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第19話
それから数日、希望は離れていた時間を埋めるように、ライにべったりとくっついて過ごした。
ゆっくり二人で過ごして、希望は驚いた。
ライさんが優しい!
すごい、こんなにくっついてても、邪険にされない。襲われてエッチなこともされない。可愛がってくれる、って言ってたのは本当だったんだ。疑ってごめんなさい。ライさんの日頃の行いが悪いからです。
こうしているとまるで恋人みたいだ。あ、恋人だった。
そうだ、恋人だもん。ライさんだって俺に会いたかったんだ。そうに違いない! と希望は前向きに考えた。
だから希望は思う存分、遠慮なく、ずっとくっついていた。
ふわふわと幸せな気持ちで過ごしていたある朝。
希望のもとにその日のコンサートとパーティに着ていくスーツが届いた。
「こ、これは……!」
寝室のベッドにスーツを広げて、希望はびっくりした。スーツ一式の中に、ガーターベルトがある。ワイシャツ用だ。
ワイシャツの裾と太股に取り付けたベルトを繋いで固定してくれるので、動いてワイシャツが引っ張られてもズレないようにしてくれる。
そんな便利なものだったが、希望は別のイメージがあった。
「……セクシーなやつだ!!」
希望は好奇心旺盛な思春期なので、すぐにそれを身につけることにした。そういえば、ライに再会したら見せようと思って買っていたセクシーな下着もある。
セクシーとセクシーを合わせたらとってもセクシーなのでは!? と希望はすぐに服を脱いだ。
希望はわくわくドキドキしながらシャツガーターと下着を履き替え、鏡を見た。
ベルトは希望のむっちりと白い太股を締め付け、僅かに食い込む。ワイシャツは長めの裾だが、ぷりっと丸いお尻が半分くらい覗いている。下着は、前はしっかりと隠れるけれど、お尻の部分の布が控えめだ。サイズが少し小さかったのか食い込みそうだが、お尻の丸みをほどよく主張している。
……これはすごく……えっちだ!!
ライさんに見せよう! と希望はまたわくわくドキドキした。
希望はライのことをセクシーでカッコいい、と常々思っている。意地悪されても、あまりのライの性格の悪さに悲しみが怒りに変わっても、顔を見ればいつでもどこでもどこから見ても隙なくカッコいいのでときめいてしまう。
許せん。
カッコいいのもいい加減にしてほしい。自分だけライにメロメロになっているのも悔しい。ライも自分にメロメロになってほしい。希望ってセクシーでかっこいいな、と思ってほしい。
正直、「希望ってセクシーでかっこいいな」って思ってるライさんはなんか違うけど、とにかくライさんから見て、魅力的な恋人でありたい。
というわけで、「これならいける!」と希望は寝室の扉から顔を覗かせた。
「ライさん♡」
「あ?」
ライはリビングでコーヒーを飲んで、英語の新聞を読んでいた。この部屋の、少し行き過ぎではないかと思われる豪華な内装も装飾も、ライがいると主役の座をあっさり奪われて、背景になってしまっている。
希望は少し照れて、頬を染める。もじもじ、てれてれ、としながらライの前までこそこそと出てきた。
一回、くるり、と回って見せて、どうかな? という期待を込めた眼差しで、ライを見つめる。
二人の間に沈黙が流れた。
「……は? なに?」
ライは希望を見ていたが、特にそれ以外のことに反応を示すことなく首を傾げた。
あれ? あ、しまった! と希望はライの反応を見て気づいた。
ライさんはこういう、コスプレとか、浴衣や裸エプロンみたいな、服装に関するエッチな感じ、興味ないんだった! 脱がすから何着てても関係ないとか言ってた!
