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5.優人と光の場合

世流も元に戻って、喜んだのもつかの間―― 変身騒動3日目のリビングは、一触即発の状態になっていた。 いつも幸せそうな笑顔を絶やさない光が、眉間に深いシワを寄せ、むっつりと口を尖らせている。 理由は簡単。 『ねぇ……光……? そろそろ……機嫌を治してくれないかい?』 優人が恐る恐る光の顔を覗き込み、ブルルルと鼻息で前髪を揺らす。 今日の優人は、立派な体躯を持つ焦げ茶色の馬だ。 立ち姿は凛々しいはずなのだが、頭を下げて光の機嫌を伺う様は、どこか少し情けない。 フローリングの床を傷付けないように、四足全て靴下を二重履きしているのも、正直に滑稽(コッケイ)だ。 だが当の優人には、そんな事を気にしている余裕なんかない。 『光……?』 重ね履きの靴下が音を吸収し、ポクポクと周囲を歩き回る優人の馬面に、光がキッと恨みがましく睨む。 「交尾――してくれますか?」 『いや、だから……それはね……?』 そう光が怒っているのは、優人が交尾を拒否しているから。 世流も人の姿に戻った事によって、交尾をすれば良いとほぼ確定した。 今までは『魚』や『鳥』に変身していたので、交尾はできなかったのだが…… 「やっと大型の動物になって、しかも交尾しやすい哺乳類ですよ? それなのに優人は――」 『しかしねぇ……犬とかならまだしも……馬のはさぁ……』 優人はなんとか宥めようとするが、光は目を釣り上げるだけで、納得しようとはしない。 「徹君は蛇と交尾したんですよ!?」 「徹を引き合いに出さないでください!」 世流が何を言っても、光は聞く耳を持たない。 「動物の姿で困るのは、優人の方でしょう!?」 そもそも光は、馬と交尾したいだけの変態な訳ではない。 優人とのセックスレスも少しはあるだろうが、何よりも優人を人の姿に戻したいのだ。 『それは、そうだけれど、ねぇ……』 優人がブルルルと鼻息を鳴らしながら、その場でたじろぐ。 『僕は光を傷付けたくないんだよ……だから分かっておくれよ……ねぇ?』 いくら優人が懇願しても、光は折れない。 ますます目が釣り上がり、ついには頬を膨らませ、フンッとそっぽを向く。 徹を始めに、世流と志郎、そして剣治までがため息をついた。 朝起きてからずっと、この言い争いが続いている。 もう全員がうんざりしていた。 「いつまで続くんだよ……コレ」 「気にするな、徹」 「どーせ親父が折れるまで終わんねぇよ」 「そうなんだ……あっ、志郎、コーヒーのお代わりいる?」 その後も光と優人の喧嘩は続き、もうそろそろ高校生は部活の時間である。 喧嘩の真っ最中で、弁当など期待できないと思っていたら、光はちゃんと用意していた。 「ありがと、光先生」 「ありがとう……ございます」 「僕の分まで、すみません……」 徹と世流、そして剣治は少し戸惑いながら、弁当を受け取る。 今日初めて、にっこりと微笑んだ光が、またすぐに深いため息をつく。 「優人も、みんなくらい素直だと、良いんですけどねぇ……」 誰も言葉が出ない。 志郎はワシワシと頭を掻いた。 「ん……光ちゃんさぁ、そんなにしたいなら、色仕掛けでもすれば?」 「色仕掛け?」 少し投げ遣りな志郎に、光がコテンと首を傾げる。 「正直言って、獣ん時って性欲上がんだよ。なぁ、世流?」 「俺に振らないでください。ですが……確かに、大蛇になってしまった時、いつもよりは交尾したくなりましたね」 志郎に同意を求められ、世流は渋々認めた。 「色仕掛けですか……良いかも知れませんね!」 やる気になった光が、力強く頷き、拳を硬く握り締める。 一瞬ニヤリと微笑んだ光に、四人は揃って背筋を凍り付かせた。 「……今日、剣治の部屋に泊まって良いか?」 「うん、良いよ……久しぶりに、志郎のハンバーグが食べたいな……」 いち早く危険回避した志郎が、何気無い風を装って剣治と出て行く。 「……あっ、明日父さん帰って来るから、部屋の掃除しねぇと……世流も来るだろ?」 「仕方ないな……」 徹と世流も避難決定。 四人が出て行くのを、日だまりの用な暖かい笑顔で見送り、光は玄関に鍵を掛けた。 