1 / 26

プロローグ

 閉じた瞼の内側に浮かび上がるのは、いつもあの夜のワンシーンだ。  人々の歓声。屋台から漂ってくる美味そうな匂い。  まるで雷のような、火薬の弾ける音。  真っ黒の夜空に次々と咲き乱れては消える大輪の花。  目を輝かせて空を見上げている翔宇(しょう)。  わざと花火の音にかぶせた俺の声。  あの夜に戻りたい。  余計な感情に煩わされることなく、ただひたすら翔宇の隣に立っていた、七年前のあの夏の夜に――

ともだちにシェアしよう!