごめん。でも俺、やっぱり練乳先生の事、諦められないんだ」
俺は素直な気持ちを口にする。その名を口にするだけで胸の奥が甘酸っぱい気持ちでいっぱいになる。先生の優しい笑顔が、俺のそんな気持ちを和らげてくれる。
けれど当然、突然の別れ話を切り出されたチョコは納得がいかない様子で俺を見つめる。縋るような顔をされると、俺も流されてしまいそうだ。
いや、それがだめなんだと、分かっているんだけれど。
「だって苺、先生とはやっぱり無理だって泣いてたじゃん!」
「うん」
「だから!」
「それでも! それでも俺、先生の側がいい。分かったんだ、先生の一途な気持ち。俺の我が儘や、素直じゃない所も受け入れてくれた人なんだ」
チョコと付き合う事で、こいつの奔放さを見る事で、俺は余計に練乳先生の大切さを知ったのかもしれない。
先生は俺の学校の理科の先生だ。色白で美人で、ちょっと気が弱そうで、いつも白衣を着ている。
俺はその頃、友人だと思っていた生クリームに襲われそうになって怖い思いをしていた。そんな時だ、練乳先生が色んな生徒の相談に乗ってくれると聞いて、訪ねていったのは。
生クリームとの間に立って親身にしてくれた練乳先生に、俺の方がいつの間にか想いを寄せていた。けれど生徒と先生じゃ、上手くいかないのも分かっていた。
事件後もだらだらと先生の側にいた俺を、先生も好きになってくれないか。駆け引きのような関係が2年続いたある日、俺は先生から「好きです」と言って貰えた。
嬉しかったし、舞い上がった。俺は先生となら怖くないし、嫌でもない。そう思っていたのに、先生は俺に手を出す事はしなかった。
「卒業したら」が、あまりに長い気がしてしまった。
焦って、空回って、苛立って先生に当たる事もあったけれど、先生は嫌がる事や遠ざける事もせずに俺の側にいてくれた。
なのに俺は苦しくなって、近づいてきたチョコと関係を持ってしまった。
そうしたら先生の側にいる資格もないように思えて、俺は先生に別れを告げてチョコと付き合う事にした。
けれど、これは間違いだったのかもしれない。
チョコはまだ、不満な顔をする。俺はスマホを取り出して、チョコに見せた。そこにはチョコの隣に立つ金髪長身が写っていた。
「バナナ先輩とも、関係あるんでしょ? それに前に、クッキーとかとも」
「いや、これは!」
しどろもどろになったチョコだが、やがて諦めたらしい。証拠突きつけられて今更言い訳も出来ないと思ったのかもしれない。
もしくは俺に、それほどの執着はなかったのかもしれない。
「わかった」
「んっ、有難う。チョコ、色々有難う」
「いいよ、そんなの。まぁ、明日卒業式だしな。そうしたらもう、生徒と先生でもないか」
「……都合、良すぎるかな?」
別れを切り出したのは俺だった。それを今更都合良く戻りたいなんて、普通は許されないのに。
けれどチョコは軽く笑って首を横に振った。
「いいんじゃない? それを受け入れられる人じゃないと、苺の相手は無理だって」
「チョコ……」
「頑張ってこいよ」
ぽんと背中を押したチョコに、俺は「うん」と強く頷いた。
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卒業式の翌日、俺は練乳先生の家を訪ねた。
先生は教職員用の社宅には住んでいない。1LDKの、割と綺麗なリノベーションマンションに住んでいる。
俺が訪ねると先生は驚きながらもすんなり通してくれた。そうして今、俺はドア横のインターホンを鳴らす手が震えた状態で固まっていた。
昨日ずっと、先生に話すことを考えていた。自分の気持ちや、謝罪の言葉、もう一度やり直したい事や、出来ればこのまま抱かれたい事。
深呼吸して、ベルを鳴らす。するとすぐにドアが開いて、先生が緩い笑みを浮かべていた。
「苺くん、どうしたんですか?」
「あの……先生」
