48 / 71

想い_貮

 思いを吐露してしまわない限り、気持ちは落ち着くことが無さそうだ。  紗弥に作ってもらった握り飯とお茶を盆のせて部屋へと入ると、疲れがたまっていたのだろう正吉は横になり寝ていて、平八郎は文机に盆を置くと掛布団をそっと掛ける。 「正吉、お疲れ様」  髪を撫でながら寝顔を眺めていたら、唇に視線が釘付けとなってしまう。  そっと手で唇に触れれば、その柔らかい感触に体の熱が上がる。  あの日、正吉がしてくれた口づけをもう一度したい。  そう思った時には正吉の唇に自分の唇を押し当てていた。  うっすらと開いた唇から舌を割り込ませ、正吉の舌に絡めるように動かせば、それに応える様にうごめきだす。 「まさきち、すき」  口づけに夢中になる平八郎に、ふいに強い力でその身を抱きしめられた。 「んぁっ、まさ、きち?」  いつの間にか下に組み敷かれ、更に深く口づけされる。 「ふっ」  あまりに口づけが気持ち良くてとろとろになる 平八郎に、正吉は唇を離し額を指ではじいた。 「寝ている俺を襲うたぁ、いい度胸だ平八郎」 「え?」  口づけに酔ってしまっていた平八郎だが、我にかえり自分がしでかしてしまったことに真っ青になる。 「なぁ、これはお前のだした答えか?」  濡れたままの唇を正吉の指が撫でる。  それだけで体が疼いてしまい、また口づけをしたくなって正吉を見るが、 「駄目でぇ。きちんと言わなきゃ、してやらねぇよ」  どうするんだと眼で訴えかけられて。 「お主のことが、愛おしい……」  伝えようとしていた想いを口にした。 「やっと平八郎の口から聞くことができた。随分と待ったぜ?」 「な! 言ってくれれば良かったのに」 「馬鹿言いなさんな。おめぇが自分の気持ちにちゃんと気が付いて俺に言わなきゃ意味ねぇってもんだ」  そうだろう? と、平八郎の頬を撫でる正吉にムッとしながら頬を膨らませる。 「どうせ鈍いとおもっておるのだろう?」 「まぁな。幼い頃から俺のこと好きな癖して、言葉にするのに何十年もかかるんだもんなぁ」  正吉の隣は自分のモノだと、確かに思っていた。だがそれは友達を独占したいと思う気持ちであって。  自覚症状がなかっただけで本当は、友達以上の想いを抱いていたのではないだろうか。  頬が熱い。  今更気がつくなんて、正吉に鈍いと思われても仕方がない。 「自分の鈍さに気が付いたか」  おでこを小突いてにやにやと笑う正吉に、自分の鈍さが恥ずかしくて胸を叩く。 「平八郎。俺もおめぇのことが幼い頃から好きだぜ」  そのまま平八郎の唇に正吉の唇が触れ。口内に遠慮なく舌が入りこみ翻弄される。 「ん、ま、まさきちぃ……」  芯が痺れる。  歯列をなぞり舌を絡めてぐちゅぐちゅと水音をたてる。とろとろと口の端から流れる唾液も気にならない程、その口づけに蕩かされて何も考えられなくなっていた。 「ん、あぁぁ、ぁ」  息が乱れて力が抜けてきて。そんな平八郎を正吉は布団の上へと押し倒して更に深く唇を貪った。 ぐったりとする平八郎を見つめながら唾液で濡れた箇所を舌で舐めとり、 「やっとおめぇの後ろを頂けるな」  その正吉の言葉に、平八郎は何のことだろうと正吉を見る。 「そうか、おめぇはしらねぇんだな。俺のコイツをだな」  股間を指さした後に平八郎の後ろに手を伸ばして後孔の入口を指で撫で。 「ここに入れんのよ」  自分の穴よりも何倍も大きなものを中へと入れるなんて考えられない。 「入るわけないだろう!」 「でぇ丈夫だ。指で孔を解せば飲み込めるようにならぁ」 「やだ、痛そうだし怖いっ」  手で後を抑えて隠す平八郎に、往生際が悪いとそのまま四つん這いにする。 「や、正吉、お願いだから」  本気で嫌がればしょうがねぇと諦めてくれると、そう思っていたのに。

ともだちにシェアしよう!