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まずは行動 4

 高等部の学生が使う食堂は複数ある。  一番近いのは寮に併設される形の定食屋というべき佇まいの二十席程度の小料理屋。  惣菜のテイクアウトやお弁当はリーズナブルな価格でもゆっくり座って食べると一回の会計で五千円弱。  教師などがお酒を飲む場合は一万円前後。  二階席の個室があってそこを利用すると席代として二万円かかる。  この学園の生徒なら気にする金額ではない。  けれど特待生などでやってきている生徒には縁がないだろう。  一時期、俺がハマってキシさんと雄大の三人とよく個室で食べていた。  全面キシさんの奢りだ。  最初は悪いと思っていたけれどよく考えると昔から遊びに連れて行ってくれる時にお金はキシさんが出していた。  きっと必要経費として俺や雄大の両親からお金をもらっているんだろう。    店ののれんをくぐるとすでにランチタイムに入っていたからか満席だった。  二階席に繋がる階段を見る俺に女将さんが「ごめんなさいねぇ」と謝る。二階も埋まっているらしい。  見た限り目当ての人間はいないので首を横に振って店を後にする。    店内というか、テイクアウト専門のカウンターのところからスゴイ視線を感じた。  目つきが人殺しとしか思えないのに接客業をしている不良。  彼は中等部の時に雄大に告白して振られている。  この店でバイトをしているのは知っている。けれどそれも雄大に対するストーカー的な行動じゃないかと思う。  ちなみに俺を嫌っている人間リストに名前がある。  そして強姦現場にいなかった二人目。    恋愛的な意味で雄大のことを好きな不良だが恋人の俺の目線からも健気だと思う。  親衛隊に所属せずに雄大の好きなものや好きな場所に出没する。俺に危害を加えようとするのではなく雄大のリサーチを地道に続けている姿は微笑ましさすら感じる。もちろん彼の恋を応援することは出来ないけれど。    俺を陥れたりするタイプには見えないので今回の件の首謀者ではないだろう。  そんな人間には見えない。    まずは首謀者の割り出し。これは大体予想がついている。  たぶん副会長だろう。  この首謀者というのは集団における表向きのリーダー。  生徒会役員と親衛隊の集団の中で一番発言権があるとされる人間のこと。  ただ副会長だけでまとまりきるはずがない。  その流れを操った人間が必ずいる。    これが俺が特定しなければならない黒幕。  首謀者が分からなければ黒幕の尻尾を掴むのは難しい。    彼らが俺を強姦すると決めた流れを知らないといけない。  傷に塩を塗りこむ行為だとしても彼らの思考プロセスを知らなければならない。  それはわんわんの情報にもない。キシさんが言うように情報は客観的な事実。言い分は中立。  ちなみに不良に対するわんわんメモは「鯛めしが絶品らしい。とても食べたい。茶碗蒸しが得意ならプリンもお上手です?」とあった。  たしか、小料理屋で修行しているらしい。  売っているお弁当なんかも不良が作っているんだろう。  きっと雄大の口に入ることを夢見て日夜腕を磨いているんだ。健気だ。

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