「まずは入りなさい。寒いでしょ?」
桜の季節とはいえ、外はまだ寒い。着込んだ俺を中に入れてくれた先生は、そのままリビングに案内してくれた。
「……案外、綺麗」
室内を見回した俺は、物がきっちり収納されている落ち着いた室内に驚いた。それというのも先生の机の上は書類だらけで、結構散らかっているから。
「丁度整理をしたところだったからね。それに、部屋は寝るだけだから」
二人分のお茶を持ってきた先生がゆるゆると笑う。
部屋の隅に置かれた本は、見慣れた教科書だった。
「苺くん」
「はい」
「卒業おめでとう」
柔らかい声音で伝えられる「おめでとう」の響きに、俺の胸は甘く切なく疼く。先生はとても寂しそうな顔をしているのだ。終わりが見えたような。
「これでもう、君とは接点がなくなってしまったね。少し、寂しいよ」
「先生……」
「チョコくんとは、上手くやっているかい? 彼は人気者だから、ちゃんと捕まえておかないとね」
「先生、あの!」
俺は必死に先生の腕を掴んだ。それでも、先生の表情は晴れないまま、俯いてしまった。
「ごめんね、こんな顔をするつもりはなかったんだ。心からお祝いをしているんだよ、本当に」
「先生、俺ね……チョコと別れた」
伝えたら、俯いたまま先生の目がゆっくりと見開かれていく。信じられないのか俺の顔を凝視して、年上なのに少し泣きそうな顔をするのだ。
「ごめん、先生。俺、焦ってたんだ。先生とお付き合いして、すぐに体の関係もって期待してたのに、先生は卒業するまでって。俺、それが待てなかったんだ」
「苺くん」
「先生、好きだよ。俺やっぱり、練乳先生が好きなんだ。勝手なのは分かってるし、こんな奴嫌いかもしれないけれど。でも! ……俺の気持ちは、伝えたいって思ったんだ」
胸の奥が痛い。恋は嬉しいばかりじゃないというのは本当だと思う。現に俺は今、息も出来ない程に苦しくなりながら先生の答えを待っている。
先生は驚きながら、目に涙を浮かべている。フルフルッと首を横に振った先生は、涙を拭いながら笑った。
「俺も苺くんの事が今でも好きだよ」
「先生」
「ごめん、苺くん。俺は意気地なしで、離れていく君を追いかける事もできなかった。生徒と先生であることにも怖がって、君が傷ついているのを知っているのに受け止めてあげられなかった」
「違うよ先生! 俺が我が儘だったんだ。先生の立場とかもあるのに、自分の事ばかりで。それに、傷つけたっていうなら俺だって、先生の事傷つけた。ごめん、先生」
「ううん、いいんです」
嬉しそうに微笑む練乳先生の頭を、俺は抱きしめた。その腕の中で、先生はとても嬉しそうにしていた。
「先生、その……昨日で俺、先生の生徒じゃなくなりました」
勇気を持って伝えた俺の意図を先生は正しく受け止めたのだろう。驚いた顔をしながらも、綺麗な瞳が優しく微笑んで頷いた。
「そうですね」
「先生、俺!」
「先生は、だめです。練乳って、呼んで下さい」
俺の唇に人差し指で触れた先生の妖艶な笑みを、俺は初めて見た。そして一発で魅了されてしまったのだ。
セミダブルのベッドが軋んだ音を立て、二人分の吐息と俺の甘い声が月夜に響いている。
二人とも裸で抱き合って、ベッドで沢山キスをする。もう、頭の芯が痺れて気持ちいいことばかりで一杯になっている。
先生のキスは大人で、優しく甘い。チョコみたいながっついた感じはなくて、優しく舌を絡められ、時々食まれる。唾液を交換するみたいなキスに溺れた俺の唇から、飲みきれなかったものが落ちていく。
「んぁ、先生……」
「こら、先生ではないでしょ?」
「練乳、さん」
呼んだら、先生はとても嬉しそうに、綺麗な笑みを浮かべる。そして俺の肌を楽しむみたいに、赤い印を沢山つけていった。
「あっ、やぁ、跡残っちゃうよ」
「残しているのですよ。君には赤がとても似合う」
