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寿樹は碧の要望通りにコンドームをつけずに挿入した。
「あああっ!」
「く……碧、大丈夫、か?」
「うん……あつくて、ひさきさん、の……ひゃあっ!」
熱に犯されたと思えば、いつもと違う圧迫感が碧を襲う。
「なんで、おっきいの…」
「碧が可愛いこと言うからだよ……」
避妊しないセックスは初めてだった。いつもの0.02mmの隔たりでは感じることがない慣れない熱にどちらも戸惑う。寿樹が押し進めると碧の硬くなっているペニスの先から白濁が飛び出した。
「まだ挿入しただけなのに、気持ちよかった?」
「や、まってぇ……イっちゃ、た……ごめんなさい…」
挿入されただけで吐精することは初めてで碧は困惑の涙を流す。
「大丈夫…謝ることじゃない…ね?」
「う、うぅ……あ、ひゃん…っ!」
碧の涙を指先で拭い慰めながらも寿樹は奥を目指しゆっくりと動く。パチュンッ と音が立って最奥に到達したことがわかった。碧は体の震えが止まらない。
「イってるのぉ…ま、ってぇん」
「碧の締め付け、すごくて、俺もギリギリなんだ…ごめんね?」
汗ばむ碧の滑らかな肌に唇を落としながら寿樹はゆるりと動く。碧のうねりが寿樹を限界に導くようで、一つの理性が切れた。寿樹は奥歯を噛み締めて激しく動き出す。
「ああ、んあん! ひさ、き、さぁん! イっちゃ、またイっちゃうからぁ! はぁ…あぁ」
「俺も…でるっ!」
いつもセックスさえスマートな寿樹が獣のように本能で碧を求めている。たくましい胴体から汗が流れて、その姿に緑はうっとりとしてしまう。
激しい音を立てぶつけられた刹那、碧の中に激しい熱が注がれた。その温度で碧もまたビクビクと震えながら熱を放った。
「あ…あぁ…ん………まだ、欲しいの…」
碧は幼子のように指を咥えながら寿樹にねだる。寿樹も碧から出る気はさらさらなかった。
どくん どくん
熱が碧の体をめぐるような感覚になったと同時に、碧の意識はぼやけてくる。それは寿樹も同じだった。
「やす、ひ、さ……靖久、なの、か?」
「ああ……私だ……青成………」
「会えた……また、会えた………」
「青成……もう其方 を離さない…二度と…」
「うん………靖久…靖久ぁ…」
滝原靖久に関する冷泉帝の記録にはこうあった。
羅生門の手向け花は躑躅
ふたつの御霊が弥勒 の世でめぐるよう
「赤いツツジの花言葉は“恋の喜び”…当時はそんなものあったのかは知らないけど、れいも弥生も少しは2人を犠牲にしたことを悔いたんでしょうね」
「で、そのツツジはまた一緒になった、ってことですね…出来すぎたドラマですね」
「いいんじゃない? 今の2人が幸せなら。さて、城山くんは起きないだろうし、私たちで滝原靖久と悲劇の恋と絶命をまとめましょう」
龍王寺の庭には、赤いツツジと白いツツジが今日も咲き、住職が水を与えていた。
――完
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