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001 君のために世界をやり直す1-1

主人公(受け)以外は正式名と愛称があるので慣れるまでが面倒かもしれません。 妹:ユースティティア→ユーティ 第一王子:フォルクハルト→フォルク 第二王子:カールハインツ→カール 主人公はクロト(シンプル) ----------------------------------------------------------------------------------------------  風に草の香りが混じる。  王宮の庭園は、花は目で楽しませるものという考えから香りの強いものを植えない。  紅茶の邪魔になるからか、あるいは花の香りで、どのあたりに居たのかバレてしまうことを警戒しているのか。  庭園はいつだって秘密の会話をする場所だ。      十三歳になる妹ユースティティアが、美しい庭園に不釣り合いな感情をむき出しにした声をあげた。   「なんで……! どうしてっ!!」    さすがの俺もうろたえる。  まわりに虫がいて驚いたというわけではない。  大きな赤褐色の瞳から涙がボロボロとこぼれる。    王子二人を前にして、ありえない醜態だ。 ユーティは傲慢で高飛車ではあるが、侯爵令嬢としての責務を投げ出すような人間ではなかった。 十三歳であっても背伸びをして出来る女であろうとしていた。 そんな妹の大きな泣き声。 こんな風にしゃくりあげて泣く姿など、初めて見た。 声もなく震えていた痛ましい姿は今でも思い出せるが、最近はなくなっていた。 婚約者になったカールハインツ第二王子も困っている。 今は二人の婚約を俺と第一王子であるフォルクハルトに伝えにきた祝福される場面だ。 それが、泣き声に濡れている。 フォルクがどうにかするようにと俺をにらみつける。 口で指示をしないのは、俺とフォルクの婚約を解消したことをユーティに説明してからの号泣だからだ。 自分が悪いという感覚を持ち合わせているのかもしれない。 ずっと好きだったカールと結ばれることが嬉しくて泣いているのならいいが、ユーティは俺とフォルクが婚約を解消したことにショックを受けている。 わが侯爵家の血が欲しい陛下が俺と妹に第一王子と第二王子をそれぞれあてがった。 この国では同性婚はそこまで忌避されない。王族や貴族であっても、手続きさえ行えば問題にならない。 男でも妊娠可能になる体に変化させられるからだ。 ただ、政敵を追い落とすために悪用された時期もあり所定の手続きが必要になる。 そのため俺が第一王子とくっついたのなら、男でも王妃になり、世継ぎを産むことになる。 婚約を解消した今となってはありえない話だ。 妹と第二王子がくっついて良かったとは、涙で顔をぐちゃぐちゃにしているユーティを前にして言えない。 「ユーティ、ユースティティア……そんなに泣いていけないよ」 目が溶けてしまうと優しいのか馬鹿にしているのか分からないことをカールが言い出した。 第二王子であるカールハインツはとにかく優しい奴だ。 器用貧乏でハズレくじを引きがちな金髪金眼。 悪い噂に事欠かないユーティを邪険にしない最強の[[rb:優男 > イケメン]]だ。 うちの妹が癇癪持ちでごめんといつも思っている。 「クロト……ユーティはどうしてこんなに泣いているのだろう」 「そうですねぇ」 「カール、お前との婚約が嫌なのだろう」  これで兄弟喧嘩に発展しないから逆に面倒くさい。  俺が穏便にまとめようとするのをフォルクが邪魔してきている気がする。 「ユーティは自分だけが幸せになるのが申し訳ないと、そう思っているのでしょう」 「コレがそんなに殊勝な考えを持つか?」 「兄上、失礼ですっ」 妹が悪く言われないように兄として出来る限り、手を尽くしたいが、これはもうダメかもしれない。自己完結して人の話を聞く気がなさそうだ。フォルクは決めつけて話す癖はやめたほうがいい。

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