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最終案:後編 ~了~
明らかに、普段と違う距離感。
『些事』と言われた下の名前で呼ばれて、動揺しないわけがない。
──もしかして、本当に俺たちは……恋人に、なったのかっ?
「いいから行くぞ、怜雄! ……と言うか、もう少し屈め、この巨体め! まぁ図体ばかりがデカくても肝心のアソコがデカくないのならその巨体もコンプレックスになるかもしれんが、安心しろ! ブツくらい俺様の発明でドドンとデカくしてやる!」
「えっ、いや、あの──」
「いやしかし、あまり大きくなられるのも問題だな。俺様は自分の体に自信しかないが、あまりデカすぎるとケツが裂けてしまうかもしれない。そっち方面のテクニックにも自信はあるが、なにぶん童貞処女だからな。……よし、怜雄! とりあえず、お前のアソコは現状維持の方向で──」
「──ここ職場ですよッ!」
腕を引き続ける井合課長につられて、俺もヨタヨタと歩き出す。四十センチも差があると、さすがに合わせて歩くのは難しい。
「なんだ、ビビっているのか? なぁに、増江の説教は聞き流せばいいのさ! 大丈夫だ、偉大なる俺様がついている! なんなら終わったら、説教に耐えるよう頑張ったお前にご褒美のキスをしてやろうか!」
「キ……ッ!」
発言が突飛すぎて、ついていけない。顔が妙に熱くなった俺を見上げて、井合課長はパチリとウインクをした。
「俺様は毎日しているけどな! 可愛い可愛い羊にさ!」
右手の親指を立てて自分を指す井合課長は、満面の笑みを浮かべている。
そのまま俺の腕に自分の腕を絡めて、引っ張るように歩き出す。
「ほら、行くぞ!」
「ちょっ、引っ張らないでくださいっ! 歩きづらいです!」
小さな歩幅で歩き出す井合課長は、相変わらず自分勝手だ。
けど、俺を見上げて笑みを浮かべる井合課長はヤッパリ……可愛い。これから増江課長に説教をされるというのに、井合課長が守ってくれるという安心感からか、全然憂鬱だと感じないほどだ。
……答えの見つからない問題は、心に降りこめたまま解けていない。
結局俺たちはどういう関係なのか、俺はどうしたらいいのか。なにも、分かっていない。
だから、後できちんと答え合わせをさせてもらおう。俺は部下なのだから、上司に確認するくらい問題はないはずだ。
「──さぁてっ! 右手が恋人のぼっち野郎に見せ付けてやろうか! ロストバージン寸前の俺様たちを!」
──三十路で童貞処女なウザ可愛い上司は、今日も馬鹿だった。
……けれど。
「──はいはい。どこまでもついて行きますよ、王様」
──そんな貴方に落ちた俺だって、今日も今日とて馬鹿なままだ。
最終案【答え合わせは小言の後で】 了
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