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愛してるからこそ地獄行き 10

 ひとしきり書記以外を蹴り飛ばしていた。  壊れた靴箱に落ち込む。  身体を動かしていると頭が真っ白になる。本能に従って行動できる。  冷静になって見ると自分を棚上げしているように思えてならない。    今朝、哉太に一回されたように書記以外をガムテープでグルグル巻きにする。  ガムテープで自分を動かなくさせた時の哉太の気持ちやその指先の痛みを思うと死にたくなる。  今も一人で外を出歩いて心細いに決まっている。  でも、俺が哉太を信じなかったから哉太はこの部屋にいられなくなったのだ。  役員や親衛隊たちのことをしらばっくれる哉太に俺は焦っていた。  哉太の話を聞いていなかった。  だから、俺ともう話が出来ないと見切りをつけて哉太は一人で動いた。泣けてきた。哉太のことを思うと心が痛くて死にそうだ。苦しくて仕方がない。この世界はどうしてこんなに優しくないんだろう。    普通に生きることはこんなにも難しい。   鉈好き:しにたい      いつものゲームのチャットに無意識のうちに書き込んでいた。  立派な荒らしだ。  訂正を入れたかったがその気力もわかない。  もう、誰に何と思われても構わない。  アカウントを消されたらそれまでだ。   宮田:どうかしたんですか? 宮田:レアが出なかったとか?? 宮田:ご自慢の鉈が錆びた?      初めて見る名前だがやけに食いついてくる。  お人好しが多いというかゲーム内にかかわらず実はリアルでの知り合いが多い。チャットルームは数多いが明言されていないルールがある。  ログイン毎に自動で適当なチャットルームに行くことになっていたが完全ランダムというわけではない。ある程度、選別される。  ゲームを遊ぶのではなく情報交換ツールとして使う人間たちが集まるチャンネルというのがあり、俺やキシさんはわりとそこに顔を出すことが多い。運営側が選んだ人間しか入室できないチャットルーム。    見分けをつけるのはわんわんという名前の人間がいるかどうか。  ゲームを教えてくれたキシさんいわく、そもそもゲームはわんわんのために作っているという。だから、わんわんに対して不適切な発言をする人間はわんわんと顔を合わせないように特定のチャットに弾かれる。  別にわんわんは威張り散らしているわけでもないので話していて苦ではない。  むしろ顔を見たことのない相手だが友情を感じている。     鉈好き:大切な人を傷つけた 鉈好き:生きていても仕方がない 宮田:自己憐憫に浸っちゃってる系? 鉈好き:まあ、そうかも 宮田:じゃあ実はメチャクチャ余裕じゃん 宮田:本当に大変な場面なら死にたいって思う暇もないし 宮田:傷つけた相手を放置とかありえねーわ 鉈好き:わかってる 鉈好き:でも、自分がいるだけで相手を傷つけてそうで鬱 宮田:鬱って言ってるやつは鬱じゃない理論かw  普通はそう思われるよなと自分の情けなさに恥ずかしくなる。  謝って済むことじゃないと言ったのは小具たちに向けた言葉じゃない。  俺は自分に向けていた。  やりきれない。

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