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007 自分の嘘に気づく1-2
「敵も味方もすべて俺が把握しているから、怯えなくてもいいんだよ」
「ほんとう、ですか」
「俺はユーティに嘘なんか吐かない」
微笑んで口にしてから、自分の嘘に気づく。
嘘を吐く気はなくても、事実ばかりを告げたりしない。
「いつだって俺は本気だよ。それが後で嘘になってしまったらごめんね」
「おにいさまらしい、ズルい言い方です」
「ユーティはそんな俺を許してくれるだろう?」
「……はい、ゆるします。おにいさまがわたくしをゆるしてくれたように、わたくしもおにいさまをゆるします」
ユーティの中身が何歳であっても、現在は三歳児。
内容に反して発音が舌足らずで、かわいらしい。
「とはいえ、味方が少ないのは気になるところだね」
俺の言葉にユーティが肩を落とす。
時間を戻して情報を持っていても子供の体では限界がある。
「問題はないよ。ユーティのおかげで、随分と猶予はあるから安心して任せてくれ」
「わたくしに出来ることがありましたら、おてつだいします」
「もちろんお願いするね」
そう、笑って見たものの、これこそが嘘かもしれない。
涙をぬぐったユーティがキリっとした顔で俺を見上げるので「ミーデルガム家の茶会へ行く前に友達を作ろうか」と提案する。
以前の失敗をなぞる必要はない。
備えあれば憂いなしだ。
これは異世界からやってきた以前の誰かが口癖にしていたらしい。
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