先生は案外嫉妬深いのかもしれない。執拗につけられる所有印を、愛しそうに指でなぞる時の顔は妖艶で、ほの暗くすら思えた。
「ここも、美味しそうな赤色ですね」
指がクリッと、俺の乳首を押し込む。それだけで俺は喘いで、ビクッと震えた。
「可愛い」
「やっ、あぁぁ!」
先生の唇が俺の乳首を優しく包み、舌がねっとりと絡みついてくる。コリコリと硬くなっていくのが俺にも伝わる。そこを強く吸い上げられたら、腰がビリビリ痺れた。
「苺くんのここは、本当に苺みたいで可愛い。甘酸っぱくて、歯ごたえもありそう」
「あぅ、だめぇぇ、噛んじゃだめぇぇ」
甘噛みされた乳首は感じすぎて少し痛いくらいになってくる。ジンジンしているのに、それが気持ちよくてたまらない。
それに、触られてもいない下半身が熱くて腰が揺れてしまう。さっきからヌルッと腹の上で滑っている。
「気持ちいいのですね。腰が止まらない?」
「はずか、しぃ」
「可愛いですよ、苺くん。とても可愛い」
嬉しそうな先生をぼんやりと見つめる。視界が僅かに滲んでいる。心臓はずっとドキドキしていて、もう先生から目が離せない。
先生は俺の腕を引いてベッドの上に座らせた。そして互いの逸物を見せ合うように、側へと寄ってきた。
先生のソレは、思ったよりも立派だった。太さも形も俺のとは違う。肌は白いのに、そこは赤い。
「苺くん、俺の握ってくれませんか?」
「いいよ。練乳さんも、俺の握って」
互いに向かいあって、お互いのものを握り合って扱いてみる。先生が俺のを握って、扱くなんて。こんな光景見られるとは思わなかった。
「あっ、気持ちいい……先生、気持ちいいよぉ」
「こら、苺くん。先生に戻っていますよ」
「無理、だよぉ。だって、先生ってずっと呼んでたんだもん」
腰が重たくなって、背中もビリビリしていて、頭の中は気持ちいいで満たされていく。
そして先生も気持ちいいみたいだ。俺の手の中で大きくなって、透明な露をこぼしている。
「仕方がありませんね。少しずつ、ね?」
「先生、俺ぇ」
「えぇ、気持ちいいですね。俺も気持ちいいですよ。ほら、一緒に握りましょう」
「んあぁぁぁ!」
俺と先生のが一つに握られ、先生の手が上下する。熱い先生のものに擦れて、手でも擦れて、俺はビクビクが止まらない。
「はぁ……苺くんも、一緒にね?」
「先生、俺……おれ、イクぅ!!」
「えぇ、俺もですよっ」
俺に扱くように言って、先生は二人分の亀頭をまとめて撫で繰り回した。その瞬間、俺は限界でイッてしまう。そして先生も沢山、俺に白濁をかけてくれた。胸まで届くほど沢山かけられた俺の体は、すぐに先生に染められてしまう。
「沢山、汚してしまいましたね」
俺の胸にかかった白濁を指ですくった先生が、ソレを乳首に塗り込んでいく。へその辺りも、色んな部分に。練乳濡れの俺を押し倒して、先生はとても色っぽい顔で微笑んだ。
「私色の君はとても魅力的です、苺くん。美味しそう」
「先生……」
「もっと沢山、食べてもいいですか?」
耳元に囁かれる甘い誘惑を、俺が断れるはずもない。頷いた俺に、先生は嬉しそうに微笑んだ。
放たれた白濁をすくった先生が、俺の後孔に指を伸ばし、ゆっくりと挿入していく。痛みは少ないけれど、異物感が凄い。指が俺の中で、クニクニと動いている。
「狭いですね。チョコくんとは、そんなにご無沙汰でしたか?」
不思議そうな先生を見上げて、俺は首を横に振る。涙が頬を落ちていった。
「あいつとは、そこ、してない」
「え?」
「あいつが、入れて欲しいって……だからぁ」
素直に伝えると、先生は驚いたみたいに真っ直ぐ俺を見る。そして突然ローションを取り出すとソレをまんべんなく塗り込み、指を二本に増やして挿入してきた。
「やぁ! いぅぅ!」
「可愛い、苺くん。ここは、俺が初めて?」
「初めてだよ、先生」
「俺には、ココ許してくれるのですか?」
「う、んっ。先生になら、俺……」
