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第23話【告白(後編)】

 頷く真駒を見た椎葉はわざとらしく、深い溜め息を吐いてみせた。 「はぁ~……伝わってないとは思っていたけど、まさかここまで……」 「な……何が、でしょうか……っ?」 「初めて君と取引した時……その後も、ずっと言ってるよね?」  真駒の頭には、疑問符が浮かんでいる。椎葉が何に対して呆れているのか、本気で分かっていないからだ。  椎葉は真駒の頬に手を添え、相変わらず呆れたような表情を浮かべながら、諭すように呟いた。 「僕は、君が好きだよって。いい加減、分かって欲しいんだけど」  椎葉の告白に、真駒は目を丸くしたまま……頷く。 「泣きが――」 「『泣き顔が好きなんですよね』とか言ったら、ここで犯すから」 「っ!」  真駒は慌てて口を閉ざし、ジッと椎葉の顔を見上げた。  目は口程に物を言うとはまさにこのことで、真駒は視線で『違うんですか?』と椎葉に訴えている。  椎葉の眉間に皺が寄せられ、不快そうな表情で見つめ返された。 「君こそ……僕の首がいいって言っておきながら、物足りなかったんでしょ?」 「え――」 「昨日……首を掻いてたのは、そういうことなんじゃないの?」  そこでやっと、真駒は昨晩振るわれた暴行の理由に気付く。  ――あれは、嫉妬だったのだ。  そんな些細なことが、嬉しくて堪らない。ソワソワと身をよじる真駒を、椎葉が怪訝そうに見下ろしている。  真駒は顔を上げて、眉を寄せたまま自身を見下ろしている椎葉を見つめた。 「き、昨日のは……イライラ、して……」 「僕と本坂さんが、付き合ってるって聞いたから?」 「はい…………あっ! い、いいえ……っ!」  慌てて否定する真駒を、椎葉が満足そうに見つめる。真駒は気恥ずかしさから、椎葉の後ろにある個室の鍵に手を伸ばした。 「し、仕事、戻りましょう……っ」 「待って」  鍵に向かって伸ばした手が、椎葉に掴まれる。  椎葉は真駒の手を掴んだまま、優しい笑みを浮かべた。 「返事……まだ、聴いてないんだけど?」  優しくて穏やかな笑みだけれど、真駒のことを逃がすつもりはないらしい。有無を言わせぬ迫力が、その笑みには含まれていた。  真駒は顔を真っ赤にして、何とか個室から出ようと身をよじるも、椎葉は手を離さない。  往生際の悪い真駒は、何も言わずに椎葉を見上げた。 (課長の顔……確かに、イケメン……かも)  今更そんなことに気付いた真駒は、口を開く。 「す……っ」 「『す』?」  その後、真駒が呟いた言葉を聴いて……椎葉は、肩を揺らして笑った。

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