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何度も何度も俺達は転生を繰り返して、毎回毎回俺達は出会い、テンプレのように喧嘩をし、惹かれ合い、結婚する。
俺が女であっても男であってもそれは関係なくて、俺達は、出会う。必ず。…アイツは、絶対俺を抱く側を譲らなかったけど。…まあ、それに不満はない、うん。何故なら、俺はアイツが俺との約束を忘れたことは今までに一度だってないからだ。アイツが俺との約束を忘れた日には、俺がアイツを組み敷いてアンアン言わせてやる、と密かな野望を抱いていた。
俺は今世に生まれ落ちたその日から、前世の記憶が脳内を埋め尽くしていた。赤ん坊だった頃は記憶と現実の相違に戸惑うばかりで不安で不安で仕方が無くて、最近になって母さんに「アンタが小さい頃は、夜泣きとかはしなかったのに、突然泣き出すから大変だったのよ」と苦笑いされてしまった。…母さんには大変申し訳なく思うよ。
けどさ、赤ん坊の小さい脳に大量の情報を叩き込まれたんだぜ?処理できるわけないじゃん?ねえ?
そんな俺も、アイツと再び今生で出会うことを待ち侘びながらも、とうとう高校二年生となっていた。
しかし、今俺が在籍する学園には嵐が吹き荒れている。
「…そんなにアイツのことが気になるのか」
俺が憂鬱な表情をしたまま、仕事をしているのを気にして鶴田が心配そうな顔をしている。
「……そんなにひどい顔してる?」
鶴田は、俺の幼馴染でいつも俺を心配してくれる。同い年のはずなのに、兄のような存在だ。少し困ったように笑って、鶴田は俺の頭を撫でる。
「もう、帰れ。ここ2、3日寝ていないだろう?」
「は?お前だって寝てないだろ?」
俺は意地でも帰らねえ、という顔をしてやると、鶴田が俺の頬を片手で挟み、俺の口がとがるようになる。それを見て鶴田がくすり、と笑うので俺は更に不機嫌になる。その隙をついて俺が手に持っていた書類はさっと何者かに奪われる。
「副委員長、この仕事なら俺やれるよ。」
そう言って俺から仕事を奪ったのは、夢野という男。なかなか食えないコイツは図体がでかいためか、俺を見下ろすその態度が随分とでかい。
「てめえ、夢野。俺より正確に早く仕事ができるっつうのかよ」
俺が、喧嘩腰で食ってかかると、夢野はにやにやと笑う。…クソ、その笑い方むかつくな。
「別に、普段の貴方よりできるとは思ってないけど?今の貴方よりはできると思うよ」
確実に煽り始めた夢野に乗っかるのもムカつくので、一度深く息を吐く。
「……、わかったよ、だけど、その書類は俺が生徒会室に持っていく。それで俺の仕事は終わりだ、それでいいだろう?」
と、鶴田に視線だけ移すと、満足そうに頷く鶴田が目に入る。俺は机の上に置いてあった書類をひったくるようにとって、風紀室から逃げ出すように飛び出した。
生徒会室へと向かう俺の足は、随分と重く、しんどい。
…ああ、行きたくねえなあ。俺はまた溜息をつく。
***
この学園に嵐が、一か月前にやってきた。
皆どうして突っ込まないんだ、というくらいヅラ感満載のもじゃもじゃの頭。どこで売ってんだよそれ、という程厚いビン底眼鏡。耳を塞いでも耳が痛い大きな声に、キレイで豪華な生徒会室を一気にごみ屋敷にする振る舞いのクソさ。
腐男子と公言している風紀委員が奴が来た瞬間に「キタコレ!!王道転校生!!」と叫んでいたが、初日に食堂で騒ぎを起こしたのを見て「…ッチ、アンチの方かよ!!」とうなだれていた。…なんか知らんが、どんまい。
だが、俺だって、俺だってうなだれたかった。何故なら、
俺の何様俺様生徒会長が、あのクソマリモにキスを決め込んでいたのだ。
俺の!!それ!!!!
と、叫びだしたくなったが、なんとかその衝動を押し殺し、風紀として騒ぎの中心へと急ぐ。俺の顔を見た瞬間に会長の顔が歪んだ。
そう、今世で会長は俺に気付いていないのだ。もしかしたら、約束すら覚えていないのかもしれない。予め言っておくが、約束のアイツが会長というのは俺の中で確定事項なのである。ふざけんなよ…てめえ、浮気たぁ、良い度胸じゃねえか。その時は怒りで強気になっていたものの、少し時間が経ってくると悲しくなってくるもので。
そんなうるせえ強欲おばけなんかかまってんじゃねえよ!!と思いつつも、
とうとう俺との約束すら忘れてしまってのではないかと、どんどん落ち込んでくる。
しかも、生徒会の奴らは仕事をボイコットし始めるし、マリモは学園の備品を次々と壊していくし、親衛隊の動きが活発になって制裁が増えて学園は荒れるしで、着々と風紀委員の仕事は増えていく。
そんな嵐もそろそろ一か月が経とうとしている。ここでマリモのイケメンホイホイという罠に一人もかかっていない俺達が踏ん張らなくては、この学園は崩壊の一途を辿ってしまう。それはなんとかして食い止めなくてはならないのだ。
さて俺の目の前には重厚な扉。この扉は生徒会室のものである。
中からは、例のマリモの馬鹿でかい声。…防音加工のされているはずのこの部屋外にこんなにも声が漏れるものだ、中にいる生徒会の連中は耳が鉄でできているのか、と感心する。
…はあ、面倒くさいな、
そう思うが、風紀室で、これはやる、と言い切った手前なんとしてもやり遂げなくてはならない。俺は思い切ってノックをし、重い重い扉をゆっくりと開けた。
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