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前編
俺はヤンデレが好きだがへたれが嫌いだ。
女の子にへたれはないかと思うが後ろ向きなキャラクターが大っ嫌いだ。
だがヤンデレ美少女と優柔不断な主人公という構図はいくらでも見る。
美少女がヤンデレになった理由はそもそも主人公が無意識にハーレムを作ったり他の女に優しくするからだ。
好きな女の子だけを大切にしていればヤンデレほど一途でつくしてくれるいい嫁はいない。
自分の淋しさを埋めるために主人公を使っているような似非ヤンデレではなく主人公にデレデレで他に目が向くと嫉妬で病んでいる部分を見せるのがたまらない。依存最高。主人公いないと生きていけないなんてかわいすぎる。
俺は主人公以外に心を許すようなビッチが大っ嫌いだから、ヤンデレ美少女は漏れなく愛している。主人公至上主義いいよ、いいよ。ヤンデレかわいい。
そう思っていたが実際ストーカーに付きまとわれると微妙な気分になる。
リアルと二次元の違いなのか、俺のストーカーが美少女じゃないからか。
「お、またストーカーから弁当の差し入れ?」
肩を叩かれて横を向く。隣の席の小池がニヤニヤしている。
中を見るとキャラ弁と呼ばれるタイプの弁当だった。俺の好きなアニメの女の子を描こうとして失敗している。
イライラして俺は小池の机に弁当を置いた。
「えー、なに? おれが食べちゃっていいの?」
小池は三年に兄がいるからか年上の知り合いが多くクラスで一番垢抜けている。
どちらかといえばオタク系な俺と話すような人種じゃない。
隣の席にならなければ交流を持つことはなかっただろう。
「青崎、これうまいぞ」
卵焼きを俺に食べさせようとしてくる小池。
髪型も制服の着方も俺の隣の席になってしばらく経ってからすこし控えめになった。
俺がクラス委員長としてチャラすぎだと言ったからだろう。
人の見た目なんかどうでもよかったが少し改善した小池の姿に俺は担任に褒められたりした。
真面目は伝染するとか笑われたものだ。
「毒とかないしさ。ほら、あーん」
笑顔で俺に卵焼きを食べさせてくる小池。
こいつはこう見えて世話焼きタイプなんだろう。
重い物を持っていたら変わってくれるし、疲れてたら甘いものくれるし、いろいろとマメだ。
口の中に入れた卵焼きの甘さに俺は限界だと思った。
決して、認めてはいけないし、言ってはいけない。
そう思っていたのにダメだった。
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