2 / 2

きっと君は、いつまでも

『ごめんな…』 親友を、明るくて良い奴だとみんなは言う。 「謝るのは俺じゃないだろ」 『そうだよな…』 けれど、俺からしたらとても酷い奴。 『来週は頼むな? あいつきっと一人だから…』 いくら長年付き添ってきた親友だからと言って、易々とそのセリフを口にしてはいけない。 「なぁ」 きっと、それはお前が一番後悔するセリフになる。 「来週さ…」 *** 男と付き合ってる。って聞いた時は驚いた。しかもその相手が、俺と同じ会社に入社すると聞いた時は余計に。 「頼むよっ…俺心配で…」 「はぁ⁉︎ なんで俺がそんな事…」 「お前しかいないんだよぉ!」 思えば、あの時 親友のお願いを引き受けなければまだ良かったのかもしれない。 そうすれば、きっとこんな気持ちになる事もなかった。 『なんで、こんな時に電話してくるの…っ…』 電話越しの君の声はか細く、今にも消えてしまいそうだった。 「なんでって…」 好きだから。 好きになってしまったから。 「…分かんない?」 あいつより、俺の方が君を幸せに出来ると思ってしまったから。 「ねぇ」 けれど、それを伝えて何になるだろう。 親友を裏切り、君を困らせてまで、この気持ちを伝える意味。 「ちゃんと本当の事言いなよ」 何十、何千、何万通り、君の愛し方を並べてみても、そこに君の幸せが見つからない。 『……さみ…しい…っ…』 「うん」 あいつなんかやめて、俺を好きになればいい。そしたら寂しい思いなんてさせやしない。泣かせたりしないのにと、心はそう叫ぶのに。 『…彼に…会いたい…』 俺が何を言おうと、どれ程君を愛そうと、きっと君は、いつまでもあいつを待ち続けるのだろう。 「……うん」 酷いのは俺の方。二人の関係を心から願ってやる事なんて、本当は出来やしない。 「……あいつ、幸せ者じゃん」 けれど、今の俺に出来る唯一の事。例えそれが自分を裏切る事であっても、俺はこの先一生、君への贈り物を誇りに思うだろう。 「あのさ」 空を見上げると、黒く塗り潰された空から真っ白な雪が降り始める。 寒さに震える中、精一杯笑ってみせた。 「最後に俺からのプレゼント貰ってくれない?」 どうか、君には幸せになってほしい。

ともだちにシェアしよう!