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想い

 正吉に言われたことをずっと考えている。  自分をいつも助けてくれる。青木に捕まった時も自分の身も危ないというのに飛び込んできた。  それに晋に犯されそうになった時、高ぶった身体を鎮めてくれた。あの時は医者だからと思っていたが、普通はしないのではないだろうし、彼以外の医者にされたら素直に受け入れられなかっただろう。  相手が正吉だから自分は……。  頬が熱い。  自分の心に聞いてみろと言っていた意味が解った。 「俺、正吉のこと……」  胸を手で押さえながら畳の上に崩れ落ちるようにしゃがむ。  どうして今まで気が付かなかったのだろう。  親情ではなく恋情。正吉に対する感情はそれだった。  三人で会った時から幾日か過ぎた。  実に正吉と顔を合わせるのは何日振りだろうか。しかも家に訪れたのは大分遅い時間だった。 「すまねぇ、こんな時間に」  随分と疲れた顔をしている。しかも少し痩せている。  流行病のせいで診療所は混み合っていた。一度、正吉に会いに行ったのだが、忙しそうにしていたのでそのまま帰った。 「よいのだ。所で、飯は食ったのか?」 「いや、まだ食ってねぇ」 「そうか。ならば姉上にお願いしてくるよ」 「頼むわ」  先に部屋に行っているように言えば、ふいにその身を抱きしめられた。 「正吉?」 「平八郎不足を補わせろ」  目を細めながら正吉は平八郎の頬を撫でる。  胸に暖かいものがこみ上げるのを感じ。 「はは、何それ」  と、胸を押さえながらコツンと正吉の胸に額を当てる。  ふいに正吉の吐く息を耳元で感じ、ぞくぞくと身を震わせて「あっ」と声を上げる。 「すまねぇ、くすぐったかったかい?」  耳たぶを指で弄りながら微笑む正吉に、頬が火照り胸が弾む。 「べ、別に。握り飯を作ってもらってくる」  そう正吉の胸を軽く押して離れ、紗弥の所へと向かった。

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