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康介の手を取って思わずひねり上げると痛い痛いと大げさに喚く。
次女出産後に体重が戻りきっていないのか手首が細いかもしれない。
「こんなので痛かったら子供なんか産めないだろ」
「出産で死ぬ下鴨の両性は一人も居ないの! 神のご加護があるからね」
なぜか自慢げな康介。
俺が医者に聞いた話だと女性とは違うので普通とは違う問題が発生するかもしれないというものだ。
本人はいつも自信満々で妊娠出産で自分が死ぬわけないと笑っていた。
長女の弘子が腹にいる間はもがき苦しんでいたが確かに死んでいない。
「医療設備が整っていなかった時代でも長男は絶対に生まれてたって記録に残ってるんだから!」
先祖のことを自分のことのように誇らしげに語る康介。
事実はともかく康介のように信じ込ませることで現実にしてしまうのは実際にありそうだ。
治らない病気だと伝えれば治る病気も治らない。
治らない病気のはずが治ると教えていたら治ってしまう。
そういった人体の不思議は事実ある。
「オレ、朝風呂はいるんだけど」
握ったままになっていた手を離すと康介の手首に赤い跡が残った。
思ったよりも握る力は強かったかもしれない。
康介を無理やり犯した日を少しだけ思い出す。
あの日の焼けつく衝動はあの瞬間だけだと思ったがそうでもない。
今も康介が痴漢をされたと聞いて気が立っている。
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