チョコとは争った。けれど先生には俺、犯されたい。
先生はとても綺麗に笑う。嬉しそうに。そして俺の後ろを解す指が沢山動いている。コリコリとした部分を押し上げられて、カッと熱くなって痺れた感じがあった。一緒に敏感な乳首を舐められて吸い上げられて、俺は目の前がチカチカしている。
「ココ、気持ちいいですね」
「やっ、そこやぁ。先生、こわいっ」
「大丈夫ですよ。気持ちいいことしかしません。ほら」
「やっ、あぁぁ!」
イク寸前みたいな痛い位の快楽に、俺は怖くて涙が出た。気持ちいい……のかもしれない。でも強すぎて俺が俺じゃ無くなりそうで怖いんだ。
「先生、怖い……そこばかりしちゃやだぁ!」
「大丈夫ですよ。ほら、いい子。ここで気持ちよくなりましょうね?」
指が三本に増えて、圧迫感が増して……快楽も増した。腹の中が熱くて、キュッと締まるのを感じる。その度に快楽の波が押し寄せて俺の頭の中を真っ白にしてしまう。意味のある事を言えなくなってくる。
「そろそろ、良さそうですね」
先生がニッと笑って、指を抜いてくれた。俺はそれにほっとしたけれど、次に先生が自分のものを押し当てたから、びっくりした。
「ゴム、つけましたから。ね? いいでしょ?」
「あっ……せん、せい…………はぁあぁぁ!」
入口が切れたんじゃないかと思う痛みが一瞬。その後は熱くて、俺は引きつったような息を繰り返した。腹の中が煮えてしまいそう。そして、気持ちいい場所が脈打っているみたいだ。
「挿れただけで、イッてしまいましたか」
「せん、せい……」
「最初はゆっくりね」
俺の腰を掴んだ先生が、ゆっくりと中を擦る。擦られる度に痺れて、気持ちよくて、我慢できずに震えた。
チョコが、言ってた。中で感じる快楽は凄いって。その意味が今、分かった。
ローションがぐじゅぐじゅと音を立てている。先生の挿入は少しずつ深くなっていって、俺はソレを奥までくわえ込んだ。
バカみたいな話しだけれど、チョコの時は「犯してる」と思ったけれど、今は「犯されている」と全部で感じる。腹の中がミチミチと先生で一杯になっていって、苦しいのに幸せでバカみたいに感じる。
「出来上がってますよ、苺くん」
「せんせぃ、きもひいぃ」
「えぇ、私も気持ちいいですよ。ほら、奥まで突いてあげましょうね」
「ひぐっ! あっ、あぁぁ!」
ズンッと、先生の肉杭が俺の腹の深い部分に埋まった。その瞬間、こみ上げた訳の分からない快楽に目の前が真っ白になった。ヒュッと喉が鳴って、他人事みたいに「今、イッてる」と感じた。
先生も気持ちいいんだと思う。俺の中でどんどん大きくなっていく。奥を突かれる度、俺はイッた。水みたいに薄くなった精液がチョロチョロとこぼれる。腹のなかが先生で一杯になっている。
「苺、くん……そろそろ、出してもいいですか?」
「いっ、も……先生、出してぇ」
「中に? それとも……」
「かけて、ほしぃ……先生の練乳沢山俺にかけてほしぃですぅ」
強く腰を引き寄せられ、強引に狭い俺の中を掻き回され、俺は掠れた声で滅茶苦茶な事を沢山言った。「欲しい」「好き」「もっと」「気持ちいい」を舌足らずで何度も。
大きくなった先生が俺の最奥を突き上げた瞬間、俺の中で何かが弾けて腰がはねて、体の中が全部締まっていくような快楽が走った。
瞬間、俺の中から抜けた先生がゴムを外して数度自ら扱くと、さっきの比ではない沢山の白濁が俺を汚した。腹も、胸も、顔や唇にも散る。そして残滓を俺のぽっかりと開いた後孔へと塗りつけた。
「可愛い俺の苺くん、とても美味しそうです」
「先生……」
「沢山、食べさせてくださいね」
「うん、先生……俺の事沢山、食べてね」
愛しそうに抱きしめてくれる先生を怠い体で抱きしめた俺は、そのまま落ちるように眠ったのだった。
END
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