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4.世流と徹の場合
その夜――
世流の部屋で、徹は大蛇と向かい合っていた。
早く世流が元の姿に戻れるように、交尾をしようと徹が持ち掛けて、すでに三十分近く経っている。
せっかく昼に経験者(剣治さん)から、いろいろ話を聞いたのに――
ダメじゃん!
けれど、人間と蛇で交尾するのは、やっぱり凄く勇気がいる訳で――
世流も少し不安なようで、どうもさっきから落ち着かずに、尻尾の先をパタパタと動かしている。
比喩でなく、狼の志郎と身体を繋げた剣治さんは、やっぱり凄い。
そう言えば――
ふっと徹は、世流の蛇体を上から下まで眺めた。
『……なんだ?』
世流が徹を見詰め、不審そうに聞く。
「いや……蛇のアレって、どこにあるんだ?」
蛇の体は上から下まで(蛇腹は別として)特に凹凸も無く、細かい鱗がびっしりと付いている。
どこに生殖器があるのだろう?
『あぁ、尻尾の付け根に、収納部があるんだ』
「尻尾の付け根?」
足の無い蛇のどこからどこまでが尻尾なのか、正直、徹には分からない。
それを敏感に察知したのだろう世流が、小さくため息をつき、ゆっくりと頭を下げる。
『ほら、ココだ。良く見ると割れ目があるだろ?』
そう言って世流が(頭の先で)示したのは、全体の3分の2くらい下の所。
確かに良く見れば、ヒレの付き方が少し違う。
「へぇ~。……なぁ、少し触って良いか?」
こうして蛇の腹をじっくり見るなど、そうそう無いだろう。
徹の中に好奇心がふつふつと湧いてくる。
『――別に良いぞ。デリケートな部分だから、そっとやれよ?』
「分かった」
頷いた徹は、そっと指先を世流の腹に這わせ、蛇腹を撫で擦った。
身体を触っている時は、特に反応を示さなかったが、徹の指が収納部に触れた途端、世流の身体がピクンと震える。
「……感じるのか?」
『ち……違う!』
世流が恥ずかしそうに否定した。
少し疑いながら、軽く「ふ~ん……」と返した徹は、ゆっくりと世流の収納部を撫でた。
またビクッと反応した世流が、我慢するように身体をプルプルと震わせる。
おそらく無意識に目を閉じている世流に、徹のイタズラ心が刺激された。
いつもはネコに甘んじているか、徹も男である。
陰でニヤッと笑った徹が、執拗に穴の口を擦り、やんわりと揉みほぐす。
『ん……徹……もぅ、やめ……っ……』
艶を含んだ世流の声が、徹を制止する。
――あのクールな世流が、徹の指に感じている。
征服感にも似た快感が徹を煽った。
「なんで? 別に感じないんだろ?」
意地悪く言う徹を、世流がキッと睨む。
『お前……っ……!』
「お、穴開いた」
少し開いた収納部を優しく撫で広げ、徹がゆっくりと指を差し込む。
快感に震える世流が、頭を仰け反らせ、棒のように硬直する。
「へぇ……少しぬるぬるしてる……」
指二本を差し込んだ徹が、静かに穴の中を探ると、少し硬い物に触れた。
『ヒィッ……!』
小さく悲鳴を上げた世流が、ブルッと震える。
「世流、なんかエロい……ココが感じるのか?」
『ン……やめ……ッ』
甘い声で「やめろ」と言われても、やめられる訳がない。
世流の感じる所を重点的に擦ると、その硬い物が少しずつ膨らんできた。
「お……なんか出てきたな……」
世流がビクッと震える。
『や、やめろ! ……見るな!』
世流の制止も虚しく、ビクンと震えた収納部から、太い肉棒が飛び出した。
人間の物とは明らかに違うそれは、括れが無く寸胴で、先端に細かい突起がびっしりと付いている。
「へぇ、蛇のってこんな形してんだぁ」
初めて見た蛇の陰形に、徹はなんと無く感心した。
『……気持ち悪く、ないのか?』
