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ゴン主任と伊月先輩
5時になり、チャイムがオフィス内に鳴り響く。
座っていた社員が帰り支度を済ませ、お疲れ様でしたと言う言葉を後に去る。
悠貴を含めた平社員たちが机を並べているところから離れた課長席にいる竹富課長もカバンに荷物を詰めていた。
そこにゴン主任……福原権兵衛 がカバンを片手に近づいていく。
こげ茶の短髪に垂れた一重の瞳、口元のほくろが特徴の彼はムードメーカー的存在で上司らしくないと悠貴は内心思っている。
「たけちゃん、いつもの場所に行こっか?」
ニコニコと微笑むゴン主任に竹富課長は顔を赤らめ、慌て始める。
「バカッ、こんなところで言うなって!」
ごん主任の肩を2回強く叩く竹富課長。
それを悠貴は淡々と眺める。
「なに恥ずかしがってんの? あっ、僕とのデートみんなにバレたからか……いや〜ん」
クネクネと身体を揺らすゴン主任を隠すように捕まえた竹富課長は、一瞬悠貴を睨んでからそのままゴン主任を連れて、部屋を出ていった。
「竹富課長とゴン主任ってデキてんのかな」
1人になった悠貴はふとつぶやいてみる。
「いや、オレはビジネスイチャイチャだと思うけどなぁ」
ふいに聞こえた声に驚いて横を見ると、資料は半分に減り、黒髪のゆるふわパーマがかかった男性……山中伊月 がパソコンの画面に顔を向けていた。
「伊月先輩、帰んないんすか?」
「帰ってもいいけどさぁ……今日、1年記念日だって聞いてたから、助けてやりたいじゃん?」
一応先輩だし? なんてキメ顔されたら、悠貴はお願いしますとしか言えなかった。
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