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※下鴨弘文視点 『結婚してよかった』      言うに事欠いて今更それか。  子供が三人いて、一人腹の中に居る状態でそれか。  人として、親としてどんな考えで動いているんだと揺さぶったところで康介は反省しないし変わらない。  頭の中を覗きたくなったが本人いわく康介の中にいるのは俺らしい。    それはつまり、俺が今まで結婚してよかったと康介に思わせる言動ができていなかったということになる。    康介のせいで職業選択は狭いし、監視を緩めないように気を付けるし、不便で面倒で大変だがこの生活以外の未来を選びたくない。    俺は俺のやりたいように環境を整えて今の状況に持ってきた。  誰かに押しつけられた場所じゃない。俺が作った俺の場所だ。    息子たちが時に不満気であっても、康介に批判的な発言をすると娘がブチ切れだしても平和な家庭だと思う。  娘にスリッパで叩かれながら「コウちゃんがおちこむようなことしないで」との訴えをもっと真剣に聞くべきだった。  康介の気分に構っていたら日が暮れると思って受け流していた。    あんまりにも中学のころの「俺を追いかける康介」を基本にして考えて現在の康介を放っていた。  康介を放置したらロクな結果にならないと知っていながら俺はまた失敗するところだった。  とりあえず仕切り直しだ。

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