恐る恐ると聞いてくる世流に、徹はプッと小さく吹き出した。
「なんだお前、そんな事気にしてたのか?」
『う……うるさい!』
恥ずかしそうに顔を背ける世流が愛惜しくて、徹は軽くその頭を撫でてやる。
目を細めて甘受する世流を見詰めながら、徹は昼に話した剣治の言葉を思い出していた。
〈最初は少し驚いたけど……いつも自信満々な志郎が、必死に不安を隠そうとしていて……それがなんだか可愛いくて。……志郎のためなら、何でもできるって思えたよ〉
確かに、剣治さんの言う通りだ。
いつもはクールな世流の、不安で少し弱々しい姿が凄く可愛い。
徹はクスリと笑う。
「確かに、蛇とヤるなんて、始めはビックリするけどな。やっぱり世流は、どんな姿してても、俺の好きな世流だ」
『徹……』
不意に徹が世流の口にキスをして、テレくさそうにエヘヘと笑う。
〈少し怖くても、やっぱり志郎は志郎だから……それだけで、凄く愛しい〉
剣治さんの言葉を少し引用させてもらった徹は、テレて少し顔を赤くする。
「それに――」
ゆっくりと言葉を切った徹は、いきなり世流の太い自身を握った。
『ヒィ……ッ!』
世流の蛇体がビクンと震える。
「こんなデケェの、初めて見たぜ」
『あ……あぁ……と……るぅ……ッ……!』
刺激にビクビク震える世流を眺め、徹はゴクリと生唾を飲んだ。
剣治さんは「全てを受け入れたい」と言っていたが、徹は逆にイタズラしたい衝動に駆られる。
いつもは余裕をかます世流が、今、徹の手で感じている。
もっと感じさせたい。
優越感に包まれた徹は、大きな世流のモノをパクッと咥えた。
『うわっ……!! と、徹……!?』
慌てる世流に構わず、徹はいつも自分がされている舌の動きを真似て、執拗に世流のモノを舐め回した。
声を漏らさないように、ビクビク震えながら堪えている世流に、ますます徹の優越感がそそられる。
『……ッ……ンンッ……この……』
快感に堪えていた世流は、夢中になって愛撫する徹の右肩に、ゆっくりと頭を下ろした。
そのまま徹の背中を斜めに伝い、左の脇腹を通って行き、そっと徹のパジャマズボンをまさぐる。
徹は下半身に違和感を覚えたが、舐める度に世流のモノがピクピク震え、面白くてやめられない。
……世流が人の姿に戻ってからも、時々やってみようかな?
少し染み出してきた苦い汁も、世流が感じて出したと思うと、美味しい気がするから不思議だ。
「んッ……」
不意に、徹の自身に濡れた細い紐が絡み付き、スルリと撫でた。
おそらく世流が、蛇の舌で舐めたのだろう。
その刺激だけで、徹の自身がフルリと震える。
――今、世流と舐めっこしてる!?
そう思って興奮したのもつかの間、徹は、世流の痛気持ち良い反撃を味わう事になる。
「ヒィッ――! イタ……あ……よ、よる……!」
慌てて下着ごとズボンを脱ぐと、世流が細い蛇の舌を徹の先端から、深く突き刺していた。
いつもは液体を出す穴に、世流の舌がゆっくりと出入りしている。
「あぅ……ヒギッ……んあぁ……」
狭い穴を無理やり広げられた自身が、痛みを訴えると同時に、擦り上げられる感覚にゾクゾクした。
まるで何度も射精しているような……
痛みと快感。
相反する二つの刺激に、徹は頭が真っ白になり、なすすべもなく世流の蛇体にすがり付く。
「あぁ、ふぅッ……ンあん……世流……」
強過ぎる快楽に徹の腰が揺れ、熱い物が沸き上がってくる。
イきたい。
けれどその度に、徹の噴き出そうとする熱を、世流の舌が無情にも奥へと押し戻してしまう。
出口を求めて暴れ回る欲望に、徹の目から生理的な涙が零れた。
「あぁ、あ……世流……も……やめ……ンふぅ……もう、イきた……あ、あっ、ンあッ……」
