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エピローグ

「……る……光……?」 軽く頬を叩かれ、光はやっと重いまぶたを開ける。 さっきまではベッドの端で足が出ていたが、いつの間にか真ん中に引き上げられたらしい。 少し視線をずらすと、人の姿に戻った優人が、心配そうに光を見詰めていた。 「大丈夫かい? 無理しすぎだよ、光……」 「ゆぅ、と……」 気だるげに呟いた光の前髪を、優人の手が優しく掻き上げ、まだ汗の滲(ニジ)む額にそっと唇を落とす。 「優人……」 もう一度呟いた光は、気だるい腕を上げて、優人の顔を確認するように、しっとりと両手で頬を包んだ。 そして安心した光は、うっとりとした微笑みを浮かべる。 「良かった……」 微笑み返した優人は、光の唇に、ゆっくりと唇で触れた。 始めはすぐに離したものの、二日もお預けを食らっていた二人が、それで満足するはずもなく…… チュク……チュプ…… 「んっ……ふぅ……」 息継ぎをする合間さえもどかしく、舌を絡め合う二人は、夢中で互いの口付けを貪った。 それだけでは足りず、互いの身体を隅々まで撫で回し、足を擦り寄せて興奮を高め合う。 「あんっ……!」 不意に優人の手が入口に触れ、思わず嬌声を上げた光は、口付けを離してブルルッと震えた。 優人がククッと低い声で笑う。 「まだ、洗ってないからね……濡れてる……」 「やん……出しちゃ……ダメぇ……」 光が必死に閉じようとする入口を、優人が優しく指で割り開く。 人間の数回分に相当する量の白濁が、ドロリと溢れ、頬を染めた光がビクビクと震えた。 「我ながら、凄い量だねぇ……このお腹の中に、どれほどの子種を孕(ハラ)んでいるのかな……?」 「ングッ……」 少し膨らんだ光の下腹を、優人がクッと軽く圧迫すると、光の蜜壺からドポッと欲望が押し出される。 光の身体はさらにゾクゾクして、堪らず優人にしがみついた。 「あぁ……ゆうとぉ……欲しい……」 優人が意地悪くクスクスと笑う。 「何を……?」 「……優人が……欲しいです……」 ――それから二人は、たがが外れたように何度も何度も、激しく交わった。   ☆  ★  ☆   翌、11月 2日の月曜日。 優人はこの日も学校を休んだ。 クラスメイト達が何人か、世流の所へ聞きに来たけれど、当然答えられるはずがない。 昨日、徹の家に泊まった世流は、家に寄らず真っ直ぐ登校してきたのだ。 詳細が分かったのは、それから数分後。 一時間目が始まる前、世流の携帯にメールが来た。 「兄さんからだ……『勘弁してくれ』……?」 嫌な予感を覚えた世流は、黙ってメールを開き、ビクッと肩を震わせる。 読み進める内、眉間にシワが寄りだし、唇の端をひくひくと痙攣させた。 「世流……? 志郎、なんだって?」 「……徹……今日、もう一日泊めてくれないか?」 世流のやるせ無いため息に、徹は何となく了解して頷いた。 ――聞いてはいけない。 黙って顔を見合せた世流と徹は、揃って肩を落とし、重いため息を吐いた。   *  *  * from:志郎 subject:勘弁してくれ 家帰ってみたら、もうスンゲェありさま(-_-;) 床はびしょ濡れだし、風呂場は石鹸臭いし―― 親父達の寝室なんか、扉開ける前から「ウフフ」「アハハ」って響いて来るんだぜ? ある意味ホラーだ(T_T) しかも独特の生臭さがあってよ…… それなのに、俺に気付きやがって――最悪だ! 毒々しいほど精の臭いが濃密でよ、光ちゃんなんか、もう妊婦顔負けの腹してっし。 学校に連絡なんて、自分でやれよ! 動けねぇのはわかっけど、動けねぇほどヤんな! くそ~ しかも、何でフリフリの白いエプロンなんか落ちてんだよ! 何ヤってたか想像しちまったじゃねぇかΣ(ノд<) 羨ましい(`皿´#) とりあえず、今日は帰って来んな。 大の大人を二人も介護して、その上、お前の面倒までみきれるか!   *  *  *   志郎が寝室を出て行き、また妖艶に微笑んだ光が、優人に腰を擦り付けた。 「ゆぅとぉ……もっとぉ……」 「アハハ……まだヤるのかい……?」 完全に出る物も無くなった優人は、それでも光の淫靡な肢体に身体を重ねる。 それはまるで、甘い香りで獲物を捕らえる食虫華。 一度触れれば、後は深みにはまるのみ。 優人は知らなかった。 変身しなかった者にまで、月の魔力が働いていたなんて―― 古来から、月の魔力には性欲を高める効果があるらしい。 しかも、それが光の内に、三日分も蓄積されていたなんて―― 誰も知るはずがない。 ……END.

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