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第9話【ゴリ(後編)夕方 中】
ショタの純粋無垢な瞳が、ゴリを映す。けれどゴリは……その瞳に、応じられなかった。
「俺は、どうにも……駄目だな」
会議室のデスクに腕を乗せ、両手を握る。
そんなゴリを見ながら、ショタは小首を傾げた。
「そういうのって、ボクじゃなくてBBセンパイに話した方がいいんじゃないですか?」
ゴリとBBは、恋人同士……それは、ショタも知っている。ショタの言い分は、正しいと思われた。
――しかしゴリは、首を横に振る。
「ケンカ中ですか?」
至極当然の問いに、ゴリは片手で顔を隠しながら、小さな声で呟いた。
「アイツに、幻滅されたくないんだ……」
それを聞いたショタは、目を丸くする。
誰と体を重ねようと、ゴリには一つだけ……譲れないことがあった。
――ゴリは、BB以外とキスをしない。
ゴリなりのケジメを、付けているつもりなのだ。それ程、ゴリはBBを愛していた。
――だからこそゴリは、BBに情けない姿を見せたくないと、思ってしまう。
すると突然、ショタが椅子から立ち上がった。そのままショタはゴリの隣に立つと……先程ゴリが締め直したばかりのネクタイに、手を掛ける。
「ゴリ課長って、案外BBセンパイのこと……どうでもいい感じですか?」
「は?」
「ボクは、マグロクンの考えてること……ボクが一番知っていないと、イヤだなって思っちゃうんですよね」
独り言のように呟くショタは、どこか悲し気な表情で、そう呟く。
ゴリのネクタイを緩めたショタは、露わになったゴリの首筋に唇を寄せると……力任せに、吸い上げた。
一瞬の痛みに、ゴリが眉を寄せる。
ゴリの首筋に付いた赤い痕を見て、ショタは楽しそうに笑う。
「さぁ、セックスしましょう、今すぐに!」
「お、おい、ショタ――」
「一緒に気持ち良くなりましょうよ~」
「随分と勝手なことを言うんだな」
ワイシャツのボタンを外すショタに、ゴリは文句のように呟く。
それを聞いたショタは、ゴリの露わになった胸元を見ながら、呟きで返した。
「悩みを打ち明けてもいないのに、BBセンパイに幻滅されるって……そう思い込んでるゴリ課長は【勝手】じゃないんですか?」
ショタの返答に……ゴリは、目を丸くする。
ワイシャツのボタンを全て外され、ベルトにまで手を掛けられながら……ゴリはショタの小さな頭部を見つめた。
暫く目を丸くしていたが……やがて諦めたかのように、ゴリは溜め息を吐く。
そして……自分のことを脱がすのに集中している部下を、デスクの上に押し倒したのだ。
「わっ!」
突然押し倒されたショタは小さな悲鳴をあげた後、不思議そうにゴリを見上げた。
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