『……光?』 優人が恐る恐る見守る中、カーテンもしっかりと閉めた光は、スキップでもしそうな足取りで寝室に姿を消した。 優人は人生で一番早く逃げ出したかったが、馬の足(しかも靴下を二重履きにした蹄)では、鍵を開ける事なんかできやしない。 もし家を出られたとしても、馬が路上を闊歩していれば、大変な騒ぎになってしまう。 『――志郎め。余計な事を……』 この場にいない志郎を呪いつつ、優人はせわしなくカッポカッポと歩き回っていた。 それから数分後―― 「……どうですか? 優人……」 やっと部屋から出てきた光の姿に、優人は思わず、ゴクリと盛大に喉を鳴らしてしまった。 恥ずかしそうにうっすらと頬を染める光は、生まれたままの白い素肌の上に、純白のエプロンだけを身に付けている。 「前に買い物をした時……優人が、見たいと言っていたので……」 うつむき加減にボソボソと呟く光が、胸の前で細い指と指を絡め合い、少しモジモジと太股を擦り合う。 普段は着ないフリフリエプロンで、しかも丈が合っていないのか、胸を飾る粒が見え隠れしている。 下も、すでに頭をもたげていて、布の端っこを押し上げながら、きわどく先を覗かせていた。 「……女性用を買うのは、やっぱり恥ずかしくて……子供用の、少し大きめにしたんですが……やっぱり、変……ですか?」 不安そうな上目遣いをする光に、優人はブルルルと鼻息も荒く、高速で首を横に振る。 ……むしろ生殖器が反応し始めていて、まともに直視する事ができない。 「……良かった」 ホッとした光が、はにかみながらも穏やかな顔で微笑む。 『あ……』 つい、花も恥じらうような光の笑顔を見てしまい、優人のモノはズルリと三倍以上に伸び、だらりと垂れ下がった。 馬の生殖器は、人間のモノより何倍も大きい。 だから優人は、ずっと拒否していたのだが…… 優人の赤黒い生殖器を見て、光の顔が婬魔のように妖艶な笑みに変わった。 基が良いので、その顔さえも優人にはグッとくる。 「やっとその気になってくれたんですね?」 『いや……その……』 まだ躊躇(チュウチョ)して、ソワソワと下がる優人の馬面を、光の細い指がそっと捕らえた。 羽のように軽く触れられているだけなのに、その指先で顎をなぞられると、もう優人は動けない。 優人の頬に頬を擦り寄せ、光が吐息のように囁く。 「交尾……してくれますよね?」 優人は陥落した。 ガックリと頭を下げた優人に、光はそっと唇で触れ、その場に膝をつく。 『光……?』 優人が訝しげに伺うと、光はおもむろに手を伸ばし、そっとなぞるように馬の生殖器を持ち上げる。 『ヒン……!』 思わず声を上げた優人が、ブルルルと鼻を鳴らし、快感に堪えようと床に前足を滑らす。 ビクビクと震える優人のモノにうっとりとした光が、ラッパ口のように広がった先端に舌を這わせた。 優人がいななく。 『光……!』 優人が声を上げるのも構わず、光は長い竿を手で何度も扱き、とても口に入りきらない先端を頬張った。 優人の四肢がブルブルと震え、どんどん鼻息が荒くなっていく。 光の唾液で濡れた先端を、ジュルジュルッと吸い上げられ、ついに優人は音を上げた。 『あぁ……もう降参だよ、光……ベッドに行こう』 「……はい」 嬉しそうに笑った光が、踊るような足取りで、寝室へ先導する。 今気付いたが、靴下もスリッパも履いていない光の足音が、ペタペタと可愛らしく響く。 その上、光がステップを踏む度に、少し小さいエプロンがヒラリと舞って、上を向いた欲望が無防備に曝(サラ)される。 そのエロチックな姿に、優人の雄はしっかりと反応していた。 優人が、ゴクリと生唾を飲む。 「優人、早く早く……」 扉の陰で待つ光が、無邪気な顔で優人を呼ぶ。 不安に思っていたのは誰やら、優人は弾む足取りで寝室に入った。 『光、自分で解す所を見せてくれるかい?』 「はい……」 少し恥じらいを見せた光は、ベッドの上で大胆に足を開き、常備してあるローションを手に垂らす。 たっぷりとローションで濡れた手を、光はゆっくりと股間に持っていき、自分の入口に恐る恐る指を挿入した。 「ふぅ……あぁ……」 自分で自分を犯しながら、淫らに身体をくねらせる光は、とても妖艶で艶かしい。 