徹の身体が、ガクガクと震える。
軽く徹の鈴口を咥えた世流が、一気に舌を抜いた。
「あ、あ、あああああぁぁぁぁ――ッ!!」
最後に穴の回りを擦り上げられ、甲高い悲鳴と共に、熱い飛沫を放出した。
それを世流がチュルチュルとすすり上げる。
快感で力の抜けた徹は、グッタリと世流の蛇体にすがり付いた。
ひんやりとした鱗が、火照った身体に心地好い。
『調子に乗り過ぎだ。この馬鹿』
「うぅ……ごめん……でもよぉ、世流だって気持ち良かったろ?」
『………』
徹にしか分からない渋い顔をした世流が、不服そうに黙り込む。
一応、悪くはなかったらしい。
『………どちらかと言えば、下の口に入れたい』
たっぷりと間を開けて言った世流に、徹は思わずプッと吹き出し、文字通り蛇に睨まれた。
まぁ、徹は蛙では無し、睨まれる程度なら慣れたものである。
「そんじゃ、少し待ってろよ。………今、ちゃんと解すから」
言っていて恥ずかしくなった徹は、語尾をゴニョゴニョと言いながら、顔を真っ赤に染めた。
『解すなら、良い物があるぞ? 俺の机の、上から二段目の引き出しを開けてみろ』
「上から二段目?」
徹が言われるまま引き出しを開けると、世流らしいちゃんと整理された中に、少し不釣り合いな小瓶が入っている。
市販のドリンク剤のような茶色い小瓶で、中には何やら液体が入っていた。
「もしかしてコレか? ……何が入ってるんだ?」
『良いから。中身を少し手に付けて、残りは飲んでおけ』
軽く首を傾げつつも、徹は言われた通り中の液体を少し手にかけ、残りは一気に飲み干す。
「ぷはー……何の味もしねぇんだなぁ。コレも世流が作った薬なのか?」
『そうだ。薬を付けた手で、後ろを解してみろ』
何の疑いもなく頷いた徹は、膝立ちで上体を前に倒し、薬の付いた手をゆっくりと入口に持っていった。
剣治さんも言っていたが、自分で解すのは凄く緊張する。
世流に見られていると思ったら、なおさらだ。
「………」
『どうした?』
寸前で動きを止めた徹に、世流は訝しげに顔を覗き込む。
「……そんな、まじまじと見んな」
『何を今さら……』
世流はあからさまにため息をついた。
その態度が少し悔しかった徹は、唇を真一文字に硬く引き結び、なかば勢いで指を入口に突き入れる。
「ん……はぁ……」
瞬間息を止めた徹は、ゆっくりと縁をなぞり、少しずつ慣らしていく。
けれどまだほとんど解していないのに、徹の秘部が奥から疼きだし、腸液がしっとりと染み出してくる。
……原因は明らかだ。
「んっ……世流、お前ぇ……さっきの薬は……」
『媚薬だ』
世流が簡潔に答えたのを合図に、いよいよ徹の身体は熱が上がり、呼吸は荒くなっていく。
ヌチュヌチュと入口を掻き回す手は激しさをまし、手に付けた薬を余す所無く塗り広げてしまう。
「ふあぁ……あ……」
薬のせいで、触ってもいないのに元気になった雄が、鈴口をパクパクと開き汁を垂れ流した。
それを世流がジッと観察してくる。
「んにゃろ……」
羞恥が段々ムカつきに変わり、徹は自分のつぼみを刺激していた手を抜き、世流の蛇体に飛び掛かった。
『なっ! 徹……!?』
世流が制止する間も無く、徹はまだ飛び出ている世流のモノを掴んだ。
『ひぃ……っ!!』
繊細な蛇の生殖器を上下に扱き、徹の手に付いた薬を擦り込む。
普段は薬の効かない世流だが、蛇の姿だからか、急所を握られているせいか――少なからず効いているらしい。
ビクビクと震えながら、蛇体をくねらせた世流が、徹の身体に巻き付いた。
「うおっ……!」
驚く徹の身体に、世流がぐるぐると巻き付き、至るところに頭を擦り付ける。
細かい鱗は少しひんやりとしているのに、媚薬のせいか、触れられる所が少し熱い。
