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愛してるからこそ地獄行き 9

「小具には小具の言い分があると思うんですが……」 「ちゃんと聞いてやったじゃないか。この双子は悪くなくて自分が悪いって」 「いえ、あれは……」    双子を庇っての発言なのはもちろん分かっている。  あざとい嘘泣きを見抜かないわけがないし、本当に泣いていたとしても俺の行動は変わらない。  ただここに居る四人は何も分かってない。俺の哉太への愛を分かっていない。  分かっていないから俺の前に顔を出せるんだろう。  自分たちがどうなるのかまだ理解していない。   「俺は、仮にお前たちに何一つ非がなかったとしても哉太を抱いた人間ってだけで百億回でも殺せるぐらいに憎いよ?」    引きつった声を上げて書記は小具を支える手を離して玄関から出て行こうとする。  させるわけがない。  靴を履く時に使うヘラを書記の襟に引っ掛けてバランスを崩させた。面倒だったのでそのまま引っ張って双子の身体の上を通過させて俺の横に落とす。  靴を脱がせて腹を踏んづけておく。痛みに悶絶しているので書記は放置。  アゴがどうにかなったのか両手でアゴを押えている小具。半開きの扉をチラッと見ながら座り込んだまま後退しようとするので足を踏みつけておく。   「どうひて、ほんな、ひろいことほぉ」    どうしてこんな酷いことを、と言いたいのならこちらがその言葉を口にしたい。  コイツらはまるで自分たちが受けているのが心当たりの全くない暴力だと思っている。  自分が悪かったなんて欠片も思っちゃいない。だから、俺の前に顔を見せることが出来る。   「あひゃまってる、ろに」 「謝ったら罪って消えるのか? それは知らなかった。なら、仕方がないから俺もお前たちに謝っておくか。……そうしたら何してもいいよな」    小具を双子の上を引きずって書記の近くに寝転がせる。  腹を庇う小具のアゴに足を置く。   「や、やめてやってくれっ!!」 「雛軋がっ!! 雛軋が全部悪いんだっ。俺たちは利用されてただけでっ!!」 「アイツと連絡して連れてくるから、小具に酷いことしないでくれ」 「……これ以上したら死んじまうよぉ」    泣きながら小具を庇う双子の三文芝居ぶりにうんざりした。  こういったものを見る無駄な時間を短縮したくて小具が簡単に口を開かないようにしたのを分かっていないらしい。  溜め息を吐いたら足に力を入れる前に小具は悲鳴を上げた。  わかりやすい性悪ぶり。自分のことしか考えちゃいない。双子か書記が自分を庇ってくれるのを期待しているんだろう。  哀れなのは誰も動かないことだ。双子は俺に勝てるなんて楽観をいだくことはない。口でいくら命乞いをしたところで身体を張って小具を守ろうとはしない。書記も同じだ。生徒会役員として俺の経歴を分かっている書記は動かない。    先程まで勝機を見出したように輝いていた小具の瞳が焦燥感に駆られ絶望に染まっていく。  声を揃えて双子は謝罪の言葉を口にする。まるで一人だけで詫びているようで何だかおかしい。  無駄に悲鳴を上げ続ける小具を壁に蹴り飛ばしておく。近所迷惑で哉太が周りから怒られたらかわいそうだ。  一生懸命謝ってくれている双子に俺は微笑みかけた。   「ははっ、謝る相手がちげーし。同じ言葉を口にした哉太に何したよ?」

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