匂い立つような色気を醸し出す姿態に、優人は生唾を飲み、熱をたぎらせて見入った。 グチ……グチュ…… 卑猥な水音を秘部から発して、恍惚とした表情をする光が、口から甘い吐息を漏らす。 「ゆぅ……と……」 優人はブルルルッと荒く鼻を鳴らした。 『光――僕のモノにも、ローションを塗ってくれるかい?』 うっとりとした顔で頷く光が、するりとベッドから降りて、優人の隣にそっと跪(ヒザマズ)く。 新たにローションを手に垂らした光は、両手で愛撫するように、馬の生殖器をしっとりと濡らした。 『念のため、もう一度……光の中を、濡らしてくれるかい?』 「分かりました……」 素直に頷いた光が、残っていたローションを全部手に取り、入口をグッショリと濡らす。 ベッドの下縁に枕を置いた光が、枕の上にお尻を乗せて、迎え入れるように仰向けで足を開く。 動物の性(サガ)と言うか、何と言うか……光のお尻に鼻を近付け、これから挿入する所の匂いを嗅いだ。 その鼻息がかかり、小さく「ん……」と声を漏らして、光が可愛く身動ぐ。 その匂い立つような色気に煽られ、優人は一度ゴクリと喉を鳴らした。 早く突っ込みたい衝動を抑え、まずは光の足を蹴らないように気を付けて、ベッドに前足を乗せる。 『……いくよ、光』 とろけるような笑顔でにっこりと笑う光が、招き入れるように腕を広げ、しっかりと頷く。 「来て……優人」 その光の言葉に誘われるように、馬の長い生殖器がグンッと持ち上がる。 ゆっくりと前に進み、傷付けないようにそっと先端を入口に宛がう。 そしてできるだけ静かに、時間をかけてズプププッと埋めた。 ハッと顎を仰け反らせた光の髪が、瞬く間に白く染まる。 「あぁっ……ああああぁぁぁ……!」 甘く甲高い嬌声を上げた光が、身体を強張らせ、ビュクッと欲を飛ばす。 まだ竿の半分ほどしか入っていないが、優人は一度動きを止め、光の様子を伺った。 『……大丈夫かい? ……光?』 ビクビクと身体を震わせながら、光は恍惚とした顔でコクコクと頷く。 「すご……太、くて……熱ぃ……」 一応苦痛は感じていないようで、光の秘部は優人のモノに吸い付き、貪欲に取り込もうと蠢いている。 「あぁ、ゆうとぉ……もっと……来て……」 『光……』 迎え入れるように手を広げた光に導かれ、優人はまたゆっくりと腰を進めた。 「あぁっ……ん……!」 光の良い所を抉り、奥へ奥へと潜り込ませる。 深い所まで指は届かないはずだが、より深い優人との繋がりを望む光の身体が、愛液の代わりに腸液でしっとりと絡み付く。 長い馬の雄芯を三分の二も呑み込み、優人の先端に押し上げられた光の腹が、ポコンと膨らんでいた。 『光……辛くないかい……?』 「へぇ……き……んン……もっと……もっと、欲しい……」 夢見る少女のようにうっとりと言う光が、キュウキュウと優人を締め付け、さらに快楽を煽る。 優人はゆっくりと肉棒を引き抜き、またゆっくりと深く埋めていく。 あまり速くすると、内臓を突き破ってしまうのだ。 長いストロークで内肉を引き摺られ、声にならない嬌声を上げる光は、快感に喉を反らせ口端からヨダレを溢す。 ズルッ……ジュブ…… 卑猥な水音が響く蜜壺をヒクヒクと震わせ、快感で意識が飛びそうになる光は、すがるように優人の馬体に手を伸ばした。 身体の側面を指先で引っ掻かれ、優人の熱が限界を訴える。 『光……一度だけ……抜くよ……?』 「あんっ……やぁ、っ……ダメぇ……!」 夢中で馬の腰に足を絡ませた光が、必死に優人の身体を掻き抱く。 そのため腰が浮き、より深い所を刺激された光は、甘く甲高い悲鳴を上げて、優人の腹に快感の種をぶっかけた。 「んあぁ……ゆぅ……」 恍惚として身体を痙攣させた光が、快感にギュッと秘部を締め、優人の脇腹にしがみつく。 肉棒と身体を同時に刺激され、優人は堪らず光の中に精を注ぎ込んだ。 ビクビクと身体を震わせた光は、全身で荒く呼吸を繰り返す。 「ふぁっ……あふぅ、あぁ……あ、あちゅ……」 とろんとした顔で目を閉じた光は、そのまま意識を手放した。   ☆   ★   ☆

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