小料理屋よりも少し離れたところにある行列。 　これは日曜名物パン工房だ。 　 　いつもは学園内の各教室にワゴンと共に訪れるパンの移動販売所。 　美味しいし値段も二百円から四百円弱でそれほど高くない。 　お腹いっぱい食べようとすると三千円ぐらいかかってしまうのでコストパフォーマンスはあまり高くないのかもしれない。 　ローストビーフや生ハムやサーモンなんかがそれぞれ挟んであるサンドイッチはとても美味しい。 　普通の食パンのサンドイッチじゃないので一個で十分お腹がいっぱいになるけれど運動部員などは足りないのかもしれない。 　基本的にサンドイッチなどの総菜パンがメインでアンパン、メロンパンなんていうチープな菓子パンは売っていない。 　雄大は喉が渇くからあまり好きじゃないと言って俺の食べているものを一口とったりするぐらいでパンは好きじゃない。 　でも俺からとるイコール好きだと思われたらしくて雄大好きがみんなパン食になってパン屋の売り上げに貢献していた。 　五月雨雄大の経済効果は凄まじい。 　 　日曜日恒例なのはいつもはない菓子パンのトラック。 　メロンパンからアンパン、デニッシュ生地にラズベリーやブルーベリー。 　甘ったるいものを求めて列を作る男子高校生。シュールだ。 　 　ちょっと食べたいと思いながらも列に並んだりしないから縁がない。 　列がはけたら商品がなくなったの合図。 　どれだけ菓子パンを食べたがっているんだと思うけれど日持ちするものもあるらしいので朝ごはんにしやすいかもしれない。 　 　生徒数が多いがコンビニの品揃えは悪い。 　商品の種類を押えて安価で提供するという方向でいっているらしい。 　大体の生徒がコンビニのお弁当よりもテイクアウト可能な店の商品を選ぶ。 　それすら面倒な人間は通販のお取り寄せ食品や宅配サービスの定期購入に申し込んでいる。毎日違う食事が寮の部屋の前に発泡スチロール入りで届く。 　食べ終わったら洗って外に置いておく。 　 　学生自身がバイトと称してお弁当を同級生に作っていることもある。 　もちろん衛生管理についての指導や規模が大きくなりすぎないように教師が監督している。食中毒など出ては大変だ。禁止しても学生間の手作り弁当問題は出てくるので学園側も譲歩している。 　 　会計を終えてパンの列から離れていく見知った姿。