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033 これも勉強だ

 ミーデルガム家にやってきた大きな目的なオピオンを仲間に引き入れることで、これは達成している。  カールとヴィータの婚約は予想外だったが、想像できる範囲のことだ。    時間を戻す前に陛下からフォルクとの婚約を提案された。  それはフォルクを次の王にするための最初の段階だ。    侯爵家の男を婚約者にするのは異例だが、同時に陛下の本気度も分かる。  フォルクに対して期待をかけているからこそ、俺を側近ではなく伴侶として迎えいれようとしていた。  加えて、プロセチア家の時間を戻すという力を王家に取り込みたいという思惑がある。  自分の望みを叶えるためにしか使えない、ひどく私的な力だ。  とはいえ、時間を戻したことで、あらゆる意味で優位になり、うまく使えば様々な悲劇を回避できる。    世界的な魔石の産地を持つミーデルガム家との縁も大切だが、プロセチア家も陛下は重要視してくださった。    以前の時も俺が断ればミーデルガム家との婚約の流れになったのだろう。  カールが言うには、本来は第一王子であるフォルクがヴィータと婚約するはずだったらしい。  年下ではなく同年代がいいと言い放ち、カールにヴィータを押し付けたという。  ヴィータは五歳だ。  見た目が派手なフォルクに一目ぼれをしていてもおかしくない。  現在のところ王位継承権第一位である、フォルクハルトの婚約者になりたいという野心もわかる。    ユスおじさまのことだから、ヴィータとカールの婚約の話をもらった時点で、カールが時代の王になる可能性が高いと感じたはずだ。フォルクすら危機感に気づくが、五歳のヴィータでは分からないだろう。    フォルクと婚約という話を想像すると当然、サエコのことを思い出す。  別段、フォルクのロマンスに口出しはしないが、サエコを選んだというのに廃嫡を覚悟しない理由が分からない。サエコを求めるということは、自分が王になることを諦めたと周囲に宣言しているのと同じだ。    その判断が出来ないはずがないと思っていたので、時間を戻す直前の話し合いは意味が分からなかった。  きちんと自分の立場を判断が出来ているのなら、十七歳のフォルクよりも七歳のフォルクのほうが賢いのかもしれない。もしもの話として、今のフォルクに十七歳のフォルクの気持ちを聞いてみてもいいかもしれない。    あるいは、十年待ってから十七歳のフォルクに聞いてもいい。  そこまで考えて、フォルクの気持ちを理解しなくても構わないと思うことにする。  この世界において未来のことでも、俺にとっては過去のことだ。  考えても仕方がない。   「クロト、どうして……こっちに行くの?」 「司祭に似た服というからには、ヴィータ嬢を連れ去ったのは教団の人間だろう」 「地下に教団員が使用する部屋があります。そこでしょうね」    俺の推測をオピオンが代弁する。  教団の部屋の場所も当然知っているだろうし、鍵もオピオンは持っているかもしれない。  それを使うことはない。  今回の件を俺たちが解決するにしても、内々に処理する気はない。  五歳のヴィータに恩を売っても意味がない。  ここはミーデルガム家だ。  ユスおじさまに話を通すのが筋だろう。   「オピオン、何もするなよ。カールも静かにしてくれると助かる」    ユスおじさまの寝室の前に立つ護衛にカールと繋いでいないほうの手を振る。  部屋を指さす俺に屈みこんで「ユストゥスさまは取り込み中なんだ。あと五分もすれば会場のほうに行かれると思う。ここは――」引いてくれという切実な護衛の願いを「どうして小声なんですか?」とたずねることで打ち砕く。    室内に俺の声が届いていないかと焦っている護衛を尻目に扉を開ける。    カールに見せてしまうことは申し訳ないが、これも勉強だ。  俺も知らない部分なので緊張している。    ぐちゅぐちゅといった情事特有の水音と肌と肌がぶつかり合うぱっちゅんぱっちゅんというかわいらしい音。    ユスおじさまの腹肉や動くたび揺れているのが面白い。  ベッドの上でぐったりしている少年が複数。  ユスおじさまは一人では満足できない方らしい。  性豪というやつだろう。    俺よりも年上かもしれないが、体格として似たようなものなのに、よくおじさまの性器が入るものだ。  ユスおじさまの巨体に潰されないように耐えるのは、騎士としての訓練よりも厳しいだろう。  

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