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第3話 天使、快感に目覚める

「静かにしてろよ、ちゃっちゃと終わらせるからな」  肌に乗ったシェービングクリームを寄せるように刃を滑らせると、透き通るように白い肌が顔を見せた。手の中で硬さを保った小柄な性器のことを考えないように早急に、だが、傷をつけないように丁寧に剃刀を動かしていく。 「んっ、ぁんっ」  頭上から聞こえる可愛い声に耳を傾けてはいけない。肌に触れる剃刀の感覚に感じているのか、レオの手が微妙に動き性器が擦れるせいか分からないが、ガブリエルは気持ち良さそうに喘ぎだした。 「ガブリエル、終わったぞ」  剃り終えた。長すぎた、とレオはため息をついた。瞳に映る天使の局部はつるりと色白でおいしそうにレオを誘っている。 「レオさんっ、なんで?」 「何がだ?」 「気持ちいいの」 「気持ちい?あぁ、これか?」  いたずら心に包まれ、レオは性器に触れていた手を上下に動かした。ハハっと笑って手を離し、シャワーヘッドで湯を流して「ハイ終わり」と言い、部屋に戻る予定だった。 「んっ、それっ、ぁ、んっ、待って、やめないで」 「は?」  まさに今、ちょうど、「お湯をかけるぞ」と蛇口をひねるところだった。それなのに、そのために伸ばした右手はガブリエルの小さな手で止められてしまった。  手を握られ、潤んだ青い瞳で見つめられるとレオは自分の負けを決めた。いや、何の競い合いをしていたわけではないが、レオの中では白旗を何本も立てて「ごめんなさい、もう我慢の限界だ、焼くにも煮るにもなんとでもしてくれ」と言いたい気分だった。   相手が天使だからだろうか。天使は人間を言ったとおりにできる力を持っているのだろうか。そうだとしたら、この子は無敵だ。ガブリエルの言うことなら今のレオなら何でもしてしまうだろう。 「レオさん、お願い?」 「剃り終わったのにまたお願いか?」 「んっ、さっきみたいに手動かして?」 「こう?」 「そう……ひゃっ、なんでこんなに気持ちぃの?」  レオの手に包まれると頭が真っ白になりそうでガブリエルは困惑した。人間界に来て体が変わってしまったのだろうか、こんなに気持ちの良い行為があるなんて知らなかった。  ぐちゅりと音を立てレオは右手で天使の性器を扱いた。剃ったばかりのソコはツルツルで、悪いことをしている気分になる。  親指で先端を撫でるとぷくぷくと粘液の珠が顔を出した。そのぬめりに助けられ手の滑りが良くなるころ、レオは己の下半身が痛いほどに硬くなっていることに気づいた。  かと言って、今ここで自分のモノを出してしまったら、天然天使のガブリエルもさすがに驚いて逃げてしまうのではないだろうか。 「レオさん?大丈夫?」  動かしていた手を止め、痛そうに顔をしかめるホームステイ先のお兄さんを見つめガブリエルは尋ねた。気持ちよかったのになんでやめてしまったのだろうか。 「あ!僕だけが気持ち良かったら不公平ですよね!」  天使たるもの、常時公平さを求める生き物である。そのことを忘れていた自分の愚かさにガブリエルはしまったと思った。天使失格だ。自分のわがままに付き合わせてばかりではダメだ。 「レオさんも気持ちよくなりませんか?」 「え…?」 「僕、自分のことばっかで……レオさんも気持ちよくなりたいですよね?」 「お前、自分の言ってることわかってるのか?」 「ん?」  煽ろうと思って紡がれた言葉ではないことくらいレオも分かっていた。この天使は初心すぎて性的行為に他人を誘うことについて深く考えたこともないだろうし、そのせいで何が起きるのだろうかということも考えてもいないのだろう。ただただ、自分だけが良い思いをしては不公平だからと思いレオをきているのだ。  前かがみになったガブリエルは目の前に膝をつくレオの部屋着に指を這わせた。薄手の布越しに感じるソレは、自分のモノより大きく硬い。 「大人の人間の性器っていつもこんなに大きいんですか?」 「……っ、握ったまま聞くな」 「あ、ごめんなさいっ、でも僕、人間の性器を見たことなくて。自分のと似てるってのは教科書で見たし分かってるけど実際見る機会もなくて……」 「見たいのか?」 「見せてくれますか?」  不思議なやりとりだ、とレオは目が回る思いをした。目の前の天使は興味津々にレオとレオの股間を交互に見つめてくる。これも異文化交流だ、と割り切りレオはズボンから性器を出した。 「わぁっ大きいっ、レオさんっ触ってもいいですか?」  レオがダメだとも良いぞとも言える前にガブリエルは自分より質量のあるモノを握っていた。初めて触った人間の性器にワクワクしながらガブリエルはあることを思いついた。  元々は自分だけが気持ちよくなっては不公平だからレオのモノを触らせてもらうことにしたのだ。だから、ガブリエルがレオのモノを擦り、レオに自分のモノを擦ってもらえば一緒に気持ちよくなれてしまうのではないだろうか。 「レオさんは僕のを触ってください。僕はレオさんのを擦るから!」

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