握っていた生殖器を離してやると、世流はゆっくりと徹をカーペットに寝かせ、右足に尻尾を絡めた。
『徹……ゆっくり、入れるぞ……?』
「おう。いつでも来い」
ニッと笑う徹の頬を舌先で掠め、世流は少しずつ締め付けるように動き、本当にゆっくりと生殖器を徹の入口に押し当てる。
「ん……ふあぁ……」
蛇の生殖器が、ゆっくりと徹の中に潜り込む。
柔らかいのに弾力のあるソレは、まるでゴム風船が外枠に合わせて形を変えるように、少しずつ形を歪めながら、徹の内側を押し広げていく。
しかも、取り込もうとする肉壁の動きまでも反射させて、ダイレクトに徹を刺激する。
「はぁく……あぁ……」
別の生き物のように蠢(ウゴメ)きながら、じわじわと押し入ってくる感触に、徹の身体が戦慄(ワナナ)いた。
強過ぎる快感に侵食された頭が、ぼんやりとして何も考えられない。
ただ本能だけが、貪欲に快楽を求めて、徹の腰を淫らに振らせる。
それでも思考を溶かすような快感では、少し刺激が足りなくて――
中心に溜まった熱は、飛び出すような勢いも無く、その場で沸々と煮えたぎるばかりだ。
自身に手を伸ばそうにも、身体に巻き付いた世流の蛇体に遮られて、どうしても手が届かない。
「あぁ……世流ぅ……」
次第に焦燥感が募り、徹は世流に懇願する。
けれど文字通り手が無い世流に、どうしてもらえば良いのか分からず、徹は何度も名前を呼ぶ。
「世流……」
『……仕方ないな』
呟いた世流は、ゆっくりと頭を前に伸ばし、徹の先端に舌を絡めた。
「んん……ふぅ……」
やっと与えられた刺激に、徹が甘く息を詰める。
けれど達するには、まだ刺激が足りない。
「世流……もっと……」
無意識に呟いた徹に応え、先端を一舐めして舌を解いた世流は、透明な汁を溢す鈴口に舌を突き刺した。
「ぐっ――、あがっ――、あっ――!」
脳天を貫く強烈な痛みに、徹は目を白黒させ、背筋を仰け反らせる。
痛い――
けれど媚薬のせいか、内側から刺激される自身に、確実に快感が募っていた。
じわじわと秘部を広げられる触感と、痛みを伴う前の刺激に翻弄され、徹は口端からヨダレを垂らして天を仰ぐ。
沸き起こる射精感が下腹部で暴れ回り、吹き出そうとしては、世流の舌に押し戻される。
さっきとは逆のもどかしさに、徹は身を捩らせた。
「あん……よるぅ……もう、イきたい……」
徹が生理的な涙をボロボロと流し、世流は尻尾の先であやすように、軽くトントンと徹の身体を叩く。
そしてゆっくりと、蛇の舌を抜き取った。
「あっ、あっ、ああああぁぁぁぁぁ――!!!」
『ブゥッ……!』
本当に抜き取った瞬間、徹が勢い良く噴射し、側にあった世流の顔に思いっきりかかった。
その上、達すると同時に徹が秘所をギュッと強く締め、感極まった世流も大量に子種を注ぎ込んだ。
「あぁ……スゴ、いぃ……熱い……」
ビクビクと痙攣した徹の身体が、全てを搾り取るように、ギュウギュウと世流のモノを締め付ける。
『んぅ……』
小さく声を漏らした世流が、徹の頬に精液で濡れた頭を擦り付ける。
そのベタつく感触に、徹はそっと世流の蛇頭を舐めた。
自分がかけた物とはいえ、独特の苦味に徹は顔をしかめる。
「まッずぅ……よくこんなモン飲めるな?」
『徹の物なら、まずくはない。――お前だって、さっき俺の舐めただろ?』
世流の感じている姿が愛しくて、確かに徹は世流のモノを舐め続けた。
その行為を思い出し、徹はまた秘部をギュッと締め、自身もむっくりと頭を上げる。
まだ夜はこれから……
そして二人の熱い夜は、時間をかけて長々と、それこそ朝方まで続けられたのだった。
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