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きっと君は、いつまでも
『ごめんな…』
親友を、明るくて良い奴だとみんなは言う。
「謝るのは俺じゃないだろ」
『そうだよな…』
けれど、俺からしたらとても酷い奴。
『来週は頼むな? あいつきっと一人だから…』
いくら長年付き添ってきた親友だからと言って、易々とそのセリフを口にしてはいけない。
「なぁ」
きっと、それはお前が一番後悔するセリフになる。
「来週さ…」
***
男と付き合ってる。って聞いた時は驚いた。しかもその相手が、俺と同じ会社に入社すると聞いた時は余計に。
「頼むよっ…俺心配で…」
「はぁ⁉︎ なんで俺がそんな事…」
「お前しかいないんだよぉ!」
思えば、あの時 親友のお願いを引き受けなければまだ良かったのかもしれない。
そうすれば、きっとこんな気持ちになる事もなかった。
『なんで、こんな時に電話してくるの…っ…』
電話越しの君の声はか細く、今にも消えてしまいそうだった。
「なんでって…」
好きだから。 好きになってしまったから。
「…分かんない?」
あいつより、俺の方が君を幸せに出来ると思ってしまったから。
「ねぇ」
けれど、それを伝えて何になるだろう。
親友を裏切り、君を困らせてまで、この気持ちを伝える意味。
「ちゃんと本当の事言いなよ」
何十、何千、何万通り、君の愛し方を並べてみても、そこに君の幸せが見つからない。
『……さみ…しい…っ…』
「うん」
あいつなんかやめて、俺を好きになればいい。そしたら寂しい思いなんてさせやしない。泣かせたりしないのにと、心はそう叫ぶのに。
『…彼に…会いたい…』
俺が何を言おうと、どれ程君を愛そうと、きっと君は、いつまでもあいつを待ち続けるのだろう。
「……うん」
酷いのは俺の方。二人の関係を心から願ってやる事なんて、本当は出来やしない。
「……あいつ、幸せ者じゃん」
けれど、今の俺に出来る唯一の事。例えそれが自分を裏切る事であっても、俺はこの先一生、君への贈り物を誇りに思うだろう。
「あのさ」
空を見上げると、黒く塗り潰された空から真っ白な雪が降り始める。
寒さに震える中、精一杯笑ってみせた。
「最後に俺からのプレゼント貰ってくれない?」
どうか、君には幸せになってほしい。
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