玩具で弄ばれた時と同じだった。希望がこんな格好してるのも、どうでもいいのだ。本体の希望にだけ興味があって(それはとても嬉しいけれど!)何を着ていても関係ないのだ。そういえば、希望の心を何でも見透かすくせに、希望がライの服を勝手に借りていても、気づくのは遅かった。それくらい無関心である。
なんだこいつ、とでも言いたげなライの冷めた眼差しが、希望を正気に戻してしまった。
「……なんでもないです」
一人ではしゃいでしまった自分が恥ずかしい。ライに「セクシー」と思ってもらえなかったことが寂しい。
なんて惨めなんだ。俺だってライさんをドキドキさせたいし、メロメロにさせたいのに。
希望はしおしお……、っと悲しく落ち込んで、寝室に戻ろうとした。
その後ろ姿を、じっとライが見ている。
「……希望」
「?」
ドアノブに手をかけたところで、いつの間にか背後にいたライに抱きしめられた。
「どうした?」
「え?! な、なんでもっ……!」
「何を見せに来たの?」
耳元で囁かれて、希望はびくっと震える。急に自分のしようとしていたことが恥ずかしくなってきて、じわじわと頬が熱くなる。
「あっ、あの……」
「もしかして」
ライが露出している希望の太股から尻をそっと撫でる。ベルトと下着に締め付けられた肌は、いつもよりむちり、としていた。希望が「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げて、震える。
「これ、見せに来た?」
希望の顔が、ぶわわっと一気に赤くなる。
固まってしまった希望に構うことなく、ライは希望の太股と尻を撫で続ける。
「なんで?」
「あうぅ……! ご、ごめんなさい……」
「謝んなくていいだろ? なんでわざわざ着替えて、こんな格好のまま俺に見せに来たのか、って聞いてるだけ」
「んっ、あっ……!」
ライの手が何度も執拗に愛撫を繰り返す。その刺激に、希望はぞくぞくと震えて、だんだん力が抜けてきてしまった。逃れようと身を捩るが、ライが離さない。
「んんっ……! やっ、もぉだめっ……、あぁっ……!」
ふにゃふにゃと力が抜けてしまった希望を、ライが抱き抱えたまま寝室へ入る。
「あぅっ!」
ベットの上に広げていたスーツはすべて落とされた。邪魔なものがなくなったベッドの上にひっくり返されて、ライが覆い被さったので、希望は慌てて押し返した。
「も、もう許してよぉ……」
「お前が自分から来たんだろ? 逃げんなよ」
「違うってば……ちょっとだけ……どう思うかなって思ってつい……! ごめんなさぁい……」
「俺にどう思われたかったんだよ」
「……っ」
希望は恥ずかしそうにライから目を剃らした。
「なに?」
「……セ、セクシーだなって思われたくて……」
「それで?」
「え、そ、それで?」
「見せた後、どうしたいって?」
「……え?」
きょとん、とした顔になって、希望は考える。
セクシーだ! と思って着替えた。鏡を見たら、すごくえっちだ! と思った。これならライさんも、メロメロにできるに違いない、と思った。俺がライさんをセクシーでカッコいいと思っているように、俺もライさんにセクシーでかっこいいと思われたかった。
それで、その後?
その後のことは、考えていなかった。
「これさぁ、エロいと思ったの?」
「あっ……! ちがっ……くない、けど、そうじゃなくて……!」
「お前が自分から誘いに来るようになるなんて、成長したなー? そんな格好して、頑張って誘いに来てたんだ?」
「ち、ちがう……!」
「気づかなくてごめんな」
「あっ、だっ、だめぇっ……!」
ライの手が、ワイシャツの上から希望に触れて、身体がびくりと震える。希望がじたばたと暴れても、執拗な愛撫に身体が反応してしまった。
こういうことを期待していたわけではない。
誘うつもりなんてなかった。
そのはずだった。
ただ、この格好だったらライさんは魅了できるんじゃないかな、こういうの好きかな、どうかな? って気になって、確かめたくなって。
えっちな姿を見てほしかっただけで。
……あれ?! やっぱりこれって誘ってる?!
ライに与えられる刺激と言葉で、希望は混乱していた。ぐるぐる、と頭が回って、どうしていいか分からなくなってしまう。
柔らかで滑らかなワイシャツの上から、ぷっくりとした乳首を撫でられる。直に触れるのとは違うするするとした布越しの感触はぞくそくした。撫でられる度にびくびくっと身体は震えてしまう。
自分で選んだ下着も、下半身を守ることは到底できず、むにむにと尻を揉まれる。布をぐいぐい、と引っ張られて食い込むと反応し始めた雄や奥の蕾をきゅうっと締め付け、擦れてしまう。何度も繰り返されて、その度にライを楽しませるような反応をしてしまう。
断固として拒絶することも、抵抗もできないまま、希望の身体は熱く、蕩けていく。
希望が気づいた時には、ぴたりと熱くて固いものが蕾に押しつけられていた。下着を脱がされてないが、こんな布では少しずらされただけで挿入を許してしまう。
「やっ、まって……アァッ!?」
とろとろに慣らされていたそこは、ライの雄をあっさり受け入れて、きゅうっと締め付けた。奥まで、ずっぽりと嵌められてしまっては、希望にはもうどうにも抵抗なんてできない。ただ、受け入れた熱の大きさと固さに身体を震わせる。
「ンンッ、ぁあっ……! ラ、ライさん……!」
「ん?」
希望は身につけていたものは何一つ脱がさず、乱さないまま、下着だけずらされて挿入されていた。瞳を潤ませてライを見つめる。
「服、汚れちゃう……! 脱がせてぇ……?」
「なに甘えてんだよ」
「あっぁあっ!」
ワイシャツの上からでもはっきりとわかるくらい、ぷっくりと立ち上がった乳首を、ぎゅうっと抓られ、希望の身体が仰け反る。
「この格好見せに来たんだろ? このままでいいよ」
「で、でも……今日、これ着てくんだけど……!」
「着ていけば?」
「は!?」
希望が驚いて大きな声を上げると、ライは意地悪そうに、にやりと笑った。そして、指先でゆっくりと肌を撫でた。
「汚さないようにな」
「……っ……」
それがものすごく楽しそうで、希望はうっかりときめいてしまった。
希望は大人しく頷いて、ライの背中に腕を回した。
こういうことしたかったわけじゃないけど、ライさんが気持ちいいことしてくれるのは好き。えっちなことは恥ずかしいけど、ライさんが楽しそうな顔を見るのは、すごく好き。
そうして、またすべてを許してしまうのだ。
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